令和元年度の決算で質疑

  • 記事:遠藤 直彦

 令和元年度の東京都の一般会計予算など計17会計の決算を審議する「令和元年度各会計決算特別委員会」が設置された。3つの分科会での質疑を経て、11日には小池知事も出席して全局質疑が行われた。新型コロナウイルス感染症対策などで論戦が交わされ、決算は12月の第4回定例会で議決されることになっている。

都議会各会計決算特別委員会

〈新型コロナウイルス感染症対策〉

 今年1月に国内での初感染が確認されて以来、現在に至るまで感染者数は増加しており、その影響は広範囲に及んでいる。

 公明は、新型コロナウイルス感染症によって、今年の都内中小企業の資金繰りが例年以上に厳しいことを指摘、都の対応を質した。産業労働局は「新型コロナウイルス感染症対応緊急借り換えによって債務の返済期間を延長することができる上に、元本の返済も最長2年間据え置くことで、実質的な返済猶予が可能だ」と答弁、その他の融資メニューでも中小企業の負担軽減を図っていることを説明した。

 東京みらいは、コロナ禍を契機に学校に縛られずに、子どもを中心とした学習を受けられる環境の整備の必要性を訴えた。教育庁は「教育支援センターに整備したタブレット端末を家庭学習や担任との連絡に活用したことで、児童生徒の学習意欲の向上や担任との関係の構築につながった事例が昨年度までに報告されている」と、成果が出ていることを紹介した。

 〈都財政運営〉

 都は新型コロナウイルス感染症対策で補正予算を数回編成しており、財政調整基金の多くを取り崩している。法人税の大幅な減収が予想される中、都財政のあり方で議論が交わされた。

 都民ファーストの会は、都が令和2年度予算編成で行った事業評価で、1030億円の財源を確保したことに触れ「こうした成果を都民に理解してもらうことが重要だ」と質した。財務局は「冊子『東京都予算案の概要』で、事業評価の全体像を示すと共に、主な評価基準は図や表を用いて掲載するなど、都民によりわかりやすく伝わるよう工夫している」と答弁した。

 この他、都の基金や起債の積極的な活用で、税収以外の財源を確保するよう求める意見も出された。

 〈ベビーシッター利用支援事業〉

 この事業の平成30年度の予算規模は50億円だったが、執行率は0・8%。令和元年度の予算規模は20億円で執行率は11・4%という、実態にそぐわない状況となっている。

 福祉保健局は、この事業は多様な保育サービスのひとつとして今後も活用する意向を示しているが、自民は「予算額が先行し実績が著しく伴わない事業のあり方は厳しく指摘したい」と批判した。

 〈外環道整備〉

 地下での建設が進められている外環道だが、10月18日に工事現場の上の調布市の道路が陥没していることが明らかになった。共産は「10月18日の道路陥没事故はずさんな工事の結果だ。都は工事を事業者まかせにするのではなく、都民の生命と財産を守る立場を明確にすべきだ」と迫った。

 小池知事は「外環事業は、国、高速道路会社によって事業が進められている。都は10月21日、国、東日本高速道路に対し、早急に原因を究明すること、住民の不安の払拭に向けて丁寧な説明や対応を行うことなどを要望している」と答弁、共産の主張とは平行線をたどった。

 〈その他〉

 かつて東京都が整備を目指した平和祈念館(仮称)は、展示内容などを巡り都議会で議論がかみ合わず、平成11年度には「都議会の合意を経た上で実施すること」との付帯決議がなされた。以降、現在まで整備着手されていない。

 民主は来年の五輪を控え整備を進めるべきだと、小池知事の見解を質した。小池知事は「付帯決議の重みを十分認識している。都議会での一定の審議と合意がまずは必要だ」と答弁するに留まった。

 アメリカ大統領選で勝利宣言をしたバイデン氏について、小池知事の見解を問う一幕もあった。小池知事は「今回の大統領選は民意を表したものだと思う。分断されたアメリカではなく、まさにユナイテッドステイツとしてまとめていくことを期待したい」と答弁している。

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