行政、地元市民とつくりあげた商業施設×公園の新たなまちづくり
東急株式会社
日本のアウトレットモールの先駆けとして、東京、神奈川に暮らす人々を中心に愛されてきた「グランベリーモール」が、2019年に大きく生まれ変わった。それは、単なる商業施設のリニューアルにとどまらず、隣接する鶴間公園とも連動した、南町田周辺に暮らす人びとが主役の、新しい郊外型まちづくりへの挑戦だった。
アウトレットモールから駅、公園一体の暮らし拠点へ
東急田園都市線「南町田駅」直結のアウトレットモールとして親しまれてきた「グランベリーモール」が、2019年11月13日、「グランベリーパーク」として生まれ変わった。アウトレットモールなどの商業施設のリニューアルのみならず、駅および周辺の都市公園や運動施設を含めた官民連携の複合生活拠点は、都内はもちろんのこと全国的にも珍しい。
南町田グランベリーパークは全体で東京ドーム5個分。「グランベリーモール」にあたる「ショッピングゾーン」と、同モールに隣接していた鶴間公園と運動場をリニューアルした「鶴間公園」、その両方にまたがる「パークライフ・サイト」の3つのゾーンにより構成されている。
2019年12月には「スヌーピーミュージアム」がオープン。ほかにも関東初出店のショップなども多く、すでにメディアでも取り上げられているため、詳細はそちらに譲るが、記者が訪れて驚いたのは、商業施設と都市公園が見事に調和し、どこにいてもストレスを感じないこと。開放感に溢れ、自然を感じる要素が随所に配されているのだ。特に「ショッピングゾーン」から鶴間公園に抜ける「パークプラザ」付近は、大和〜丹沢方面を見下ろす傾斜になっており、富士山を含む雄大な景色が一望できる。
もうひとつ驚いたのは、来場者の居住地域や年齢層が極めて多様であることだ。近隣から訪れる家族連れやシニア世代、遠方から訪れる若者グループまで、それぞれの楽しみ方でこのパークを満喫しているように見えた。これほど幅広い人々が同居する施設は、ありそうでなかなかない。
開業から約1年、一時は新型コロナウイルス感染症による影響もあったというが、10月現在、客足は概ね復活したという。
2013年より本格的な開発に着手
行政、地域住民と連携し創り上げる
前身の「グランベリーモール」が開業したのは2000年。駅直結の郊外型アウトレットモールとして注目を浴び、東急田園都市線沿線のシンボル的存在ともなったが、実は「モール」はあくまで暫定的な姿だったと、同パーク総支配人の青木太郎さんは打ち明ける。
「もともとモールの土地は弊社の所有地であり、この土地を利用して郊外型の新しい拠点を作ろうと計画していました。その暫定利用として、当時まだ日本では珍しいアウトレットモールを創ったのですが、想像以上に好評でした。しかし、競合施設の出現や建物の老朽化、バリアフリー化への対応、さらにはライフスタイルの変化もあり、これらの課題解決に改めて着手しました」
モール閉鎖は2017年だが、開発に向けたプロジェクトは、2013年よりスタートしていた。南町田を町田駅周辺に続く第二の市の中核拠点にしたかった町田市が、周辺自治会などと共同で地区整備検討会がスタート。同年、東急と町田市が「町田市内の東急田園都市線沿線地域におけるまちづくりの推進に関する協定」を締結。「グランベリーモール」「鶴間公園」「鶴間第二スポーツ広場」を含む一体型開発・整備に関する方針の具体的な検討に入った。
2014年には共同推進協定を締結。2015年には意見公募を実施。その意見を踏まえた形で、「南町田駅周辺地区拠点整備基本方針」が作られ、官民連携の開発体制を強化し、整備計画の作成を本格的に進めることとなった。
一方で、2015年にはまちづくりについて学ぶ公開研究会、2016年からは公園を中心とした地域のあり方や使い方考える市民参加型ワークショップを実施し、地域住民と共にまちづくりを進めていった。
持続可能なまちづくり
自然と共存する楽しく安全な「パーク」
モール閉鎖後、本格的なリニューアルに向けて整備工事がスタートした。その間に自然と憩いが共存する「パーク」という言葉を用いた「南町田グランベリーパーク」という名称が決定。さらには、官民と地域住民が一体となって創り上げた「充実したパークライフを体現するための、ウォーカブルで持続可能なまちづくり」という考え方が高く評価され、2019年1月に国際的な環境認証制度「LEED ND(まちづくり部門)(※1)」でゴールド認証を取得した。
そして2019年11月、無事「まちびらき」を迎えたわけだが、来場者は開業12日間で100万人を突破。想像以上の人出だったと、青木さんは振り返る。そして前出のとおり、新型コロナウイルスの影響を乗り越え、今や新たな生活拠点として受け入れられつつある。
「地域の方々の暮らしの拠点でもあるので、このパークは安全面の確保も徹底しています。歩行者と車は分離して、パーク内は歩行者空間となっていますし、24時間体制で管理しています。また、鶴間公園にはヘリコプターなども受け入れられる規模の防災設備も配置。新型コロナウイルス感染リスクも含め、利用するすべての方に安心して過ごしていただける環境維持に努めています」
地域住民を中心に、楽しく、豊かに、そして安全に生活できる「パーク」。次世代の郊外型生活拠点の理想形のようにも思えるが、青木さんはこれからも開発は続くと語る。
「今後は、周辺に住宅の開発も予定しています。パーク内にはすでにコワーキングスペース(※2)があり、在宅ワークの二次拠点として利用していただいていますが、コロナ後はさらに増加すると思います。また、ホスピタリティはまだ向上できる余地があります。テーマパークのように、接客でも満足でき、また来たい、そして住んでみたい、と思えるパークが理想形です。そのためにも、引き続き行政、地域の方々との関係性を深めていきたいと思います」
※1:LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)は、米国グリーンビルディング協会によるグリーンビル認証システム。同認証のうち、エリア開発に関する「LEED ND(まちづくり部門)」は、環境への配慮、エネルギーや資源の効率化、歩行者中心のまちづくりなどに与えられる
※2:Co Working Spaceは、異なる職業や仕事を持つ利用者が共有し、交流することができる場所のこと
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