災害への備えは万全か
行き届いていない対応策を考える
当月横浜で、痛ましい土砂災害事故が発生し、女子学生が命を落とすこととなった。発災が私有地であっただけに、今後その保証と補修がどう行われるのか気にかかるところだが、同じことが都内で起きる可能性は極めて大きい。
住民に命の危険を及ぼす可能性があると指定した特別警戒区域は都内で1万3651か所に上るとされている。
今回の事故は晴れた日に突然発災しており、天候には無関係に起きていることから、日ごろからの備えが如何に大切かを教えられる。
本紙でも過去に紹介した3次元測定を可能にする「点群測量」を実施していれば、発災以前に危険が迫っているかはある程度知ることが出来るし、事前に測量が行われていれば、発災後にどれだけの土砂が動いたかを容易に知ることが出来る。従って事後の処理もたやすい。
1秒間に数千〜数十万発のレーザーを照射し、距離と角度情報を取得するこの点群測量は、素早く正確なデータを収集する優れた性能を持っているとして、既に各方面で活用されている。
これを定期的に活用すれば、時系列変化を知ることが出来るので、危険予知にも大いに役立つし、 事後測量を行えば、その後の対応を素早く容易にしてくれる。
土砂災害だけではなく、例えば橋梁、トンネル、歩道橋等の老朽化による変形とか、ビルの経年劣化、地盤沈下なども知ることが出来るが、それとて平時に測量を行って、基礎データを持っていることが前提となる。現状では平時にそうした基礎データを持つことは求められていないから、ほとんどが事後対応に終始する。
それが発災した時には図面も満足に用意されていなかったり、経年変化も見落とされていたりで、対処措置を余儀なくされてはいないだろうか。
ここに紹介する三次元点群測量は、手軽でスピーディな作業で、有事に備える貴重なデータを収集することが出来る優れたテクノロジーだと言えるだろう。
都はこうした先端技術を活用し、迫りくる危険回避にもっと注力すべきではないだろうか。それも定期的に観測することによって、不測の事故が防げるとあっては、それこそ制度化も視野に入れた検討を進めるべきと提言したい。
専門家の調査と言っても目視による調査には限界がある。前例主義に縛られることなく、もっと積極的にこうした最新技術を取り入れ、痛ましい事故を事前に防ぐ工夫に注力していただきたいものだ。
やがて来ると言われている首都直下地震による災害のためにも、一刻も早い対応を願いたい。