働く場、学ぶ場の環境ソリューション事業

株式会社内田洋行

  • 取材:種藤 潤

 日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。

 日本にある世界トップクラスの技術・技能—それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。  オフィスや学校など公共空間の利便性を追求してきた内田洋行は、今年で創業110周年を迎える。本紙でもたびたび紹介してきた業界の先駆者は2020年以降を見据え、デジタル技術を活用したさらなる革新的な空間づくりに着手している。今号では「スマートビルソリューション」事業に着目し、東京・新川第2オフィスを訪ねた。

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「内田洋行の新川第2オフィスビル内では、同社が手がけるスマートビルソリューション『UCHIDA IoT MODEL』を実体験することが可能だ

 株式会社内田洋行の新川第2オフィスビルの2階にある一室は、同社が手がけるスマートビルソリューション『UCHIDA IoT MODEL』のあらゆる機能が体感できるようになっている。同事業の責任者である、スマートビル事業推進部部長の山本哲之さんは、自身のスマートフォンを操作し、照明や空調のオンオフから強弱の調整、さらにはビル内の会議室の入退室管理やトイレの利用の有無の確認までできることを実証してくれた。

 私たちの日常生活では、すでにスマートフォンで一元的に操作できるさまざまな機能がある。扉の施錠から照明や空調のオンオフと温度管理、音楽や映像の出入力。まさにデジタルとモノがつながる=IoTは、特に若い世代を中心に生活と一体化しているわけだが、なぜかオフィス空間では、それが形になっていないのが現実だ。

ビル設備のIoT化を進め、働く側主体のオフィスビルへ

 日常生活のIoT化が進んだ最大の要因は、近年進む「オープンテクノロジー=技術の標準化」の影響が大きいと、山本さんは言う。

 「2000年前後から照明、空調など、デジタル技術は大幅に進歩したものの、メーカーごとの仕様が異なり、相互利用には手間とコストがかかりました。しかし、ここ数年で技術の標準化が進み、スマートフォンなどでの一元的管理が、低コストで簡単にできるようになりました」

『UCHIDA IoT MODEL』の責任者である、営業統括グループ スマートビル事業推進部部長の山本哲之(てつゆき)さん

 ただ、オフィスビルは設備機器の更新とそれらをつなぐネットワーク対応が遅れ、さらに建築コスト優先で建てられたこともあり、IoT化以前に、使用する側が求めるような使い方を実現すること自体が難しかった。

 「ビルの各設備をネットワークで接続することから、オフィスの各所をスマートフォン等で管理できるようにするデジタルインフラまで、オフィスビルのIoT化を丸ごとワンストップで解決する。それが弊社のスマートビルソリューション『UCHIDA IoT MODEL』です。言い換えれば、進化し続けるスマホなどの各種デジタルデバイスの機能と、デジタル化に対応していないオフィス環境を“つなぎ”、管理する側から働く側主導のオフィス環境を作るのが、弊社の役割と言えます」(山本さん)

ビルのIoT化は管理する側にもメリットが

 スマートビルソリューションの実現は、オフィスを使う側の利便性、快適性にとどまらず、管理する側のメリットも生み出すと言う。

 「これまでのアナログな設備管理では、必ず建物の現場にトラブル等に対応するためのビル管理士など専属管理者が必要でした。しかしオフィスがIoT化できれば、遠隔管理が可能になり、管理業務の省力化が進み、現場に必ず専属管理者がいなくても運用ができるようになります。また、エネルギー管理も収集分析が容易になるので、省エネも進めやすくなります」

 ちなみに、同社が手がける『UCHIDA IoT MODEL』では、働く人の集中力を左右する、ある空気中の成分も数値化しているという。

 「我々のシステムでは、温度、湿度に加えてCO2まで可視化できます。実はCO2濃度は、一定数を超えると、集中力が持続せず、眠気をもよおし生産性が低下することがわかっています。CO2の数値が一定数を超えるとアラートで知らせ、換気を促すようになっています」

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スマートオフィスの具体的事例。同社がソリューションを提供する三菱地所株式会社のコンパクトオフィスシリーズ『CIRCLES』の第一弾、汐留にある『CIRCLES東新橋』の内観イメージ(提供:内田洋行)

東京都が目指すまちづくり構想にも貢献

 スマートビルソリューションは、着実に形になっている。特に東京では、2019年から三菱地所株式会社が開発する、コンパクトオフィスシリーズ『CIRCLES(サークルズ)』をサポートしており、汐留、銀座、日本橋馬喰町と、都市部ならではの限られたスペースの中で、IoTを活用した働きやすい次世代型オフィス空間を提案している。

 「快適性、機能性ももちろん重要ですが、弊社はデザイン性にもこだわります。オフィス空間においては、洗練された“しつらえ”が重要で、顧客ニーズを画面などに反映していきます。そこが、オフィス家具や空間デザインを行ってきた、弊社の強みでもあります」

 オフィスに特化し、さまざまな企業の機能性、快適性を追求してきた内田洋行だからこそ、オフィス空間に求められるIoTが可能になると、山本さんは話す。

 「理想のオフィス空間とは、限られた空間と人数で、最大のパフォーマンスを出せること。特に空間の限られた東京では、今後ますますその機能性が求められてくると思います」

 その言葉通り、東京都は2020年を契機とした「スマートシティ」化を進めている。都市部の多くの空間を占める「オフィスビル」を「スマート」にすることが、「スマートな東京」実現の近道であることは、明らかである。

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