政治の底力を見せてくれ
厳しい現実とどう向かい合うのか
武漢に発生したとされる新型コロナウイルスは、日増しに伝染力を高めて、勢いの止まるところを見せない。政府は緊急事態宣言を発し、それぞれの自治体がそれを受けてさまざまな施策に取り組み、抑え込みに躍起になっている。まさに危急存亡の秋(とき)と言う深刻な事態が続いている。
政府は100兆円を超える緊急経済対策を表明したが、いつ、どんな形で提供されるのかが見えてはこない。市民は営業の停止、休止を求められ、罰則規定がないままに「お上のお達し」と受け止めて協力を余儀なくされている。確かにこのウイルスと戦うために必要な手段と思えば、これに反対する理由はない。
一億火の玉となって戦った大東亜戦争を知る人は少なくなったが、当時に似た国難の中にあることは疑いない。日本人の国民性からして、政府がお願いと声を上げれば、いかに能天気な輩といえども、罰則の有無に関わりなく粛々とこれに従っていくだろう。
ちょっと立ち止まって考えてみよう。それらを決めるのは政治の判断だが、政治に携わる方々は、納税者の受ける困難を本当に理解されているのだろうか。営業の自粛、在宅ワークと求められる所以は理解できても、実際にそこから生ずる生活の困難は弱者ほど厳しいものがある。頭で考えて対応をお考えいただいてはいるのだろうが、己に痛みを伴うことは少ない。机上論となる危険性を否定できない。所詮は人から聞いた話を前提に施策を立案し発布するだけで、対岸の火事騒ぎにしか見えない危険が潜んでいる。
今こそ政治が力を発揮することが求められている。政策の是非は歴史によってしか評価されない。しかしそのプロセスに抜かりがないかを判断するのは今なのだ。自分自身も痛みを共有し、そんな苦しみの中から生まれた施策にこそ説得力もあるし、人々の共感も得られる。
現場で必死に働く人々は、それこそ感染が生む生命の危険も顧みずに頑張ってくれている。心からの感謝を申し上げたい。
同様に政府の方針に従って、三密を避け営業を休止している方々にも心からのエールを送りたい。
そんな国民一人ひとりの努力こそが、この戦いに克つ唯一の方法だと思うが、そんな民草の生活をしっかりと見つめ、弱者に寄り添う政治の姿勢こそが、今、最も求められていることを深くお考えいただきたい。
党利党略、イデオロギーを離れて、本当の意味での政治家の価値が問われているのだ。