産業労働局長 坂本雅彦氏

  • 聞き手:平田 邦彦

東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は産業労働局長の坂本雅彦氏。中小企業支援策、コロナ後の観光施策、環境問題にも直結する林業施策などについてお話を伺った。

東京の産業と雇用を推進

産業労働局長 坂本雅彦氏

新たな展開に果敢に挑戦

—局長に就任しての抱負をお聞かせ下さい。

 総務部長、次長を経てこの度、産業労働局長に就任しました。中小企業振興や雇用就業対策について、事業所管局としての判断を的確に下さなくてはなりません。改めてその責任の重さを実感しています。

 責任の重さを感じる一方で、新しい展開に果敢に挑戦していくことに積極的でありたいと思っています。

 産業構造の変化をはじめ、デジタル化の進展、コロナ禍や気候変動など、産業や雇用をめぐる環境は大きく変化しており、事業の変革は不可欠です。さまざまな課題を率直に受け止め、次なる施策に繋げていかなくてはなりません。従来の延長ではなく、先手先手で新たな施策を打ち出し、東京の産業の活性化や雇用就業の確保につなげていきます。

—局の事業のメインに中小企業支援があります。金融支援の内容は。

 都では、中小企業の皆様に、事業に必要な資金を円滑に調達していただけるよう「東京都中小企業制度融資」を実施しています。

 昨年度、コロナ禍の中小企業の資金繰りの確保を後押しするため、実質無利子で信用保証料の負担のない融資に約5兆6千億円の資金を供給しました。

 今年度は、感染症対応メニューにおいて金融機関による伴走支援など支援の拡充を図ったほか、業態転換や事業多角化などによりコロナ禍を積極的に乗り越えようとする中小企業を支援する新たな融資メニューも開始しました。

 今後は、昨年度の実質無利子融資の利用者を対象とする借換メニューの創設に取り組むことで、中小企業の資金繰り支援を強化します。さらに、コロナ対応以外もさまざまな融資メニューを展開していますが、脱炭素やSDGsなどの潮流を踏まえながら、金融支援策のさらなるブラッシュアップに努めます。

—コロナ後の観光事業の展開は。

 2月4日に、「観光産業の復活と『サステナブル・リカバリー』の実現」を基本理念とする新たな観光産業振興実行プランを公表しました。

 コロナの影響により旅行需要が減少する中、観光産業が旅行スタイルの変化やデジタル化の進展など観光を取り巻く状況の変化に対応するほか、将来にわたり事業活動を続け成長できるよう強力な後押しが必要です。

 そのため、観光産業の活性化に向け、観光関連事業者の経営支援を強化するとともに、「Tokyo Tokyo」を活用した国内外へのプロモーションを積極的に推進します。

 また、旅行業者の生産性やサービスの向上につながるDX導入を促すなど、社会変化等に対応した「新しい観光」を浸透させていきます。さらに、環境に配慮した旅行に係る新たな取組への支援など観光分野におけるSDGs達成に貢献します。

 こうした施策を、時機を逸することなく展開することで、観光産業を再び成長軌道に乗せ、将来にわたり持続可能な産業へと進化させていきます。

危機管理・デジタル・脱炭素を重視

—林業振興は温暖化対策でも有効と聞きます。多摩産材の利用促進は。

 温暖化対策に貢献するためにも、木材の利用促進は重要です。戦後に造成されたスギやヒノキの森林が「伐り時」・「使い時」を迎える中、林業の振興に取り組む必要があります。

 産業労働局では、多摩産材の利用促進など、林業振興に向けた施策を展開しています。例えば、都の関連施設において率先的に多摩産材を利用するほか、駅など人が多く集まる民間施設における利用を支援しています。

 昨年度、国産木材の魅力発信拠点として「MOCTION」を開設し、他県の木材製品の展示や、著名な建築士等によるセミナーを開催し、木材利用の意義や魅力を発信しています。加えて、林業の生産性を高めるため、デジタル技術を活用した林業機械等の開発なども促進していきます。

—そのほか、局としてPRしたいことは。

 中小企業のさらなる成長・発展に向け「リスクマネジメント」、「デジタル」、「脱炭素化」の3つの視点を重視します。

 オミクロン株の急激な感染拡大に伴い、中小事業者の経営環境は依然として厳しい状態です。

 こうした状況下でも社会経済活動を維持していただくため、リスクマネジメントとして、BCP(事業継続計画)の再点検を経済団体のご協力をいただきながら進めています。点検のポイントをまとめたチェックリストをご用意するとともに、BCP策定に向けたアドバイスの実施や、参考となる優良事例の紹介などを行います。

 また、中小企業のDX化を加速させ、コロナ後の経済回復を高めていくことも重要です。デジタル化に向けた設備投資支援などに力を入れるとともに、デジタル分野での人材育成支援にも取り組んでいきます。

 さらに、ゼロエミッション実現に向けて、経済を成長させながら脱炭素化を進める必要があります。電気自動車をはじめ脱炭素技術の開発に注目が集まる中、この分野での活躍を後押しすべく、中小企業の技術開発やオープンイノベーション、事業転換等を促進していきます。(2月7日取材)

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