ウェブ上の危機管理コンサルティング等

ソルナ株式会社

  • 取材:種藤 潤

 日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。

 ここ数十年で、インターネットは急速に社会に浸透し、生活を大きく変えてきたが、それは企業の人材採用でも例外ではない。今や採用の段階で、ブログやSNSでの人材情報のチェックが必須となっている。なぜなら、その見落としが企業の損失に直結する可能性が少なくないからだ。こうしたネット上の人材情報を迅速かつ低コストで収集、分析、判定するサービスが登場し、浸透し始めている。

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ソルナ株式会社が立ち上げた『ネットの履歴書』のレポートのサンプル(提供:ソルナ株式会社)

 人材採用は難しい。それは、インターネットを中心とした情報化社会になる前から共通していることだ。従来の採用では、「面接」と「履歴書」「職務経歴書」、近年は「適性検査」などを用いて判断してきたわけだが、それでもその人材の“本質”を見誤ることは少なくない。

 ここ数年、その“本質”がインターネット上に流出していることがあり、それが問題行動であったりする場合は、いわゆる「炎上」などの形で、所属する企業の責任が問われることも珍しくない。そうしたネット上でのリスクを、採用段階で事前に把握することが、現代社会では求められるのだ。いわば「ネット上での履歴書」も必要なのである。

 今回取材したソルナ株式会社は、その名通りのサービス『ネットの履歴書』を開発し、採用の新たな判断ツールとして浸透させつつある、業界のトップランナーだ。

専門ノウハウと技術で調査
消去された情報も収集

 『ネットの履歴書』とは、採用の内定前にウェブの専門手法と心理学的知見により、人物の健全度(犯罪歴やトラブルリスクを含む)を確認するサービスである。

 具体的には、専門の調査ノウハウと専門プログラムを用いて、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムなどのSNSに紐づく関係アカウントにより本人を判定し、各種ニュースサイトでの報道歴や犯罪報道が集約された掲示板、削除された情報の履歴などを集約して、最新のAI技術を用いて分析し、独自の調査レポート(左上写真)を提出する。

 レポートは、(1)人材の該当SNSアカウント、(2)ネガティブな要素を「攻撃性」「自己顕示欲」「影響力」「社会性」「ネットリテラシー」の5つの指標で判定、(3)ポジティブな要素、(4)注意すべき投稿を「法令違反の履歴あり」「反社会的勢力との関係の疑いあり」「企業の守秘義務に触れる投稿」など14の判定根拠とともに提示、(5)「法令違反の履歴あり」「重大な問題あり」「問題あり」「軽度の問題あり」「本人記事あり」「SNS、関連情報なし」の6段階の総合判定、の5つの要素で構成される。

ソルナ株式会社の三澤和則代表取締役

1万人の調査から2割以上の問題が発覚

 ネット上にそんなに個人情報があるのか?と疑問を持たれるかもしれないが、ソルナ株式会社の三澤和則代表取締役は、現代社会ではネットに人材の“本質”が出やすい特徴があると指摘する。

 「ネット上には、面接などでは想像できないような、問題発言や行動が出てくることは少なくありません。また、本人が発言していなくても、知人や友人など関係する人たちの情報から、本人と同等の行動分析が可能だという研究結果も出ています」

 『ネットの履歴書』では、これまで累計約1万人を調査してきたが、結果として2割以上に問題が発覚したという(2018年4月〜2019年10月同社調査)。

 そこから見えてくる人物像は、傷害事件、飲酒運転、ひき逃げ、幼児わいせつ、暴力的なネット上での発言、ハラスメント、無断副業など……。改めてネット上に人間の“本質”が存在していることを実感する。

 実際、その影響は企業の事業にも直結している。例えば、2019年に起きた某飲食チェーンのアルバイトスタッフがアップした炎上動画。その飲食チェーンのイメージを大きく失墜させ、損害額は27億円を超えると言われている。

 「現代は、こうした個人の不始末を会社が背負う時代です。しかも、トラブルを起こしたスタッフを簡単に退職させることも難しい。企業ブランド維持だけでなく、トラブルを未然に防ぐ意味でも、ネット情報による採用の判断は不可欠だと言えます」

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ネットでの情報の受発信が当たり前の今は、従来の採用プロセス「履歴書・職務経歴書」「面接」「適性検査」に加え、「ネットの履歴書」も不可欠だと三澤代表取締役は言う(提供:ソルナ株式会社)

人は完璧ではない長所も含めた人間性を判断

 とはいえ、三澤代表取締役は『ネットの履歴書』は悪者探しのサービスではないと補足する。

 「私も含め、表裏がない人間はいません。機嫌が悪い時もあれば、怒りたくなることもあるのが人間です。でも、それを我慢したり抑えたりできるかどうかが、その人の“本質”です。逆にポジティブな要素もネットから判明しますから、そういう要素もレポートには盛り込んでいます」

 同社は他にも企業のネット上での危機管理コンサルタントや研修を行っているが、その原点は三澤代表取締役の入院体験にあるという。

 「私が目の病気で入院生活を余儀なくされた時、医師やスタッフの皆さんが本当に力になってくれました。企業にとっても、トラブルに遭った時に助けてくれる存在がいたらいいと思いましたが、実際は存在しない。ならば自分で作ろうと思い、起業しました。

 一方で、入院中はスマートフォンが普及し始めたころで、数年後には一人一台スマートフォンを持ち、日常的に個人が情報をネットで受発信する時代が到来すると予測しました。そこで、ネットに特化した“カイシャの病院”を作ろうと考えました。そのひとつの手段が『ネットの履歴書』なのです」

 三澤代表取締役の予測は的中し、提供するサービスは多くの企業で採用され、なかでも『ネットの履歴書』は、面接、履歴書に続く新たな採用ツールとなりつつある。そのため、類似サービスも出てきているが、三澤代表取締役は気にする様子はない。

 「弊社には創業から蓄積してきた、ネット上の情報を収集・分析するスキルがあり、さらにはサービスを監修する、心理学やサイバー犯罪対策のスペシャリストがいます。また、リーズナブルな価格、調査のスピードにも自信があります。新規のお客様の9割がご紹介であるということからも、弊社のサービスの質の高さがおわかりいただけると思います」

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