小笠原への航空路

  • 記事:大竹 良治

ティルトローター機も選択肢に

 小笠原への航空路開設に向け検討している東京都の「小笠原航空路協議会」は7月31日、第9回の協議会を開催した。その中で、これまで検討してきた短い滑走路で離着陸できるターボプロップ機(プロペラ機)に加え、新たに米軍や自衛隊で運用している「オスプレイ」のように垂直離着陸能力も持つ「ティルトローター機」についても候補とするよう提案した。

左:ターボプロップ機 ※写真はATR42-600 右:ティルトローター機「AW609」

 都心から1000㎞離れている小笠原へのアクセスは現在、6日に1便、片道24時間の「おがさわら丸」に限られており、島で急患が出た場合などは自衛隊の飛行艇や海上保安庁の航空機が硫黄島まで飛んで対応するしかないのが現状だ。

 そのため、空港整備は村民の長年の悲願だが、最大の課題は滑走路の建設。90年代には兄島にジェット機も離着陸できる1800m級の滑走路建設が持ち上がったが、環境への影響が大きいことから頓挫、父島南部の時雨山も検討されたが同じ理由で撤回された。

 その後、石原都政時代には、最高時速70㎞、片道17時間で航行できる「スーパーテクノライナー(STL)」の導入が浮上、2004年には船も建造されたが、原油高騰の中、燃費が悪く、高波にも弱いことからスクラップとなった経緯もある。

 小池知事は一昨年6月に開催された「小笠原諸島返還50周年記念式典」で「島の自立的発展、島民の安心・安全を守る観点から空港建設は必要」との認識を示した。現在は父島の洲崎地区に絞り1000m以下の滑走路で運用できる機材を検討しているところだ。

 これまで、フランスの航空機メーカーが開発中の「ATR42―600S」が有力候補とされていたが、今回、新たにイタリアのメーカーが開発しているティルトローター機「AW609」が候補に加えられることとなった。

 同機は滑走しての離着陸でも400m程度で可能というから、滑走路の建設費、整備期間短縮の面でメリットがあると思われるが、現状では定員9名と少なく、採算面での課題が大きいとの指摘もあり、今後の検討の行方が注目される。

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