都市整備局長 上野 雄一氏
東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は都市整備局長の上野雄一氏。都市整備局は東京を世界に選ばれる都市とするための重要な役割を担っている。コロナ禍でのまちづくり、築地の市場跡地の再開発の現状などについてお話を伺った。
新しい日常に対応した都市づくり
ICT等を活用したまちづくりを
—都市整備局長に着任しての所感は。
都市整備局は都市づくり全般の政策立案、道路や鉄道の交通ネットワークの整備、土地区画整理事業や市街地再開発事業等によるまちづくり、建築物に関わる指導、基地対策など、都民の皆様の生活に広く関わる業務を担っています。
コロナ禍では感染防止と社会経済活動の両立が重要であり、都市の集積のメリットを生かしながら、三密の回避をはじめ、新しい日常に対応した都市づくりを進める必要があると感じています。
—現在、局の重点事業は。
ウイズ・コロナの中では、「新しい日常」に対応する都市づくりが重要です。
また、局事業の一つの柱として、災害に強い都市づくりを進めるという事があります。水害対策では、先日、国との検討会議(災害に強い首都「東京」の形成に向けた連絡会議)が開催され、中間のまとめを公表しましたが、その中では「高台まちづくり」が一つのテーマです。
従来広域避難の計画を持っていましたが、実際は台風により鉄道が計画運休し、想定していた広域避難は難しい事がわかりました。
この時、住んでいるところで避難スペースを確保する必要性が強く認識され、垂直避難のためのスペースを公共施設などの中に整えていくことを検討すべきだという声がありました。
小池知事と国交大臣が視察でお会いして検討会議の設置が決まり、今回の中間のまとめに繋がりました。
また、木造住宅密集地域の改善など燃えない・倒れない街づくりとして、「木密地域不燃化10年プロジェクト」を着実に進めていく必要があります。同時に、緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化を進める取組もまた重要であり、共に着実に進める必要があります。
国際競争力を高め、都市の魅力を向上させるための取組も必要です。
鉄道・道路のネットワーク強化では、地下鉄8号線延伸や新空港線(蒲蒲線)新設など6路線の事業化に向けて、国など関係者との協議・調整を進めます。また、品川や新宿、築地などの整備、拠点の形成を進めていきます。
—コロナ禍が都の都市づくりに与える影響をどう見ますか。
都として目指すべき都市像は、「都市づくりのグランドデザイン」で、2040年代を目標年次としたものを既に示しています。これを法定の方針として位置付けるために、都市計画区域マスタープランの改訂の手続きが今進んでいます。
ICTも活用し、多様なライフスタイルに対応した住まいや働く場の充実を進める必要があります。
この間、テレワークが飛躍的に浸透し、鉄道の混雑緩和が進んだことは、グランドデザインで描いていた将来の一端が、コロナ禍で早まっているという見方もできます。
郊外でテレワークにも対応したスペースのある住宅が必要になったり、歩いて暮らせるまちづくりを進める上でも、サテライトオフィスやワーケーションなどの施設や環境を整える必要が出てきます。
一方で都心部の「職住近接」として、駅まち一体の都市づくりが必要となり、交通結節点で、住み、働き、買い物等ができる環境を整えていく必要があります。そうした多様化したニーズへの対応として、建物の新築やリノベーションにより都市づくりを進めていく必要があるのだろうと思います。
都民の安全・安心を守る
—都の注目事業である「築地のまちづくり」の現状はいかがですか。
今年の3月の時点で、2020大会の延期といった状況の変化の中で、先行整備事業を実施するための実施方針を見直すこととしていましたが、船着き場の先行整備と本格整備の事業者を一体的に2022年度に募集する方向で、その前年度である2021年度に実施方針を出せるように検討していきたいと思っています。
—近年のゲリラ豪雨や台風への対応は。
もともと平成26年に豪雨対策の基本指針を策定して取組を進めており、そこに昨年台風19号の被害が生じたことも踏まえ、豪雨対策のアクションプランを今年の1月に策定しています。
調節池などさらなる貯める機能の強化や、台風の関係では多摩川の樋門の対策などを盛り込んだものになっています。
—最後に職員に向けてメッセージをお願いします。
現場感覚を大切に、分野横断的な視点を持ち、専門性も生かしながら、多様な経験を積んで、スキルを上げていって欲しいと思います。
また、今は全庁的に、コロナ対応のための給付金事務や宿泊療養施設の業務に協力する体制です。そうした支援業務に対応しながら、局の業務を日々遂行していただいていることに感謝しています。
今は難局にありますが、東京の未来への思いを持って、共に東京の都市づくりを進めていきましょう。