省エネ+蓄・創エネも含む
地域型ビルマネジメントを提唱
株式会社シービーエス
株式会社シービーエス(以下、CBS)は、1960年の創業以来、首都圏を中心とした多数のビルメンテナンスを受託、現在は全国にネットワークを持つ、東京を代表するビルマネジメント企業のひとつだ。時代とともに他分野にも事業を広めてきたが、現在は中小ビルを対象とした環境配慮型ビルマネジメントに注力している。
東京の歴史を物語るオフィス、ホテル、官公庁などの建物も受託
CBSの創業当時の社名は「千代田ビルサービス株式会社」。その名の通り、東京の都心部を中心に増加し始めたビルのメンテナンス(清掃・設備業務)を行う会社としてスタートした。九州、関西、東北、北海道とそのサービスを全国に展開するなか、いち早く警備保障や遠隔管理システムを手がける事業にも着手。対象もビルにとどまらず、商業施設、ホテル、官公庁、さらには原子力や火力など発電所施設へと拡大している。
現在はビルメンテナンスに加え、工事・設計、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、業務支援、コンサルタントに至るまでの総合的なビルマネジメントを行う企業に成長した。特に創業地の受託実績には、ホテルニューオータニや日本経済新聞社東京本社ビル、サントリーホールなど、東京の象徴的な建物の名前も少なくない。
「環境」「成長性」に着目 自転車、太陽光、海外事業を展開
一方で、バブル崩壊や不動産証券化の余波など、ビルマネジメントを取り巻く環境の変化から、2000年代前半からは異分野への挑戦も本格化した。
2000年には環境負荷をかけない移動手段として「自転車」に着目。「街の自転車屋さん」をコンセプトにした自転車総合ショップ『サイクルスポット』を創業。現在首都圏を中心に100店舗を超えるまでに成長した。
2013年、これも環境配慮の観点から、再生エネルギー事業をスタート。広島、茨城、栃木に2メガワットの大型太陽光発電所を設置し、近年は環境開発企業と組み、高効率のソーラーシステムの販売も行っている。
同じく2013年には海外にも進出。東南アジアで特に成長著しいミャンマーに会社を設立し、総合施設管理、セキュリティシステム工事、フードサービス等を展開。その後も、ミャンマーより技能研修生を受け入れ、ビルメンテナンススタッフとして教育し、さまざまな現場で活躍させている。
2003年に同社に入社し、新規事業立ち上げを中心に担当してきた、小坂珠実(こさかたまみ)代表取締役副社長は語る。
「新規事業を振り返ると、『環境』『成長性』などが立ち上げる際の重要なポイントでした。スタートアップの段階では、コンサルタントなどの手を借りず、自社の力でやってみます。特に海外事業は大変でしたが、自分たちでさまざまな課題に直面し、新しい技術や考え方を取り入れることで、新たな価値が創造できる。それが、お客様に求められる企業につながると私たちは考えています」
ちなみに時期は少し遡るが、1971年から続く老舗フォトスタジオ「秋山写真工房」も、同社が行う事業の一つである。
都内の中小ビルに注目 地域全体で『省蓄創エネ』を
小坂副社長は、2022年に入り、ビルメンテナンス企業として新たな使命を認識し始めているという。
「特に都市部では各所で開発が進み、新たな大型ビルの姿が目立ち始めていますが、実は都内全体の9割は中小ビルで占められています。その多くが古い建物で、ビルオーナー様たちはその維持管理に頭を抱えています。今後、私たちはその分野にも注力し、蓄積した経験とノウハウを活かしたサポートをし、結果として不動産価値を上げるお手伝いができたらと思っています」
加えて、昨今のビルマネジメントの分野でも「省エネ」が当たり前になりつつあるが、ウクライナ問題などによるエネルギー不足問題もあり、特に中小ビルに対してはさらなる対策が必要だと予測する。
「ビルの省エネでも、中小ビルはかなり対応が遅れています。そのお手伝いもしていきたいですし、さらに言えば、省エネだけでは足りないと思います。蓄える『蓄エネ』、創る『創エネ』と3つの要素を盛り込んだビルマネジメントが今後は求められますし、我々の太陽光発電などのノウハウが活かせると信じています」
こうした取組が一気に進めば、東京の環境エネルギー施策はかなりのインパクトを出すことが可能だろう。小坂副社長はそれを実際に進めるためには「地域単位のビルマネジメント」が必要だと語る。
「中小ビルは単体では設備面でも資金面でも限界があります。しかし、中小ビルが集まる地域全体で捉えれば、大規模ビルに匹敵するマネジメントが可能です。ぜひ自治体の皆さんとも連携して進めていきたいと思っています」