総務局長 黒沼靖 氏

  • 聞き手:平田 邦彦

東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は総務局長の黒沼靖氏。人事や法務、人権という面ばかりではなく、防災対策、そして新型コロナ対策など都民の安全・安心に直結する事業も担っている。局事業の今後の取り組みについて伺った。

コロナと戦う姿勢を前面に

総務局長 黒沼靖 氏

複合災害への備えも対応

—局長に就任して現在の心境、決意は。

 コロナ禍の最前線に立つ局として、「戦う姿勢が明確に出ている」と実感しています。

 人事、法務といった行政の「礎」を固める仕事と、新型コロナ対策としての飲食店等の点検・サポートや業界団体との調整といった「最前線」の仕事も担います。この2つの機能をどうかじ取りするかが自らの役割です。

 ワクチンが十分に行き渡るまでの間、いかにして都民・事業者に感染防止に協力してもらうかがポイントです。各局から人的・物的な応援を受けており、総務局が率先垂範、最前線で必死に取り組み、都庁一丸となって難局を乗り切る決意です。

—コロナ禍において、行政に求められる役割は強まっています。

 新型コロナ対策は最重要課題です。国や近隣三県、区市町村とも連携し、特措法に基づく効果的な措置を策定して、実効性を高める取組を推進します。

 感染主体がデルタ株へと置き換わった今、感染拡大を防ぐため、人と人との接触を徹底的に減らすことが重要です。集客施設等における徹底した入場整理など、改めて業界団体を通じて対策強化を依頼し、都職員が店舗訪問・対策確認を行うことで実効性を確保します。

 いつ起こるとも知れない首都直下地震や大規模風水害など、自然災害への備えも重要です。都は、「東京防災プラン 2021」に基づき、近年の災害の教訓を踏まえた新たな取組や防災分野におけるDX推進など、ハード・ソフト両面から対策を幅広く推進します。

 感染症と自然災害との複合災害への対応も重要です。区市町村等と連携を図り、新たな避難先の確保や避難所の感染症対策物資の充実、避難所の混雑状況を即時に発信して混雑緩和につなげる仕組みの構築など、コロナ禍での災害発生を見据えた避難対策を展開します。

—コロナ感染者への偏見や差別解消など、人権施策の取組は。

 コロナ禍で感染者等に対する誹謗中傷や心無い書き込み等がSNS等で広がり、感染者を受入れた病院職員やその子供がいわれのない差別的扱いを受けたなどの事例が発生しています。

 新型インフルエンザ等対策特別措置法やコロナ対策条例の改正を踏まえ、都で新たに新型コロナウイルス感染症に係る専門の人権相談窓口を令和3年4月に設置しました。相談者の状況や要望を聞いて、希望する場合には、人権擁護機関として要請等を行う東京法務局と協力して対応するなど、相談者が抱える問題の解決を図っています。

 都民に対して、知事メッセージを動画で発信、啓発ポスターやSNSなどを通じ、人権に配慮した行動をとるよう呼びかけています。

障害者雇用を積極的に推進

—コロナ禍でこれまで以上に都と区市町村の協力・連携が必要です。行財政支援の取組状況をご説明ください。

 市町村総合交付金は昨今のコロナ禍の厳しい財政状況も踏まえて、令和3年度は過去最高額となる585億円の予算を確保しました。都と市町村が連携して解決すべき喫緊の課題である「行政のデジタル化」の取組を新たに支援の対象に追加しました。

 コロナ禍における区市町村への支援として、特別区に対して令和2年度から令和4年度まで無利子による貸付を実施しています。市町村に対して令和2年度から令和3年度まで都内公立病院を支援するための貸付条件の緩和を実施しています。

 コロナ禍を踏まえた新しい働き方や暮らし方の変化などは、多摩地域にとってチャンスとも捉えられ、令和3年9月に策定した「新しい多摩の振興プラン」では、コロナ後を見据え、多摩の更なる発展を目指した取組を推進します。

 コロナ禍ではデジタル化の遅れが浮き彫りとなりましたが、キャッシュレス決済に取り組む区市町村を支援する東京都生活応援事業や、島しょ町村小中学校における教育のデジタル化の推進等、デジタル活用を進める取組を積極的に展開します。

—都の障害者雇用の現状と今後の取組は。

 障害者を対象とした常勤職員の採用選考を実施しており、平成29年度選考から従来の身体障害者に加え、精神障害者、知的障害者に対象を拡大しました。それ以降4年間で精神障害者116名、身体障害者57名が合格しています。

 知的障害者の雇用については、平成30年度から非常勤職員であるオフィスサポーターの任用を開始し、現在11名を任用しています。この取組状況を踏まえて昨年度、非常勤職員から常勤職員へステップアップすることを可能とする雇用の枠組みを創設しており、新たな採用選考に合格した4名は、今年度から常勤職員として勤務しています。昨年6月現在の知事部局の障害者雇用率は、法定雇用率を上回る2・81%です。

 「都庁における障害者活躍推進計画」では、障害者雇用率の目標を3%に設定しています。この目標達成に向け、障害種別ごとに配慮すべき事項をまとめた事例集の改訂・周知等のきめ細かな職場環境の整備や、知的障害者の個々の特性を踏まえた職域の開拓などをより一層進め、障害者雇用の促進に努めます。

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