感染対策にも役立つ「まるごと防災」太陽光シートを活用した照明を開発
帝人フロンティア株式会社
新型コロナウイルス感性症の影響により、災害時の避難所にも感染対策が求められ始めた。それに伴い、「まるごと防災」を手がけてきた帝人フロンティア株式会社も感染対策につながる資機材の商品化を始めた。今号ではその取り組みとともに、今年10月に「まるごと防災」に取り入れたばかりの、曲がる太陽光シートを活用した新たな照明に注目する。
避難所でも感染対策が必須に
「まるごと防災」も対応
2020年、世界中に蔓延した新型コロナウイルス感染症は、災害時に設置される避難所のあり方にも大きく影響を及ぼした。避難所運営は、国の防災指針を定める内閣府が地方自治体にガイドラインを提示し、それに従って行われるのだが、そのなかに新たに「感染対策」も含まれることとなった。ちなみに、感染対策を加えた避難所対応を、通称「ダブルパンチ」と呼ぶ。
例えば、災害時に避難所となる学校の体育館では、「三密」を避けるために、収容人数を従来と比べて1/3程度に抑えなければならない。また、外部からの感染防止対策として、ボランティアや炊き出し人員は地域内に限定される。また、感染者が出た場合を想定し、体育館内でエリア分けをしなければならず、移動の導線もそれぞれ確保する必要がある。
こうした「ダブルパンチ」をサポートすべく、帝人フロンティアが手がけてきた、建物内の安全、BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)、備蓄、水際対策の自助共助公助を補完するためのプラットフォーム「まるごと防災」でも、フェイスガードや多機能マスク、一人用布団、医療用ガウン、圧力の関係で空気の流出が防げる「陰圧テント」、体温チェックができる顔認証機、オゾン除去脱臭器など、感染対策につながる資機材を続々と提供してきた。
太陽光でLED照明を点灯
電源工事不要で持ち運び簡単
そうしたなか、同社は今年10月に「まるごと防災」の新たな取り組みとして、小松マテーレ株式会社製の太陽光照明「ライト・ポール」を避難所などで防犯対策として設置する提案を開始した。
この照明器具は、ポールに巻きつけた太陽光シートで発電する仕組みで、ポール内にはバッテリーとコントローラーを内蔵、太陽光発電によりバッテリーに充電して、夜間6ワットのLEDライトを点灯することができる。
照明器具自体やそれを支えるポールはもちろん、太陽光シート自体が軽量のため、男性1人で持ち運ぶことができる。また、大きさも直径約20cm、長さ2mほどで、狭いスペースで保管することが可能だ。
また、太陽光で発電ができるため、設置する際の電源工事も不要。つまり、支柱となるものさえあれば、電源の有無を気にせず、あらゆる場所に取り付けることができる。例えば、前出のように学校が避難所になる場合、照明のない場所にある簡易トイレの近くに「ライト・ポール」を設置すれば、夜間でも安心してトイレに行けるようになる。
照明と同時に避難所の新たな電力供給基地に
「ライト・ポール」は照明器具であると同時に、太陽光で充電した電力をさまざまな電子機器の電源としても使用可能だ。もともと「メタルビー」はUSBコネクタを内臓しており、充電用コントローラーを使わず、携帯電話や充電式ライトなどの電力として使用することを想定している。この機能は「ライト・ポール」でも活用できるため、岸本さんは、避難所の電力供給拠点としても、感染対策にもつなげていきたいと語る。
「簡単に言うと、避難所に簡易型の太陽光発電機を照明器具と同時に設置できるということです。この電力供給基地があることで、避難所に新たな電力網を構築することができます。そうすれば、現在弊社で開発中の電源内蔵型ポータブルテレビを各スペースに配置し、各々がスマートフォン等の充電ができるだけでなく、緊急時の防災情報を受信することもできます。おそらく今後の避難所では、感染対策としてパーテーション等での区切りが一層強化され、個々に情報が行き渡らないなどのリスクも考えられますが、このインフラにより解決できます。他にも『ライト・ポール』の電力網により、避難所の機能は格段に上がると思います」
ある防災の専門家は、災害時の、暗闇の中の「明るさ」は、人に大きな力を与えると語る。その物理的な「明るさ」だけでなく、電力が使えるという機能性は、「ダブルパンチ」の避難所においても、心強い存在になるだろう。「まるごと防災」も含め、同社の今後の取り組みに注目したい。