第67回 聖書にも登場するチョコレート風味のスーパーフード
日本では豆の莢(さや)の形状から、イナゴマメ(英語でcarobキャロブ)と呼ばれるカッルーバ。新約聖書の福音書において、使徒ヨハネが食べたとされることから「ヨハネのパン」とも呼ばれるマメ科の植物で、中世の終わり頃には、ヨーロッパ各地において医薬品(咳止めや整腸剤)として用いられていました。
温暖な気候の岩石や石灰質の土壌を好み、地中海沿岸諸国で栽培されている巨大な幹と厚い葉を持つ常緑樹。ゆっくりと成長し樹齢500年、最大15mにまで成長します。その雄大さと長寿命ゆえ、古くから「宝物はカッルーバの木の下に埋もれている」との言い伝えがあり、南イタリアでは縁起の良い植物として、その種をお財布に入れる風習があります。
初夏に淡緑色の莢は12~20㎝まで成長、茶色く熟した9月ごろに収穫されます(シチリア・ラグーザ県での収穫がイタリア国内シェアの7割を占める)。チョコレートやカカオを思わせる甘い香りのカッルーバの莢。内部は甘くて赤みがかった果肉と硬い種子。乾燥させたその種の重さは、常にほぼ1カラット(0・2g)であったことから、古くはアラブの宝石商が宝石の計量に使用していました。種を表すアラビア語のquiratが、宝石や金の重さを示す単位カラットの語源となっています。
長年、馬や牛など動物の飼料、またはエチルアルコールの蒸留に使用され、工業用アルコールの原料とされていました。しかし近年、そのチョコレートやココアに似た甘い風味の莢や種子に含まれる、豊富なビタミンやミネラル類をはじめ、抗酸化物質フラボノイドなどの豊富な栄養成分から、スーパーフードとして注目を浴びています。骨粗しょう症の予防や、豊富な不溶性食物繊維によりコレステロールを下げるなどの効果が期待できるカッルーバ。チョコレートのような味わいでありながらも、さまざまな効果が得られてしまう奇跡の食材なのです。