根津観音通りをまつり会場として復活
継続的な「アートのあるまちづくり」に挑戦
株式会社都市テクノ/ねづくりや
(運営提携:株式会社ライブライフ)

  • 取材:種藤 潤

  都市テクノがサポートする、東京・根津のまちづくり拠点『まちの学び舎 ねづくりや』が、今年10月に行われた「根津・千駄木 下町まつり」に参加した。それは単なる地元事業者としての出店にとどまらず、近隣のエリアプロデュースも手掛けていた。『ねづくりや』が着実に地域に欠かせない存在になっていることがわかった。

「根津・千駄木 下町まつり」の「根津観音通り商店会」サテライトエリアを『ねづくりや』が中心となりプロデュースした

『ねづくりや』のある商店街全体をアート空間としてプロデュース

 2022年10月15日(土)、16日(日)に行われた「根津・千駄木 下町まつり」は、5月の「つつじまつり」、9月の「例大祭」と並ぶ、根津エリアを代表する地元主体の恒例イベントだ。新型コロナウイルス感染拡大により、この2年は中止になっていたが、今年は開催が実現し、「根津神社」をメイン会場に、近隣の7エリアをサテライト会場として展開。その会場の一つになった「根津観音通り商店会」は、ここ10年間「下町まつり」に参加していなかったが、今回復活を遂げ、動員人数2日間延べ約6千人を達成した。

 その原動力として、今年3月にこのエリアにオープンした『ねづくりや』の存在が、影響していたことは間違いないようだ。

 イベント当日、『ねづくりや』はこの商店会に所属する飲食店として参加していたが、実は、エリア全体のプロデュースも手がけていた。コンセプトを「くらし、アート、デザインのオープンマーケット」とし、商店街の空き家や空きスペースには、今回のプロデュースにも参加した武蔵野美術大学の学生の作品を展示。さらに、まちの日常的な壁面や植物を「アート作品」と捉え、合計18箇所を紹介、解説した「根津・暮らしアートマップ」を制作し、商店街周辺をアートギャラリー感覚で散策できるようにしていた。そして、通りの各所に緑と黄色が印象的なのぼりや短冊を設置し、通りにまつりの彩りを添えた。

 メイン会場の「根津神社」には2つのブースを出店。「ねづくりや健康ステーション」ブースでは、奈良県立医科大学が監修するMBT(医学を基礎とするまちづくり)に関するパネル展示とともに、自転車のべダルを漕ぐことでパチンコが稼働する、健康推進機器が体験できるようになっていた。一方、「都市テクノグループ」のブースには、企業説明パネルとともに子どもたちが試乗体験できる小型ショベルカーを設置し、お年寄りから子どもまでたくさんの人々の行列ができ、常に賑わっていた。

「根津観音通り商店会」エリアでは、武蔵野美術大学の学生の作品展示(上)や、地域の日常風景をアート作品として解説したパネル(下)が設置

高齢化や空き家などの課題を解決 地域と気づき、学び、つながる拠点

 「下町まつりへの参加は、『ねづくりや』自体を広く知ってもらうことはもちろん、『ねづくりや』の重要な取組である地域の方の健康推進(MBT)と、武蔵野美術大学の才能あふれる学生たちの活動を支援する目的もありました」

 『ねづくりや』事業をサポートする都市テクノの島村智之代表取締役は語る。

 本紙第173号でも紹介した『ねづくりや』とは、都市テクノと武蔵野美術大学、双方の産学連携プロジェクトの拠点である。もともとは学生主体の空き家再生プロジェクトから始まったが、その対象となった「根津観音通り商店会」に潜む高齢化、空き家問題などによるさまざまな課題が明らかになり、それらの解決はもちろん、地域の人々と気づき、学び、つながれる場所づくりを行うための拠点として、2022年3月に『ねづくりや』がオープンした。現在は、飲食の提供や食料雑貨の販売をしながら、地域の人々が集まり、学べる機能を持つ地域拠点として運用。武蔵野美術大学の学生たちも集い、『ねづくりや』が地域の人々と学生たちの交流の場となり、共同のイベントを複数プロデュースしている。

 さらには、奈良県立医科大学と連携し、地域の高齢者を中心とした、食を通したMBTの推進にも取り組んでいる。

「下町まつり」メイン会場の根津神社では、「ねづくりや健康ステーション」(中下)と『ねづくりや』をサポートする「都市テクノグループ」のブース(下)を出店していた

根津の事例を全国で展開 本業の技術と経験をまちづくりに活用

 『ねづくりや』の運営責任とともに、今回の「根津観音通り商店会」会場のプロデュースを担当した鶴元怜一郎プロジェクトディレクターは、今回はあくまでキックオフであり、これからが本番だと気持ちを引き締める。

 「今回は地元のイベントと連携する形をとりましたが、今後もその流れは継続しながら『ねづくりや』主体でイベントを企画から立ち上げたり、周辺自治体と連携したりする形で、継続的に「アートのあるまちづくり」のイベントを実施していきたいと思います。一方で、『ねづくりや』の地域拠点としての機能を強化するために、高齢者だけでは対応できないまちの困りごとを解決する『よろづや』もはじめる予定です」

 都市テクノの島村代表取締役は、このイベントの企画運営をモデルケースに、根津以外の地域でも横展開していきたいと意気込む。

 「今回のイベントのようなことを、他の地域でも挑戦したいですね。根津の事例を全国に広げながら、弊社の本業である総合解体・測量調査・不動産マネジメントの技術と経験を、各所のまちづくりに活かしていきたいと考えています」

 そんな話を二人から聞いているところに、「根津観音通り商店会」に隣接する「根津片町町会」の鈴木健之会長と、「根津藍染町会」の鈴木禎介会長が話しかけてきた。

 「10年ぶりの参加は不安もありましたが、結果的に商店街が本当に盛り上がりました。昔の活気ある商店街の姿を思い出させてくれたと、嬉し涙を流している住民の方もいました。来年も期待していますよ」

 着実に、根津というまちに欠かせない存在になりつつある『ねづくりや』。今後の動向にも注目していきたい。

『ねづくりや』自体も出店し、店内での食の提供や店頭でのドリンク販売を実施。店舗周辺も多くの人で賑わっていた

左から『ねづくりや』を運営するライブライフの鶴元怜一郎プロジェクトディレクター、根津片町町会の鈴木健之会長、根津藍染町会の鈴木禎介会長、都市テクノの島村智之代表取締役

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