電子クーポンの発行、新しい成分表示システムの開発等

オープンクーポン株式会社

  • 取材:種藤 潤

 日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。

 さまざまな商品・サービスで割引等が受けられる「クーポン」。かつては自宅に配布されたチラシや店舗で渡されるチケット、その後はフリーマガジン、そして近年はスマートフォンと、その形態は時代とともに変化してきた。しかし現在のデジタルのクーポンの大半は飲食店対応で、スーパーやコンビニなどでは普及の途中である。その主流となりうる、シンプルかつ「三方良し」のサービスが生まれようとしている。

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実際に都内店頭で「オープンクーポン」の実証実験をした例。「O」「P」の文字をモチーフにした青い二つの目のロゴが目印だ(提供:オープンクーポン)

 「クーポン」とは「回数券や乗車券をつづりにしたもの、または一定の条件で使用できる割引券や優待券」のこと。私たちの周りで使われるクーポンの大半は「割引券、優待券」を意味し、デジタル化が進んだここ数年はスマートフォンのアプリ等で飲食店、美容、旅行、スクールなどの割引サービスが利用できるようになった。

 しかし、スマートフォンなどのデジタル機器に対応していない“場”がある。それがスーパーやコンビニなど、多数のメーカーの商品が販売される小売店だ。

 小売店で使用できるクーポンは現在も存在するが、店舗ごとに発行されるチラシ等が主流で、割引対象となる商品も限定的だ。近年は、次回使用可能なバーコードクーポンを渡されることもあるが、この場合の対象商品は、自身の希望の商品ではないことがほとんどである。

 つまり、飲食店や宿泊施設などに対応するスマートフォンアプリのクーポンのように、デジタル機器で割引対象の商品が確認でき、売り場でそれを提示すれば、その場で割引された金額で商品が購入できるシステムが、存在しないのだ。しかし、それがいよいよ今年中に稼働しはじめるという。その名前が『オープンクーポン』。

アプリを取得し商品を選択 レジ精算と同時に割引

 使い方は簡単。まず、『オープンクーポン』のアプリをスマートフォンなどデジタル機器にダウンロードし、「年齢」「性別」「居住エリア」のみを入力。これで登録は完了だ。

 登録後、アプリを通じて割引利用できる商品のクーポン情報が配信される。消費者は自分が利用したいクーポンを取得。対象商品を購入したい店舗に行き、商品をとってレジに向かう。

 レジではアプリの会員番号のバーコードを店員に読み取ってもらうだけ。その後、レジで料金を清算すると、対象の商品分の金額が割引された状態で清算される。

 『オープンクーポン』は、同一のクーポンで、提携しているいろいろな小売店で割引が可能だ。従来の小売店で使用できる割引クーポンは、小売店舗ごとに発行され、その店舗でしか利用できないことがほとんどだった。この利用の“場”を選べる自由さもまた、『オープンクーポン』ならではのメリットと言える。

「オープンクーポン」の仕組みを作り上げた、オープンクーポン株式会社代表取締役CEOの三浦俊一さん

消費者、メーカー、小売 三方良しのシステム

 『オープンクーポン』は、消費者だけでなく、メーカー、小売店にとってもメリットがある。まさに「三方良し」のシステムなのだ。

 メーカーにとっては、「クーポン」発行が主体的に行えることだ。これまでのクーポンの形態では、特定の小売店と連携し、そこでの販売の条件に合った形で対象商品や割引内容を決めなければならなかった。しかしこのシステムなら、小売店の制限なく、自社で商品を選び、割引率を決めて発行することができる。新商品をPRしたり、開発中の商品をサンプリングしたりすることも可能で、賞味期限が迫っている商品を割引し、在庫ロスを抑えることもできるのだ。

 また、これまではクーポンを発行しても、メーカー側は利用者の属性や動向を把握することができなかったが、このシステムを利用すれば可能だ。もちろん、登録者の属性やエリアを選んでクーポンを発行することもできる。システムの利用についても、対象商品が販売された分だけが課金されるので、無駄なコストがかからないのも特徴だ。

 小売店のメリットとしては、既存の店舗で使用しているPOSレジと『オープンクーポン』のシステムを連携させるだけなので、新たな設備投資は不要。追加費用は発生せず、さらにはクーポン対象商品が売れれば、取扱い手数料ももらえる仕組みになっている。もちろん、小売店舗の自社商品のクーポン発行も行える。

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「オープンクーポン」の利用イメージ(提供:オープンクーポン)

2020年GW明けには都内で試験操業予定

 この『オープンクーポン』のシステムを開発した、オープンクーポン株式会社の三浦俊一代表取締役は、かつて広告代理店で、大手スーパーのマーケティングを担当していた。仕組みを熟知する立場から、スーパー等の小売店でも、消費者がいつでもどこでも、その場で割引サービスが利用できる仕組みができないかと模索し、このシステムを完成させたという。

 「これまでメーカーは、独自にコストをかけて広告でPRしたり、アンケートなどで消費者の動向を探ったりしてきましたが、それが最もリアルにわかる小売の現場を活用することができていませんでした。このシステムであれば、消費者のリアルな動向を知るだけでなく、かけたコストの一部をそのまま割引という形で消費者に還元することができる。メーカーと小売、消費者が真の意味で連携し、メリットをシェアできるこの仕組みを、ようやく世に送り出すことができます」

 すでに小売店で実証を行い、消費者もこのシステムを抵抗なく活用し、割引商品を多く購入する結果が出ているという。いくつかのメーカー、小売店も興味を示し、2020年GW明けには都内で試験的に利用が可能になる予定で、順次エリア拡大を目指していくそうだ。

 「今はスマホなどデジタル端末のみの対応ですが、今後はそれらを持たない方のためにも、店舗の会員カードでのクーポン取得と利用が可能にできるシステムも計画中です。ぜひその場で選んで、割引で買える利便性を、1人でも多くの消費者に体験して欲しいと思います」

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