第77回 チーズであってチーズでない?イタリアのリコッタ
古代ローマ、ギリシャ時代にすでに存在していたリコッタ。その名は、ラテン語の「レコクトゥス」に由来し、「リ(再び)」+「コッタ(煮る)」と作り方を示しています。
イタリアなどで作られる、フレッシュチーズの多くは、羊や山羊、牛、水牛などのミルクを用い、そこにあらかじめ培養しておいた乳酸菌とカーリオと呼ばれる凝固酵素(レンネット)を加え寝かします。するとそれまで液体だったミルクが酵素の作用によって、やわらかく固まりはじめます。これは、カードというタンパク質や乳脂肪分が固まったもの。カードをやさしく崩し、必要な温度まで加熱後、カード(凝固物)のみを取り出し、さらなる工程を経たものがチーズです。
この時、鍋に残った液体をシエーロ(ホエーまたは乳清)といいます。たんぱく質、乳糖、ビタミン、ミネラルなどを含むシエーロを再加熱し、温度が80℃近くに達すると鍋にフワフワとした白い固形物が浮いてきます。それをフシェッレと呼ばれる小さなザルにすくい集めて水気を切ったものが、リコッタなのです。
このフシェッレは現在でこそプラスチック製のものが主流ですが、古くは葦やつるなどを編んだザルが使われていました。
リコッタは、チーズの製造の際に、必ず残るシエーロを使った副産物であるため、イタリアには山羊乳のリコッタ、水牛乳のリコッタと、さまざまな種類があります。
イタリアにおいては、貧しい庶民の生活に根付いてきた食材であるリコッタ。古くはナポリなどの街中では、パンに挟んだリコッタ売りの姿が見られ、それを皿の代わりにぶどうの葉に包んで売っていたそう。現在でも、イタリア各地のカゼイフィーチョ(チーズ製造所)において、毎日フレッシュなリコッタが作られており、でき立てのまだ温かいリコッタは、でき立てのお豆腐を食べるような感覚にちょっと似ていて、味わいも格別です。
次回もまた、このリコッタの話題が続きます。