オリンピック・パラリンピック準備局長

  • 聞き手:平田 邦彦

 東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回はオリンピック・パラリンピック準備局長(7月3日当時)の潮田勉氏。マラソンと競歩の札幌開催や感染症の蔓延による延期など、状況は流動的だ。2度目の登場となる今回は率直な思いを語ってもらった。

五輪開催に向け準備

オリンピック・パラリンピック準備局長 潮田 勉氏(7月3日インタビュー当時)

安全・安心な大会運営目指す

—前回、2017年9月のインタビュー以降、状況が大きく変化しました。

 前回のインタビューでは、ボランティアの参加の仕組みについてお話ししました。翌年に募集を開始しましたが、ボランティアについて批判的な一部報道等も出たことから、さまざまな機会を活用して丁寧な説明に取り組みました。

 その結果、実際に募集を始めると多くの方から応募をいただきました。非常にありがたいことです。

 今は都が一丸となって新型コロナウイルス感染症との闘いを続けながら、来年の大会に向けた準備に取り組んでいますが、ボランティアをはじめ大会に関わる全ての方々にとって、いかに安全・安心な大会にしていくか、これが最大の課題です。

—ワクチンの開発が急がれますね。

 ワクチンや薬の開発については連日のようにいろいろな報道がされています。この病気はまだわからないことが多いですが、医療技術の進歩に期待するところです。

 我々としては、来年どのような感染症対策を講じていくのか、国、組織委員会をはじめIOC、IPC、WHO等と意見交換をしていますが、今後はさらに検討を深め、オリンピック開催都市としてしっかり準備を進めてまいります。

—昨年はラグビーワールドカップが日本で開催されました。そこから得るものも多かったのではないですか。

 本大会があれだけ盛り上がることを予想できた方はあまりいなかったのではないでしょうか。

 ラストマイルの運営、警備体制、交通アクセス、ボランティア運営などは2020大会準備に資する経験になりました。

 会場外でも大型ビジョンで試合を観戦できるファンゾーンには、平日にもかかわらず入場規制を行わなければならないほどの盛況ぶりでした。こうした運営のノウハウは、現場に即した適切な対応を重ねることで培うことができました。

 また大きな台風の影響で一部の試合が中止になったりしました。その際、屋外のファンゾーンを開けるか閉めるかの判断を迫られました。こうした、いわば危機管理の部分でも、得るものは大きかったです。

—大会が1年延期されたことで、準備に余裕が生まれたのでは。

 施設整備のうち、新規の恒久施設については、整備が終わり、仮設施設についても順調に進んでいましたが、延期に伴い工事を一旦停止した上で、今後このまま進めていいのか、安全面で問題はないのかといった点について組織委員会等と連携しながら対応を検討しています。

 各会場についても1年延期されたことで、翌年に会場を使用することになっていた方々との調整等が必要になっています。しっかりとご理解いただいて大会開催に漕ぎつけます。丁寧な対応が求められますね。

 またテストイベントができない競技場については今後、運営テストの実施方法等の検討も必要になります。

コスト縮減でIOC等と一致

—コロナの影響で1年延期で済むのかという意見も目立ってきました。

 色々と議論はありますが、定期的にIOC、IPC、WHO等と一緒に意見交換を行っています。今後、コロナに対してどこまで対策を講じるのか、しっかりと考えていきたいです。

 また、都民の理解を得るべくコスト縮減にも取り組みます。

 IOCと組織委員会、それに都は、4月にサービスレベルの見直しを行うことなどを確認しています。

 本来のオリンピックの姿に立ち返るというか、シンプルな大会にしようという方向で一致しています。各競技団体などさまざまな団体との調整が必要ですが、適正な規模で大会が開催できればと思い準備を進めています。

 今回の延期が契機となって、五輪の簡素化に向けた議論のきっかけになるのではないでしょうか。

—局長の五輪開催に向けた決意があれば。

 これまで多くの都民の方々、地域、関係団体、企業及び関係機関等の皆様のご理解やご協力をいただくことで、ここまで大会準備を進めてこられたことに深く感謝を申し上げます。

 新型コロナウイルスとの闘いは世界的規模に拡がり、長期化が懸念されるなどたいへん厳しい状況ではありますが、来年の安全・安心な大会の実現に向けて、組織委員会、国をはじめ関係機関と連携しながら準備に全力を尽くしてまいります。

 新型コロナウイルス感染症が蔓延してから、局職員や組織委員会に派遣されている都職員が、福祉保健局などに応援に行っています。PCR検査の体制づくりや軽症者等の宿泊療養のホテルでの受付など、さまざまな場面で頑張ってくれています。

 先日、一部の職員が戻ってきて、現場でのいろいろな話を聞かせてくれました。皆さん幅広い危機管理対応を経験したのだなと感じました。とても頼もしかったですね。

 そうした経験を積んだ職員が来年の五輪大会でも大いに活躍してくれることを期待しています。

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