●ナカ工業株式会社 ●品川区大崎 ●1932年創業 ●従業員数626名
TOKYO★世界一 (13)
Shine Slim シャイン スリム
ナカ工業株式会社
東京にある、世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。副都心の一つとして脚光を浴びている品川区大崎のナカ工業は、建物のバリアフリー化など、より多くの人が安全に生活できるように長年尽力してきたが、近年その枠を環境分野にも拡大。その最初の製品である、太陽電池式全方位型LED街灯の優れた特徴などをご紹介したい。
(取材/袴田宜伸)
1997年12月11日に議決された京都議定書。それ以降、環境保全に向けたさまざまな取組みが、国内外で行われるようになった。
創業以来、医療福祉施設や公共施設、住宅、オフィスビルのバリアフリー化に不可欠な手すりや階段すべり止めなど、「安全」をキーワードとした製品を開発・製造してきたナカ工業もまた同様。新しい分野として「環境」を掲げ、製品開発をスタートした。
その第1号として誕生したのが、太陽電池式全方位型LED街灯「Shine Slim」。営業推進部長の宮崎史郎氏は、開発の経緯をこう話す。
「当社には、これよりも前にLEDを使った製品を開発していたこともあり、『省エネルギーでいて、CO2を排出しない』ことを突きつめていきました。その結果、『LEDと太陽電池を使った街灯』という答えに行き着きました」
LEDランプとしては世界初の完全防水
山口県の秋芳洞にLEDがついた手すりを設置したのを機に、既にLED仕様の街灯を開発していたM&Mソリューションズの宮本正明氏から開発協力が得られるようになった。そして開発スピードが加速。
宮本氏の技術を活かしながら、環境にやさしく、使い勝手がよく、そしてより高性能な製品へと仕上げていった。
「LEDは基盤の裏側が熱くなりやすく、その熱によって虫が寄ってきます。そこで周りをアクリル樹脂で固めて熱の放出を抑え、虫をつきづらくしたのですが、その仕組みを応用して完全防水にすることもできました。これはLEDランプとしては、世界初のことです」
さらに、従来のLED仕様の街灯には「ライトの直下部だけが明るく周辺部が暗い」という短所があったが、それをも改善。宮崎氏は胸をはる。
「通常、光は1点に向かいますが、反射板を設けて光を多方面に拡散するようにしました。それによって、外周360度で1ルクスの光が半径9mにまで届くようになったのです。発光効率は蛍光灯の2倍、白熱電球の4倍もあります」
簡単に設置できメンテナンスが不要
このほかShine Slimは、太陽光発電なのでCO2を発生させず、商用電力も不要。太陽光があたる場所なら電源工事をすることなく簡単に設置でき、電源供給がストップする災害時でも使用できる。
また、衝撃に強いことも特徴の一つで、ランプの寿命は約17年と蛍光灯の8倍以上。従って、ランプ交換などのメンテナンスも不要だ。
さらに宮崎氏は、ユーザーのことを考え、利便性を追求。
「これまで当社は、お客さまのニーズに合わせた物作りをしてきましたが、Shine Slimも設置場所の景観や利用用途に合わせて、街灯の形状や光の色、方向、点灯時間を自由に変えることができます」
「安全」と「環境」をテーマに製品開発
完成までにおよそ2年の月日を要したShine Slimは、今年の4月から発売を開始。
導入先としては、公園や港湾、駐車場をはじめ、無人駅のホーム、洞窟などの高湿度な場所、ランプ交換が容易でない高所、電気が通っていない田舎道といった、さまざまなシーンが想定されている。
そしてShine Slimが完成した今、ナカ工業では新たに、従来品の15倍以上の耐用年数があり、消費電力が約5分の1という次世代の蛍光灯を開発している。
「創業以来、当社はクレームを出さないことをモットーにしてきました。それを大切にしながら、これからも『安全』と『環境』をテーマに製品を開発していきます」
人と環境にやさしい物作り―今後、どのような製品が生まれてくるのか。楽しみにしたい。