リフォームを考える ーシリーズ9ー

  • 記事:編集部

写真提供/住友林業ホームテック株式会社

災害に強い家づくりで減災を目指す

 東京では昨年3つの台風と集中豪雨に見舞われ、大きな被害を出すこととなりました。昨今の地球温暖化の影響を受けて、台風の発生カ所がこれまでに比べて高緯度になり、勢力が衰えないままに首都圏を直撃するようになったと言われています。  今回のリフォーム特集は、今後起こりうる自然災害から住宅と生活を守るためにはどうすれば良いか、戸建て住宅の強靭化について、さまざまな観点から考えていきたいと思います。

自然災害がもたらすもの

 戸建て住宅の場合、これまでは地震災害を主体に考えてきましたが、今回は暴風による損壊、停電、洪水による水害などを主体に考えます。

 いずれの場合も発災後数日、あるいはそれ以上の期間、救助の手が届かないことを想定して備えておく必要があると言えます。

 そこで、まず住宅そのものを災害に強くする住宅の強靭化について、留意すべき点をみていきましょう。

建築の構造を支える骨組について考える

 鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)の場合は、躯体(建築の構造を支える骨組)そのものが頑丈に作られていていますので、今回は日本の戸建てで最も多い工法である木造に特化して考えます。

 木造の場合、建築の構造を支える骨組そのものはかなり強靭に作られてはいるものの、経年によって白蟻等の被害を受けていたり、骨組自体が痛んでいる場合がありますので、専門家の診断を受けることをおすすめします。

 検査の結果、単なる補強で済む場合もありますし、骨組そのものを大規模に補強する、あるいは建替えが求められる場合もあります。そして骨組に問題がなくても外装部の検査をします。

制震ダンパー施工例   写真提供/住友林業ホームテック株式会社

外装部のリフォーム

 外装部は、大きく分けて屋根と外装がありますが、特に開口部の措置に注意しましょう。

 屋根は、一般的に瓦が使われてきましたが、現在では軽くて丈夫、メンテナンスが容易な製品が登場しています。それぞれの特徴や各ご家庭の好みに応じてリフォームを考えてください。

屋根のリフォーム

 瓦が浮いていたり、一部に破損があっても気づいていなかったり、雨漏りもしないからとそのままにしてはいませんか?

 災害に強い家にしようとする場合、最も重要なのが屋根です。雨風を防ぐだけではなく、断熱によってエネルギー効率を高める働きも考慮すると良いでしょう。最近ではRC造やS造ですと、緑化によって熱効率を高める試みも見られるようになっています。

 屋根材もバラエティに富んだ商品が登場していますが、それぞれに特徴があり、価格もさまざまですので、目的に合った材質を選ぶことが大切です。

開口部のリフォーム

 最近、開口部はシャッターや雨戸のない、ガラス窓だけの住宅が増えてきました。

 窓ガラスの風圧は風速40m/秒を前提として作られていますが、昨年の台風では60m/秒を超える風が吹いた地方もあり、とても耐えられない風だと考えておくべきでしょう。

 これまでは防犯を考えて、一階部分はしっかり作られていても、二階以上はそれに比べれば弱くなっている場合もあります。しかし風圧が強いのは一階よりも上の階ですから、考えを改める必要があるでしょう。

 風圧のテストは単純に風を当てて測っていますが、実際には飛来する固形物によって簡単に割れてしまう可能性があります。

 ガラスに強化フィルムを張るだけなら素人のDIYでも十分対応できます。ガラスの飛散防止だけでなく、紫外線カットや目隠しなどさまざまな機能をもつ商品も登場しています。紫外線カットの強化フィルムなら、家具の日焼けも防げますし、高いエネルギー効率が得られるでしょう。

 業者に依頼して、強靭な樹脂製中間膜を取り付ければ、より安心です。

 また、断熱を考える場合は、内側にもう一枚窓を加えて、二重窓にすることを考てみてはいかがでしょう。いずれにせよ二階以上の窓のガラス厚を見直し、風圧に耐える窓に作り替えることをおすすめします。

 さらに本格的な暴風対策を考えるなら、シャッターや雨戸を取り付けることも一考に値します。竜巻の直撃を受けた事例を見ると、開口部の窓が破られたために室内に強風が吹きこみ、それが屋根を持ち上げて、大災害につながった事例もあります。

 日光を室内に取り入れ、風通しを良くするために開口部を大きく取ることは、高温多湿の日本の住居には求められる構造ですが、それが逆に災害には弱い住宅となっています。

 このように開口部の強靭化はとても大切な要件と考えておくべきでしょう。

扉の強化

 同じ開口部でも玄関等の扉は窓に比べればはるかに丈夫な造りになっていますが、大雨や台風などの水害による浸水には弱い場所と考えておくべきです。

 浸水すると室内の家財がだめになってしまうばかりでなく、病原菌など衛生面の問題も発生します。

 万一に備えて浸水被害を低減する止水板の設置を考えてはいかでしょうか。わずか50㎝の高さのフェンスでも、あるのとないのでは大違いです。

その他のリフォーム

 外装や屋根リフォームで足場を組む際、太陽光発電を考えてみてはいかがでしょう。これまでは売電を目的とした設置がすすめられていましたが、電力会社の買い上げ価格が低くなった現在では、売電による利益というより、災害時の電力確保が目的です。 電気がなければエアコンは使えませんし、石油ファンヒーターも動いてはくれません。

 また、エコキュートやエネファーム、あるいは蓄電池システムの設置などを検討しても良いでしょう。

写真提供/住友林業ホームテック株式会社

 屋根を張り替えるなら、雨水の活用もおすすめです。平時は中水として植木の水やりなどに使えますし、緊急時にはこれをろ過すれば立派な上水として使うことが可能です。

 災害に強い家にするということは、有事の際の自助につながります。地震や風水害の際に、自宅こそ最も安全な避難所となる工夫を今から考えてはいかがでしょう。

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