携帯型光源装置の研究、開発、販売、輸出入
レイギアーズ 合同会社
日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
現在、世の中のライトの主流は「LED」と思われているが、防衛や救命救急など命に関わる現場では主に「HID」と呼ばれる光源が導入されている。その製品の多くを企画製造しているのが、レイギアーズ合同会社という日本のベンチャー企業だ。同社は今、「HID」の次なる光源を活用し、世界トップクラスの製品を生み出そうとしている。
レイギアーズ合同会社は、「レイ=光線」+「ギアーズ=装置」という名の通り、光源装置、なかでも「携帯型サーチライト」と呼ばれる移動式光源を企画製造販売するベンチャー企業だ。一般的には懐中電灯などが当てはまるが、同社は主にプロ仕様の製品開発に特化している。
「サーチライト」に限らず、現在、世の中の主な光源といえばLED(light emitted diode=発光ダイオード)であり、同社はLEDを用いた製品も製造しているが、主力商品には「HID=High Intensity Discharge lamp」と呼ばれる光源を用いている。「HID」は、LEDに比べて遠くまで光が届くこと、雨、雪、霧、砂塵、粉塵などの環境下でも光が通ること、電池残量が低下しても光量が変わらないことといった特徴を持ち、自動車のヘッドランプなどに使用されている。国内では自衛隊、警察、消防、自治体、鉄道会社、空港、船舶などに導入され、海外の専門機関や企業からの評価も高い。
さらに同社では、HIDでもLEDでもない、次世代光源「プラズマ」を搭載した『TSUKUY OMI=月読(日本神話で登場する夜を統べる神)』という名称のサーチライトシリーズを製品化している。そして2021年3月、同シリーズに新たな製品『TSUKUYOMI-55』を加え、携帯型サーチライトの機能性を次の次元へと進化させた。
照明業界の転換期 これからの光源「プラズマ」
同社を率いる東賢(あずま・けん)さんは、「プラズマ」の登場により、照明業界は大きな転換期を迎えているという。
「プラズマを採用することで、サーチライトの発光をより強力に、照射距離をより長くすることが可能になります。すでに製品化している小型サーチライト『TSUKUYOMI-9』は防衛や災害現場等で使用していただいていますが、我々は世界的に最も強力なサーチライトの開発に挑戦しました。そして3年の歳月をかけて、ようやく完成しました」
『TSUKUYOMI-55』は、名称の数字通り、照射距離が既存製品の最高水準に近い5.5㎞と超長距離を実現しながら、光源寿命が10000時間、点灯時間は一度の充電で1時間半~5時間を達成。これは、世界的にもっとも有名な軍用携帯型サーチライトと比較しても遜色なく、むしろそれ以上の機能性を持つという。
「その有名な軍用サーチライトは、光源寿命が1000時間程度で、500時間を過ぎると明るさが半減してしまいます。一方、『TSUKUYOMI-55』は10000時間という光源寿命を保ちながら、明るさがほぼ変わりません。また、価格も約半額で、ランプ交換の必要もありません」
5㎞以上の照射により 救命救急の可能性を変える
東さんは、実は『TSUKUYOMI』シリーズとして、LED光源を用いて約6㎞の照射距離を持つサーチライトを開発したことがあったと明かす。
「照射自体は非常によかったのですが、LEDのため高い出力数が必要となり、電力消費が激しく、重量の重い大容量電池が必要でした。また、放熱もあるため冷却部の重量も加わり、レンズの大型化も避けられませんでした。プラズマを採用することにより、それらの課題をクリアでき、『TUKIYOMI-55』では半分以下の大きさと出力、2/3の重量に抑えることができました」
従来のHIDを用いたサーチライトシリーズの照射距離は2㎞ほどだったが、そこから3㎞伸ばし5㎞にすることで、災害現場や海上などでの発見は早まる。人命救助の可能性は飛躍的に高まるという。
さらに、プラズマのライトは防衛や警備の選択肢も広がると、東さんはいう。別名「擬似レーザー」と呼ばれるように、対象人物に光源を当てると、一時的に視覚や平衡感覚も奪うことができるというのだ。
「プラズマはサングラスも通しますから、昼間でもその効果は発揮されます。そして、効果は一時的なので、時間が経てば元に戻ります。『人を殺さない武器』ともいわれ、警察官や自衛官、海上保安官が安全に、かつ相手にも後遺症を与えずに運用できる理想的な手法といえます」
メイドインジャパンの品質で 世界の防衛、災害現場のために
『TSUKUYOMI』シリーズに限らず、これまで同社が開発してきた製品は、どれも現場での評価は高く、ロングセラー商品として利用され続けている。
「サーチライトは、海外の競合製品も多く、価格は日本製に比べて低価格ですが、我々は品質で勝負しています。まず、照射距離などの機能性の正確さ。距離表示はアメリカの評価規格を採用し、客観的な証明をしています。海外製品はその保証がなく、実際に使ってみると表示している性能に満たないことが多い。また、我々の製品は寿命が長く、メンテナンスすれば10年以上使えますが、海外製はひどいと1年も持たないものもある。長い目で見れば、我々の製品は必ず評価されると信じています」
『TSUKUYOMI-55』にも機能性、耐久性はもちろん、現場での使いやすさにもこだわる同社のクラフトマンシップが凝縮されているという。
「持ち運んで使用することを前提に、強い耐久性や防塵、防水性などに加え、軽量化も徹底しました。その上で、悪条件が想定される防衛や災害現場での使いやすさを細かい部分まで考慮しています。また、発電機につないで長時間使用することも可能です。現場の方であれば、使えばその良さがすぐにわかっていただけると思います」
同社のサーチライトは一部貸出サービスを行っている。その技術力に興味を持たれたら、まずは問い合わせ、実際に試してみることをお勧めしたい。