都民安全推進本部長 小西康弘氏
東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は都民安全推進本部長の小西康弘氏。就任の抱負、特殊詐欺や高齢運転者の交通事故対策などについて伺った。
警察経験活かし安全安心を
多様化する特殊詐欺に対応
—石川県警から異動し約2ヵ月が過ぎました。これまでを振り返っての感想と抱負は。
本部長に就任してからの2ヵ月は、あっという間でした。都議会の答弁にも立ちましたが、職員の手厚いサポートのおかげで何事もありませんでした。感謝しています。
私は仕事とは、いつもその時点での最善を尽くすものと思っています。①事実に基づいた客観的な情勢認識②タイミングを逸することのない行動③関係者の立場を理解した上での対応―の3つを心がけています。
本部の職員は皆さん大変真面目な方ばかりなので頼もしい限りです。私は警察出身ですので、その経験を活かしながら、都民の安全安心に少しでも貢献できればと思っています。
—特殊詐欺の被害は社会問題化して久しいですが、都の対策は。
オレオレ詐欺をはじめとする、主に高齢者を狙った特殊詐欺の都内における認知件数は、令和3年11月末時点で既に令和2年の件数を上回り、被害額も約59億円となるなど、深刻な状況が続いています。その手口も多様化・巧妙化しています。
都は被害防止に効果の高い自動通話録音機を都民に配布・設置することを目的に、区市町村が購入する際の費用の一部を補助し、設置促進を図っています。
また、最新の手口をシナリオに盛り込んだプロの劇団員による「特殊詐欺被害防止公演」、犯行手口を模した電話及びSMSを活用した特殊詐欺被害防止訓練の実施など、様々な媒体を活用した広報啓発活動で注意喚起を行っています。さらに、若者が「受け子」「出し子」といった犯罪に加担しないよう、加害者向け対策にも取り組んでいます。
—特殊詐欺対策以外の、都民の安全安心を守るための施策は。
都民の安全安心を守るには、地域の見守り活動が重要です。地域防犯の担い手である防犯ボランティア団体は、かねてから「高齢化」や「担い手不足」が課題となっています。都は「市民ランナー」や「犬の飼い主」の方々に着目し、日頃の活動の中で街の安全安心を見守る「ながら見守り」を実施していただけるよう、団体の結成促進、育成を図っています。
さらには、地域を巡回する事業者とも、子供や高齢者などの弱者を見守るネットワークの構築を図るなど、地域の見守り活動の担い手づくりを進めています。
そのほか、町会・自治会等に対し、防犯カメラ等の防犯設備の整備や見守り活動に必要な装備品等の経費について区市町村を通じて補助するなど、ソフト・ハード両面から対策を講じています。
幅広い悩みを抱える若者を支援
—社会問題化されている高齢運転者の交通事故対策の取り組みは。
都内の65歳以上の高齢者の運転免許保有者数が年々増加する中、交通事故全体に占める高齢運転者の割合も高い水準です。平成31年4月に豊島区内で発生した高齢運転者による交通死亡事故等を契機に、高齢運転者による重大事故の惹起が社会問題になっています。
都は警視庁や関係機関と連携し、高齢運転者向けの交通安全教室を実施しているほか、運転免許の自主返納制度や免許返納後の生活サポートについて周知を行っています。また、高齢運転者やその家族を対象とした相談会を開催し、交通事故防止に取り組むほか、高齢者が後付けの安全運転支援装置を購入・設置した場合に費用の一部について事業者を通じて補助することで、高齢運転者の交通安全を推進しています。
—青少年や若者への支援として、どのような施策を実施していますか。
スマートフォンやSNSの普及、利用の低年齢化に伴い、青少年がインターネット上でトラブルに巻き込まれるケースが社会問題となっています。この課題に対処するには、青少年がインターネットを安全に利用できる環境の整備が重要です。
都はインターネットの適正利用についての知識を身に付けてもらうため、「ファミリeルール講座」を運営しており、ネットトラブルの危険性を身近な問題として理解してもらえるよう取り組んでいます。また、ネットトラブルの相談窓口「こたエール」を運営し、青少年や保護者、学校関係者等の相談に応じるとともに、教育や福祉等とも情報共有を行い、青少年がインターネットを安全に利用できる環境づくりを行っています。
さらに、コロナ禍で人とのつながりが失われ、望まない「孤独・孤立」に陥り、一人で不安を抱える若者も増加しています。都は東京都若者総合相談センター「若ナビα」を運営し、幅広い分野にまたがる若者の悩みの一次的受け皿として、若者やその家族等から相談を受け付け、適切な支援機関につなぐことで、若者の社会的自立を後押ししています。
—最後に本部の職員に求めること、期待することをお聞かせください。
自分自身が充実していないと、仕事に全力投球するのは難しいです。職員には是非、自分自身のワークライフバランスも含めた充実を図ってほしいです。それを土台にして、少子高齢化やコロナ禍などの大きな社会情勢の変化の中でも、新たな知見を取り入れながら、都民の安全を守ってほしいです。