財務局長 潮田勉 氏

  • 聞き手:平田 邦彦

東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は昨年夏に財務局長に就任した潮田勉氏。令和3年度予算の特徴、財政運営のあり方、都有施設の更新などについてお話を伺った。

不測の事態の対応が使命

財務局長 潮田勉 氏

都民の命を守る予算を編成

—局長に就任しての感想はいかがですか。

 オリンピック・パラリンピック準備局から昨年夏に異動しました。前の局ではコロナ対策に注力しましたが、財務局でも変りません。これまで20回以上の補正予算を編成し、コロナ対策に取り組んできました。今後もコロナ対策など全庁的な課題に対し、各局と連携し、効果的な対策を迅速に打てるようにしていきます。

—令和3年度予算が執行されましたが特徴、編成時の苦労は?

 令和3年度予算は、厳しい財政環境の中にあっても、都民の命を守ることを最優先としながら、東京の経済を支え、その先の未来を見据えて、都政に課せられた使命を着実に果たしていく予算です。

 限られた財源の中で、いかに喫緊の課題に対応し、同時に、未来の東京に向けた「メッセージ」となる予算を創り上げていくかに腐心しました。全体としては、各局の協力によりメリハリを効かせた予算にすることができたと思います。

 都はこの間、都債の発行を抑制するとともに、計画的に基金残高を確保し、財政対応力を培ってきました。結果、これまで3兆円を超えるコロナ対策を切れ目なく講じることができました。

—これまで東京都は富裕団体と見なされてきましたが、逆にそうだったからこそ、今年度予算ではコロナ対策を講じることができたのではないでしょうか。

 私は決して富裕団体とは思っていません。東京都は都道府県の中で唯一、国の交付税の不交付団体です。不交付団体は各事業について自らの財政力で賄わなくてはなりません。

 お金を貯めるために財政運営をしてきたのではなく、今回のような不測の事態があった際、どれだけ迅速に、中身のある取組ができるかということが我々に課せられた使命だと思います。それ故に、切り詰められるところはしっかりと切り詰めることで、いざという時に思い切って対策を講じられるのだと考えています。

 「こんなに使って大丈夫なのか」という心配の声もいただきましたが、今後もやるべきことはしっかりとやっていかなければなりません。勿論、財源には限りがありますので、効率的な財政運営に引き続き務めます。

事業提案制度を積極導入

—先日、「第二次主要施設10か年維持更新計画」の見直しが公表されました。今後、都有施設の維持更新をどう進めるのでしょう。

 都はこれまで、2次にわたり「主要施設10か年維持更新計画」を策定し、都有施設の維持更新を計画的に進めてきました。

 先日、今後の都政の大きな方針となる「『未来の東京』戦略」や、「シン・トセイ 都政の構造改革QOSアップグレード戦略」が公表されましたが、現計画の策定から6年が経過する中で、都有施設を取り巻く環境も変化しています。

 都政の重要課題への対応、施行時期や財政負担の平準化、長寿命化によるライフサイクルコストの縮減等の観点から、より実効性の高い計画に見直すため、今後庁内調整を行い、策定作業を進めていきます。

—ソーシャルボンド等の発行に意欲的ですね。

 環境施策を強力に推進することなどを目的に、平成29年度から全国の自治体に先駆けて「東京グリーンボンド」の発行を続けています。年々、投資家からの需要が高まっていることから、令和3年度は発行額を100億円増額し、合計400億円に拡大します。

 これに加え、新たに国内自治体として初めて「ソーシャルボンド」を600億円程度発行し、中小企業制度融資の預託金や特別支援学校の整備など、「サステナブル・リカバリー」を進めていく中で、様々な社会的課題の解決に貢献する事業の財源として活用します。

 こうした「ESG債」の発行を拡充し、投資家に効果的に訴求することで、円滑な資金調達を行うとともに、金融分野からのSDGs実現の後押しと、国内におけるESG投資の更なる促進につなげていきたいですね。

—財務局では、都民による事業提案制度を導入しています。どのようなものでしょうか。

 小池都政が誕生してから、都民の皆様の意見を事業に反映させようという取組がはじまりました。昨年はテーマをコロナ対応などに絞ってアイデアを頂きました。

 今年は、東京の未来を担う若い世代の方にもっと都政を身近に感じてもらうことが大事だということで、高校生などからの提案も受け付けることとしました。また、今年は春から募集を開始し、都民の皆様からいただいた提案を関係局でブラッシュアップする期間をこれまで以上に確保しました。

 その他、財務局はホームページに「TOKYO予算見える化ボード」を開設しました。現在の東京都の事業の進捗状況などを確認できます。だれでも簡単にデータを利活用できるので、事業提案をする前に見てもらうこともできます。こうした取組を通じて、都政についての理解を深めてもらえれば幸いだと思っています。

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