北海道の中心都市は事業メリットが多数
旭川地域企業誘致東京サテライトオフィス

  • 取材:種藤 潤

IT技術の発達により通信環境が整い、そこにコロナ禍が加わり在宅ワークが定着。首都圏を拠点にする企業も、地方との複数拠点体制をとりやすくなってきた。本シリーズでは、さまざまな地域と東京との「DUAL WORK(デュアルワーク)※」事例を考えていく。第一回目は北海道第二の都市、旭川に注目した。 ※「DUAL WORK」とは、「2拠点生活=DUAL LIFE(デュアルライフ)」を元にした「2拠点で働く場」を意味する造語

旭川地域は北海道のほぼ中央に位置

旭川地域の1市3町への企業誘致情報を東京で発信

 東京・永田町にある「永田町ほっかいどうスクエア」には、北海道東京事務所や北海道産食材をPRする飲食店、民間企業等が使用できるシェアオフィスが置かれている。今回話を聞いた「旭川地域企業誘致東京サテライトオフィス」も、そこに入居する事務所のひとつだ。

 同オフィスは、旭川市とその周辺に隣接する鷹栖(たかす)町、東神楽(ひがしかぐら)町、東川(ひがしかわ)町を含む、1市3町で構成される「旭川地域」へ企業誘致を行うための拠点である。

 旭川地域企業誘致東京サテライトオフィスの水上明子所長(右)と小野寺京平さん(左)。二人は旭川市の職員でもある

空港を所有し陸路も充実 農工業も盛んで教育機関も多数

 北海道のほぼ中央に位置する旭川市は、札幌市に次ぐ北海道第二の都市として都市機能も充実、すでに多くの企業が「旭川工業団地」を中心に事業進出している。また、3大学1高専13高校の教育機関に加え、職業訓練の施設もある。近年注目された「旭山動物園」をはじめ、スキー場、ゴルフ場など、全国的に人気のレジャー施設も多数存在する。

 鷹栖町は旭川市の北方に隣接し、旭川鷹栖インターや旭川北インターが近く、道内各地へのアクセスがしやすいのが特徴だ。そのため、物流拠点としても活用され、運輸業、食品卸、金属加工、米穀関連産業が集結。朝夕の寒暖差も大きく、農産物も盛んに作られている。

 東神楽町は旭川市の南東に位置し、北北海道の空の玄関口である「旭川空港」がある。ちなみに同空港は東京直行便が1日7便あり、就航率99%と欠航がほぼない空港としても知られる。また、全国的に家具の一大産地として有名な「旭川家具」関連の木工業などの製造業も多く立地している。

 東川町は東神楽町のさらに東に位置する町であり、ここも「旭川家具」を支える製造業が多数あり、写真甲子園などの全国的なイベントも開催している。

 同オフィスの水上明子所長は、「旭川エリアを企業進出先として考える上で、この4市町の特徴を複合的に見てほしい」と語る。

 「旭川地域全体としてみると、空路、陸路のアクセスがよく、農業は米を中心に道内でも有数の生産量を誇り、工業も盛んです。こうした特徴を活かしながら、企業進出いただいた企業のニーズに合わせたオーダーメイド型人材育成も行っています。すでに首都圏を拠点とする食品加工業の企業さまなど、2拠点目として活用いただいている事例もあります」

2022年1月現在、分譲を行っている事業用地「動物園通り産業団地」の全景。その名の通り「旭山動物園」のすぐ脇に立地している

全国屈指の自然災害の少なさ 冷涼な気候はIT事業にも最適

 同オフィスの小野寺京平さんは、さらに旭川地域にしかない地理的優位性もあると付け加える。

 「旭川は全国でもトップクラスの自然災害の少ないエリアです。過去30年間で震度1以上の地震は年平均1・8回で、観測史上、震度5以上の地震が起こったことはありません。また、台風も少なく、こちらも接近は年平均1・8回。さらに旭川は年間平均気温は10度以下で真夏に30度を超える日もありますが、朝晩は25度以下となり涼しくて快適です。もちろん、冬は氷点下まで気温が下がりますが、盆地のため風の影響がなく、むしろ東京の方が寒く感じることもあります」

 災害が少ない地域への拠点分散は、企業の危機管理上有効な選択肢といえるが、冷涼な気候も捉え方次第ではメリットにつながるという。

 「旭川であれば、都市部に比べて夏場の消費電力の軽減、CO2の削減が可能になります。特にデータセンター等の設置には、旭川は最適なエリアの一つだと言えます。災害の少なさも評価いただき、すでにIT関連企業も2拠点目として選んでいただいています」(小野寺さん)

静岡県を拠点とする「株式会社ヤマザキ」は食品工場を旭川地域に設置(上)。全国に拠点を持つ食品製造・販売大手「日本ハム株式会社」のグループ会社である「日本ハム北海道ファクトリー株式会社」は新工場を設置した(下)

道内最大級の優遇制度 2月にはセミナーも開催

 道内にとどまらず、全国的にも企業進出メリットが揃う屈指のエリアと言えるが、一方で他の地方都市と同様、人口減少が進み、若い世代を中心とした定着と、そのための産業創生は急務だ。その有効な選択肢の一つとして、企業誘致に力を入れているという。

 現在、同地域内では、旭川市東部「旭山動物園」の西側に位置する「動物園通り産業団地」を分譲中である。ここはすでに多くの企業が本社または2拠点目として活用する「旭川市工業団地」の一角にあり、電力、通信環境も万全で、空港や高速道路、列車のアクセス環境も抜群だ。1㎞圏内に住宅地もある。

 旭川市では、この用地活用を検討する企業に対し、道内最大級の助成限度額最大2億6000万円の優遇制度を設けている。対象業種は製造業、試験研究施設、IT関連企業、物流企業など幅広い。

 こうした情報を首都圏企業に詳しく理解してもらうために、同オフィスでは、これまで年1回セミナーを行ってきた。2022年は2月8日(火)17時30分から旭川地域をPRするオンラインセミナーを開催予定。旭川地域について、助成金について、何より「DUAL WORK」に関心のある事業者は、まずは参加してみてはいかがだろうか。

情報をお寄せください

NEWS TOKYOでは、あなたの街のイベントや情報を募集しております。お気軽に編集部宛リリースをお送りください。皆様からの情報をお待ちしております。