福祉+シニア人材も生かした仕組みで
持続可能なオフィス緑化を提案
株式会社プラネット
ここ数年、東京の都市部でもオフィスや共用空間の「環境緑化」が着実に進んでいるが、その先駆者のひとつが、株式会社プラネットだ。同社はこれからのSDGs(持続可能な開発目標)時代を見据え、IT技術を駆使しながら、あらゆる人が幸せになる「環境・健康緑化」システムを確立し、特に都市部での普及に注力する。
ウィズコロナの今こそ 環境緑化で働きたい仕事場に
「ここを地下だということを頭に置いて、オフィスを見ていただければと思います」
そうスタッフの方に案内されて入った株式会社プラネットの東京営業所の室内は、太陽の光がさんさんと降り注ぐ庭園かビニールハウスのように、生き生きとした緑にあふれていた。その空間にいると、不思議と漂う空気も清らかに感じられ、こんなオフィスで働いてみたい……と思わずにはいられなかった。
「ウィズコロナで在宅ワークが一般化し、オフィスに行く機会が減りましたが、コロナが落ち着き、出社機会が戻りつつある今こそ、オフィスに行きたい、働きたいと思える場所にする。オフィスの室内緑化はその有効な手段のひとつだと確信しています」
株式会社プラネットの大林修一代表取締役は語る。
オフィス緑化はさほど新しいことではないが、これまではグリーンを中心としたアースカラーを増やすという視覚的要素が主目的だった。だが、近年はむしろCO2やVOC(揮発性有機化合物)削減など、空気浄化の効果にも注目が集まっているという。
「コロナ前までオフィスに求められていた“高気密高断熱”の建物内でも、植物による緑化で空気清浄が可能になります。また、湿度も高まるので、乾燥を好むウイルス活性を抑える効果も期待できます」
さらに緑化は、人の「心」も癒し、さらに仕事の生産性向上にもつながると言われている。海外ではその効能を積極的に取り入れているが、日本では大幅に遅れていると、大林代表は嘆く。
「海外のIT大手企業は、オフィス緑化を当たり前に行っています。また『ウェル(健康)認証』と呼ばれる建物評価システムも、海外企業の多くが取り入れていますが、日本では数えるほどしかありません。仕事の9割は室内で行われるわけですから、その環境整備の意識も含め、オフィス緑化を通して変えていきたいですね」
技術発達で管理がしやすく 都市の食料調達手段にも期待
株式会社プラネットは、独自の『ハイドロカルチャー(水耕栽培)』技術とシステムを確立し、小空間から大空間まであらゆる環境緑化をサポートする、唯一の国内企業である。
「弊社の水耕栽培は、土の代わりに『プラネットソイル』と呼ばれる、植物の根に良い環境を作る無機質の石を用います。有機質の土を使わないため、根腐れやカビ・悪臭の心配がなく、虫もつきにくく、清潔に保つことができます。また、水と肥料を植物が吸収した分だけ供給すれば良いので、環境に優しく経済的です。さらに独自に作り上げた植物性オーガニック液肥を用い、無農薬無化学肥料を実現しています」
愛知の施設園芸農家の4代目に生まれた大林代表だが、1983年に施設園芸の近代化を目指し、先駆的にコンピューターを用いたハイドロカルチャー生産を開始。現在農場は地元愛知に加え、埼玉、千葉、沖縄に拠点を置き、観葉植物を中心に室内生産緑化用のバラ、ハーブ、野菜などの苗も生産する。
植物のもたらす効用に科学的に着目し、オフィスやビルの屋内外などの「環境緑化」事業を創業したのは、1988年。その効果のエビデンスを確立すべく、2020年「バイオフィリア緑化研究所」も独自に立ち上げている。
「ハイドロカルチャーを取り巻く技術は格段に進歩し、環境・健康緑化事業を大きく後押ししました。現在はデジタル技術による自動給水が可能になり、メンテナンスも簡略化。また、太陽光に近いLED照明が生まれ、地下でも地上に遜色なく植物を育てることができます」
これまでは観葉植物が主だったが、ハーブ、野菜の生産も可能なため、食料生産にも応用、なかでも都市部の普及に力を入れたいという。
「日本は食料自給率が4割を切り、さらにコロナ禍やウクライナ紛争などによる食材高騰が追い討ちをかけ、国内での食料生産拡大は急務です。特に都市部でも今後は“地産地消”での食料確保が必要であり、その手段として環境・健康緑化と合わせた都市農業の形も提案していきたいと思っています」
多様な人材を雇用し SDGs時代の環境・健康緑化を
特にオフィス緑化のネックの一つが、メンテナンス管理人員の確保だが、同社では管理委託を行うのはもちろん、前出のようにITによるメンテナンスの自動化・省力化を実現し、管理作業自体の最小化に成功している。
「最小限の作業はクライアント様にお願いしますが、植物と触れる作業自体がメンタルストレスケアにもつながります。逆に管理のために積極的にオフィスに行くようになった方もいるようです」
さらに近年は、福祉人材やシニア世代を活用した、新しい形のメンテナンス、栽培体制の構築を進めている。
「企業、行政では障がい者雇用が義務化されていますが、障がい者と連携した都市緑化・都市農業のメンテナンス、栽培管理を提案しています。すでに障がい者就労支援施設の中に植物生産システムを導入し、生産した商品を買い上げる取り組みを始めていますが、オフィス緑化の管理人材としても活用を始めています。また、植物好きなシニアを対象に『グリーンメイツ養成講座』を実施し、緑化のスペシャリスト育成も行っていますが、その方々には『グリーンメイツ』としてビル内外の緑化管理などに力を発揮してもらっています。みなさん、とても生き生きと働いていますよ」
そもそもCO2削減などの効果から、SDGsの目標に合致している都市緑化・都市農業だが、多様な人材雇用も加わることで、これからの時代に即した事業として、さらに注目が集まる可能性は高い。
自然の少ない都市部でこそ、環境・健康緑化は効果を発揮する、と大林代表。特にその推進を後押しする行政等のオフィスで、実際に試してみて欲しいと語る。
「百聞は一見に如かず。ぜひご自身で体験いただければ、導入のハードルの低さ、何より働く場の快適さを実感いただけると思います」