自給自足のすすめ

  • 記事:平田 邦彦

コロナ禍の中で気づいたこと

 テレワークだの在宅勤務が当たり前になりつつある中で、都心のオフィスは大きく変わり始めている。前号にも書いたが、人数分の机を持たない会社が現出する中で、これまでのような大規模な事務所スペースは不用となり、小さな事務所なり郊外に移転する動きも見えている。

 大規模無柱空間を売り物に、陸続と高層ビルが計画され、建設が進んではいるが、過剰供給になる日も近いと考えるべきではないだろうか。

 一方で畑を必要としない野菜工場の技術は目覚ましいものがあり、革新的な試みが各地で行われて、次第に成果を見せ始めている。

 太陽光を必要としない栽培方法が次々開発されて、ビルの地下で野菜を作り出すことも行われている。

 なればそうした空間の高度利用を促進して、東京自身が地産地消に積極的に取り組んでいけないのだろうか。空きスペースができたオフィスビルに止まらず、鉄道の高架下もその対象としたい。

 そもそも明治維新後の日本の総人口は3千万人と言われているが、それが今は4倍以上に膨れ上がっている。この小さな島国が支えられる人口はその程度だったことを思えば、目覚ましい進歩に助けられていると考えるべきだろう。

 現在は流通の発展、貿易などによってこの体制が成り立っているものの、食料自給率は2018年現在で37%と言われるほどに低下している。一方でフードロスの問題も注目され始めた。

 輸入に6割も依存しながら、挙句に消費されることなく捨て去られる食品も増えているという、ゆがんだ状態になっていることを看過してはならない。流通インフラの発達は、居ながらにして全国の食材が手元に届くこととなり、豊かな食料事情を可能にしている。この矛盾した状況を打開する必要がそれほど注目されていないことをもっと深刻に考えようではないか。

 東京は首都として巨大なメガロポリスとなっているが、後追いでそれに対応するインフラの整備を進めてきた。それは対処療法であって、社会のメカニズムを見直す工夫はされていない。

 交通の混雑解消のために道路を整備し、全国から東京に向かう体制作りに注力してきたが、もうそれを見直し、社会構造改革を図る知恵を出す時期にきているのだ。

 地産地消の食材は、単純に新鮮で美味しい。なればそれを自身で作り出す工夫を考えてみようようではないか。東京が自己完結できる食品生産体制を整えれば、現在のインフラがむしろオーバースペックになる可能性だって見えてくる。

 コロナ禍のお陰で気づいたそんな提言をすべきと考えた。

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