中央卸売市場長 黒沼 靖氏

  • 聞き手:平田 邦彦

 東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は中央卸売市場長の黒沼靖氏。築地から移転した豊洲市場の現状、今後の市場のあり方について語って頂いた。

関係者から支持される市場目指す

豊洲市場の安全は確保

—就任して約7ヵ月が経ちました。これまでを振り返っての感想は。

 昨年7月に着任しましたが、中央卸売市場条例の改正、11ある市場の活性化に向けた検討、豊洲市場の賑わい創出など、様々な課題に取り組み、あっという間という印象です。

 市場行政は初めての経験ですが、長年在籍した水道局、総務局被災地支援担当部長など、現場に近い仕事に携わってきたことから、市場は近しいものを感じています。それぞれの市場に足を運び、市場関係者から現場の話を聞く機会も多く、都民の食を支える重要なインフラを預かる開設者としての責任の重さを感じています。

—豊洲市場が開場して1年半が経過しました。現状をどう考えますか。

 早いもので豊洲市場が開場して、1年半が経過しました。市場業者の日々の努力もあり、概ね順調に運営されています。

 市場外流通の増加、国内の漁獲量・生産量、消費量の減少などで、中央卸売市場における生鮮食料品等の取扱量は、長期的な減少傾向にあります。しかし、そうした状況の中でも、豊洲市場が流通の核として、産地や生産者、そして取引参加者や消費者に支持される市場となるよう取り組むことが必要です。

 昨年は、豊洲市場が開場して初めて迎える夏でしたが、温度管理ができる閉鎖型施設としての優位性を発揮することができたと水産、青果の両業界の市場関係者から聞いています。生鮮食料品等の安定供給という中央卸売市場の果たすべき核となる役割を担いながら、川上、川下それぞれの新たなニーズに対応していけるよう、活性化を図ることが必要です。

—安全性への懸念が豊洲市場の移転延期につながりました。安全性をどう考えますか。

 豊洲市場では定期的な空気測定と地下水質の調査を行い、結果をホームページで公表しています。豊洲市場の建物や屋外の空気調査から、引き続き安全が確保された状態であることを確認しています。

 豊洲市場の安全性の確保は、市場関係者や地元の方々と長い議論の中で、進めてきたものです。今後も監視を継続し結果を公開することで、市場関係者の方々、都民の方々などの理解を得ていきます。

—豊洲市場以外の市場の状況は。

 市場業者等の意欲的な取組を支援する卸売市場活性化支援事業が昨年4月から開始しましたが、全11市場の事業者・団体から、創意工夫のある取組の申請がありました。ICTを活用した販売力強化、国内外の展示会出展、品質・衛生管理にかかる第三者認証の取得などに対して補助を行い、さらなる活性化につなげる取組を進めています。

 また、大田市場では昨年、青果部の物流機能を強化するために閉鎖型の加工・荷捌棟が整備されました。大田市場は青果と花きの取扱では全国で一番であり、輸出への取組も行うなど、活発な取引が行われています。

 引き続き、すべての市場で意欲のある事業者の取組の後押しをしていきたいと思います。

時代の変化に的確に対応

—中央卸売市場条例が改正されました。改正の趣旨・目的は。

 今回、平成30年6月の卸売市場法改正を踏まえ、環境の変化に的確に対応するとともに、東京の卸売市場がこれまで担ってきた、豊かな消費生活や東京の食文化を支える役割を、今後も着実に果たしていく観点から条例改正を行いました。

 卸売市場が今後とも生鮮食料品等流通の基幹的インフラとしての役割を果たしていくためには、物流や商取引の多様化など、卸売市場を取り巻く環境の変化に的確に対応していくことが重要です。

 改正条例では、市場関係者がより一層活力をもって取引に参加できるよう、規制を緩和する一方、公正な取引を確保するために必要な都の指導監督などの規定を維持しています。

 これにより集荷・分荷、価格形成、代金決済、公正な取引、食の安全・安心の確保などの機能を今後も十分に果たしつつ、時代の変化に即した多様なニーズに的確に対応できる環境を整えました。

 条例改正を契機に市場の活性化を図り、今後とも都民の消費生活を支える卸売市場の役割を果たします。6月の条例施行に向け、現在、市場関係者と意見交換を重ねながら、準備を進めています。

—「市場の活性化を考える会」の検討状況は。

 昨年7月に「市場の活性化を考える会」が設置されました。この会議は、中央卸売市場を取り巻く環境が大きく変化する中でも、卸売市場が今後とも生鮮食料品等流通の基幹的インフラとしての役割を果たしていくことを目的に、食品流通や企業経営、財務・会計の専門家等から意見を聞いています。

 各市場の機能や特徴等に応じた市場活性化の取組や、市場会計の持続可能性確保に向けた取組などについて検討を行います。そして都が令和2年度末までに策定を予定している経営計画につなげます。現在、会議では委員の方々の間で、活発な意見交換がなされ、従来の延長線上に留まらず幅広い観点からの議論が行われています。

 中央卸売市場が、それぞれの特徴を生かし、産地や生産者、取引参加者や消費者に支持される市場となるよう、活性化に結び付けていきます。

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