多様な事業の実績と経験を生かし
地域、環境、人に優しい公共空間を創出
大和リース株式会社
「大和リース」という社名ながら、リース事業にとどまらず、建築、商業施設の開発・運営、駐車場開発、環境緑化など、幅広い事業を展開。なかでも近年力を入れるのが、自治体と連携した公共空間の課題解決だ。地域の思いを汲み取りながら、同社の多様なノウハウを生かし、各地で公共施設の新たな価値創造をサポートしている。
多様な4つの事業を核に 施設や地域の社会課題を解決
大和リースの事業は大きく4つに区分され、多様な事業領域を複合的に組み合わせながら、さまざまな施設や地域の課題解決のサポートを行っている。
『規格建築事業』では、主に品質・コスト・工期のバランスを追求したシステム建築や、設計から施工まで一括請負するデザインビルド建築を行い、近年はZEB(省エネ対応モデル)にも対応しながら、さまざまな施設整備をサポート。また、建築現場や災害現場で活用できる仮設建物も手がける。さらに、こうした建築ノウハウを生かし、公民連携事業も多数受注、全国で1000件を超える実績を持つ。
『流通建築リース事業』では、「LOCシステム」という土地活用の企画立案から建設運営まで一括サポートするサービスを展開。また、全国で130以上の商業施設の建設から運営までを手がけ、郊外型の「フレスポ」、駅近の「BiVi(ビビ)」、コミュニティ型の「ブランチ」の3ブランドを展開。それらの一部では、地域NPOとともに交流と活動の拠点「まちづくりスポット」やキッズスペース付きオフィスなども共同運営している。
『リーシング ソリューション事業』では、カーリースを中心に農業、福祉、LED照明など多様な分野のリース・レンタルのサービスを展開。これらを生かし、自走式立体駐車場の設計・施工・運営を行い、他事業との複合化も進めている。
『環境緑化事業』では、壁面や屋上、屋内、駐車場、公園の緑化の企画・施工・メンテナンスまでトータルに受注。本紙142号「NIPPON世界一」で取り上げた、人間の「五感」に働きかける空間プロデュース「VERDENIA(ヴェルデニア)」もこの事業分野に含まれる。
公民連携設備の実績から 公共施設への環境緑化導入を提案
東京本店公共営業部中央省庁・都庁担当営業一課の中島純一課長は、こうした事業のなかでも、公民連携事業の割合が多いことが、同社の特徴であり強みだと語る。
「『規格建設事業』では、庁舎、校舎、教育機関など公共建築物の受注が多く、『流通建築リース事業』の商業施設に関しても、自治体と連携した実績があります。近年では、今年4月にオープンした『ブランチ調布』が調布市の公有地活用プロジェクトですし、3月にリニューアルした『鳥居崎海浜公園』は、木更津市のPark-PFI制度(公募設置管理制度)の活用です。他にも、応急仮設住宅や公用車、LED照明リースなど行政機関との取引は多く、その実績を評価され、国土交通省とPPP協定を締結して官民連携セミナーを実施したりしています」
こうした実績とノウハウを生かし、さらなる公共空間の課題解決に取り組みたいとし、その核となるのが『環境緑化事業』だと言う。
「弊社もSDGs推進のために、経営指針として『VISION2030』を掲げ、持続可能な社会づくりにつながるビジネスの創出に取り組んでいますが、特に環境配慮の視点は、官民問わず必須の要素です。そのなかで弊社の『環境緑化事業』は、比較的導入がしやすく、かつ効果を実感していただきやすいので、対応がまだ遅れている行政機関や教育機関などでご活用いただくべく、提案を進めています」
PPAで再エネを低コストで導入 環境緑化は人への“癒し”も
『環境緑化事業』は、これまで中心だった屋内外の緑化に加え、再生可能エネルギー(再エネ)事業にも注力。『環境緑化事業』を担当する、環境緑化営業所営業二課の村田雛子さんは、昨年より始まった『PPA(Pow er Purchase Agreement:電力販売契約)モデル』の導入を企業や自治体に提案している。
「建物の代表的な再エネ導入の方法は、太陽光発電です。ただ、これまでは費用をかけて設置し、数年から数十年かけてコストを回収していくシステムであり、初期投資の必要がありました。しかし『PPAモデル』なら、弊社が初期費用を負担し設備を設置、施設側は電気利用料を弊社に払っていただくだけで運用ができます【図A】。まだ日本でも普及し始めた導入モデルですが、ぜひ検討していただきたいです」
東京の都市部では緑化と再エネ活用のメリットは高く、特に公共施設での導入効果は高いと、中島課長は強調する。
「屋上や壁面緑化は、景観の向上はもちろん、空気の浄化作用やヒートアイランドの軽減効果が期待されます。さらには、そこで過ごす人への“癒し”の効果もあり、緑化によるストレス軽減、デジタル機器で疲労した視覚の回復効果もあると言われています。地域の人々が集う場だからこそ、何より、地域の人たちのために働いている人にとって、公共空間は快適な場所であってほしいと思います。
PPAに関しても、電力が常時使用されている学校や福祉施設のほうが運用効率が高いので、そうした施設が集まる東京都市部で運用が始まれば、東京という地域全体の省エネにもつながります。東京都が掲げるHTT(電力をH減らす、T創る、T溜める)をさらに推進するためにも、ぜひ活用していただきたいと思います」