都民安全推進本部長 國枝 治男氏
東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は都民安全推進本部の國枝治男氏。今年度から発足したこの本部は、都民の安全安心を担う、都民生活に直結した重要な組織だ。事業にかける意気込みなどを國枝本部長に伺った。
「安全安心を実感できる東京」を
高齢運転者の事故対策を推進
—就任から約5ヵ月が経過しました。今年度は青少年・治安対策本部から、都民安全推進本部へ組織改正しましたが、これまでを振り返ってのご感想は。
東京の治安は、刑法犯認知件数が平成14年のピーク時に比べ約6割減少するなど、大きく改善していますが、子供や高齢者などの弱者が被害者となる痛ましい事件や事故は後を絶ちません。さらには、ICTの進展や外国人の増加など都を取り巻く環境が大きく変化しており、これらを踏まえた新たな対策が求められています。
こうした中、都民の安全安心を守るには、警察の捜査や取締りだけでなく、社会全体で犯罪の抑止等に効果的な取組を推進し、犯罪が起きにくい社会環境の整備が重要です。
また昨年実施された「都民生活に関する調査」では、「都に対し特に力を入れて欲しいこと」の第2位が治安対策であり、安全安心に寄せる都民の期待は非常に高くなっています。
都民の期待に応え、「誰もが安全安心を実感できる東京」を実現するため、当本部が関係機関との結び目としての機能をこれまで以上に発揮できるよう組織体制の強化を図りました。新たな課題にも迅速かつ機動的に、効果的な対策を講じていきたいと考えています。
—高齢運転者による重大な交通事故が社会問題です。都の対策は。
都ではこれまで、加齢等により運転に不安を覚える高齢者に対して、運転免許の自主返納の周知や呼びかけ、返納者向けの自転車安全利用講習会を行ってきました。また、運転を続けたい方向けには交通安全セミナーを開催するなど各種支援を行っています。
今般、高齢運転者によるブレーキとアクセルの踏み間違いを起因とした事故が頻発していることから、高齢運転者の安全運転を確保することが必要と判断しました。そこで緊急対策として昨年7月から、都内在住の70歳以上の高齢者に対し、踏み間違い等による急加速を抑制する装置の設置費用を、事業者を通じて補助する制度を開始しました。
本制度は都民に大変好評で、民間企業が発行するフリーペーパーの読者投票による賞を受賞するなど、多方面で反響を呼んでいます。
また、国の経済対策に、後付けのペダル踏み間違い急発進抑制装置の補助制度の創設が盛り込まれました。都の施策の意義や有効性を国が認め、全国的に取り組む必要があると判断したものと理解しています。
都では高齢運転者による痛ましい交通事故を一件でも減らすため、運転をやめる方・続ける方それぞれに効果的な施策をバランスよく展開していきます。
防犯カメラで犯罪を未然防止
—第3回定例議会では、「自転車安全利用条例」が改正されました。改正の趣旨・目的は。
都では、平成25年に「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を新設し、自転車損害賠償保険等の加入を努力義務としてきました。
一方で都内の自転車関連事故件数は10年以上減少していましたが、一昨年から増加に転じており、近年では自転車に起因する事故での賠償金も莫大な金額となる等、自転車の安全利用に関する状況が大きく変化しています。こうしたことから、国の動向等を踏まえ、条例を改正し、自転車損害賠償保険等への加入を義務付けました。
改正により、自転車利用者、保護者、自転車使用事業者、自転車貸付業者は自転車損害賠償保険等への加入が義務となります。今後、本年4月の施行に向け、都民に対し、改正内容や保険等に関する情報をわかりやすく発信するとともに、都民がニーズに合った保険等に加入できるよう、民間事業者等とも連携していきます。保険等への加入も自転車安全利用の一環であることの理解を促し、都民の主体的な加入に繋げていくことで加入率を向上させ、条例改正の効果を高めていきたいですね。
—補正予算では、地域の防犯カメラの設置支援が盛り込まれました。都民の「安全安心」における防犯カメラの果たす役割は。
防犯カメラは地域の安全安心に必要不可欠な公的インフラです。
都では、防犯カメラの設置を契機として、地域の見守り活動等が活発に展開され、犯罪発生の未然防止に繋がるよう、町会・自治会や商店街、区市町村に対し、防犯カメラの設置費用に関する補助を実施しており、平成30年度までの補助台数は累計2万888台です。
昨年は5月に川崎市での児童らの大量殺傷事件、7月に京都市での放火殺人事件など、子供や一般市民を無差別に狙った凶悪な事件が発生し、東京2020大会を控える中、都民の安全安心への関心が高まっています。このため区市町村から追加の設置要望が寄せられました。こうした状況を受け、都では都民の安全安心の確保を図るため、緊急的な措置として、補正予算を編成し対処しています。
今後も、「誰もが安全安心を実感できる東京」の実現に向け、防犯カメラの設置補助を通じて、地域の防犯活動などの支援に努めるとともに、必要な箇所への設置が着実に進むよう、町会・自治会等の地域の方々の声を丁寧に聞き適切に対応していきます。