政策企画局長 山手 斉氏
東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は政策企画局長の山手斉氏。昨年末には目指すべき未来への羅針盤「『未来の東京』戦略ビジョン」がまとまった。実現に向けた取組や目前となった東京2020大会について伺った。
長期戦略の策定にまい進
五輪成功に向け16のプロジェクト
—政策企画局長に就任して7か月が過ぎました。昨年末には「『未来の東京』戦略ビジョン」を公表しました。
着任に当たり、知事から「夢のあるビジョンを描いてほしい」との話を受けました。
東京は今、日本経済の国際的地位の低下、自然災害の激甚化、少子高齢化の進展といった危機に直面しています。知事の言葉は、こうした時代を切り拓き、都民の皆様が希望を持てる未来への展望を描いてほしいという意味だと受け止めました。
このため、ビジョン策定に当たっては、従来の発想を転換し、目指すべき未来を想定した上で、そこから逆算して現在からの道筋を定める「バックキャスト」の手法を用いました。さらに、都民をはじめ、幅広い皆様からご意見を伺い、全庁を挙げて検討を進めてきました。
戦略ビジョンでは、「Children」、「Choju」、「Community」の3つのCを軸として、「人を活かし輝かせる」という観点から大きな方向性を打ち出しました。「成長」と「成熟」が両立した明るい未来の東京の実現を目指しています。
—戦略ビジョンの政策の具体化をどう進めていきますか。
戦略ビジョンでは、2040年代に向けて目指す東京の姿として、20のビジョンを掲げています。合計特殊出生率2・07を目指すなど、挑戦的な内容です。そして、このビジョンを見据えて、今後10年間で取り組むべき内容を「戦略」として示し、それを実行するための約120の推進プロジェクトを立ち上げます。
ビジョンの策定がまさに新たなスタートです。国や自治体、大学、民間企業とも連携を深め、施策を展開します。プロジェクトを推進する中で、政策を練り上げ、東京2020大会のレガシーを反映して、長期戦略の策定につなげます。その際には、全庁の力を引き出すことが大切です。各局は現場にしか持ち得ない知恵を持っています。その潜在的な力を見出し、広め活用したいです。目標を成すために何ができるのか、徹底的に議論する考えです。
—東京2020大会が目前です。全庁の総合調整を担う立場としてどう大会を迎えますか。
東京2020大会の成功、さらにそのレガシーを活用した大会後の東京の新たな魅力と日本全体の更なる成長に向け、全庁を挙げて「ホストシティTOKYOプロジェクト」を推進しています。
大会機運醸成や魅力発信等の6分野にわたる16のプロジェクトを展開しており、大会に向けて、関係局が連携してスムーズビズや暑さ対策、バリアフリーなどの重要課題に取り組んでいます。
また、大会の成功にはパラリンピックの成功が欠かせません。昨年、「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」を設置しました。メンバーは各界の著名人で、「パラ応援大使」として、その発信力に期待しています。パラリンピックの盛り上げのみならず、大会のレガシーとなる心のバリアフリーの浸透にもつなげたいですね。
さらに、大会本番に向け、大会組織委員会が設けるメインプレスセンターとは別に、国内外から訪れるメディアに向けて「東京都メディアセンター」を設置します。メディアの方に取材環境を提供する他、東京の魅力・情報発信の拠点とします。
東京と地方の「共存共栄」目指す
—政策企画局は「共存共栄」の取組も進めています。狙いと展望は。
東京と地方とは、対立した関係であるかのように語られがちですが、本来は相互に支え高め合う関係であるはずです。
日本全体の持続的な成長のためには、東京と地方がそれぞれの持つ魅力を高め、互いに協力し合うことにより、ともに発展していくことが必要です。これを目指しているのが「共存共栄」の取組です。
都は、例えば、全国の中小企業の販路拡大や日本各地の観光ルートの開発・発信、国産木材の需要拡大など、全国各地と連携した様々な取組を展開しています。
また、昨年、東京・大阪連携会議を立ち上げました。スマートシティの実現に向けた先端技術の活用をはじめ、相互の連携を深化させていきます。引き続き、全国各地との相互理解を深める事業を進めます。地方と協力し互いに高め合うことにより、我が国の発展につなげたいと考えています。
—最後にご自身の意気込みとともに、職員へのメッセージがあれば。
大会の成功に万全を期すのはもちろん、大会を契機に、バリアフリーや、ワークスタイルなど、私たちの生活が変わった、良くなったと実感できるようにすることが大切です。
そのためにも、先ほどのホストシティTOKYOプロジェクトを全庁挙げて進めるとともに、戦略ビジョンで描いた未来に近づけるよう、長期戦略の策定に邁進します。
職員の皆さんには、周囲の状況に敏感になり、日々の生活で感じる視点を大切にしてもらいたいと思っています。政策を我が事として考えると、広がりが違ってきます。自分や周りの方が、こうあってほしいと望むことがあるとすれば、それが施策のヒントになるはずです。