下水道局長 和賀井 克夫氏
東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は下水道局長の和賀井克夫氏。約30年ぶりとなった古巣への復帰を受け、「経営計画2016」の達成に向けた取組などについて伺った。
多様化する課題に対応
「経営計画2016」を推進
—今年度、下水道局長に着任されて8か月となりますが。
東京の下水道は、1300万人の都民生活と首都東京の都市活動を支える重要な役割を担っています。私が東京都に採用されたのが昭和58(1983)年、最初に配属されたのが下水道局で、当時は下水道の整備を急ピッチで進めているところでした。約30年ぶりに局に戻ってきましたが、下水道普及率は区部で平成6年度末に100%概成、多摩地域でも現在は99%に達しており、老朽化した施設の急増、気候変動に伴う局地的な豪雨、首都直下地震への対応の他、東京湾等の水質改善、エネルギー使用量やCO2削減等、課題が高度化、多様化しているところに時代の移り変わりを実感しています。
—下水道局が策定している「経営計画2016」が4年目を迎えています。現在の取組状況はいかがですか。
下水道局では、平成28(2016)年度から令和2(2020)年度までの5年間の事業運営の指針として「東京都下水道事業 経営計画2016」を策定しています。計画期間の4年目となる今年度についても、目標達成に向けて、老朽化施設の再構築、浸水対策、震災対策、合流式下水道の改善、エネルギー・地球温暖化対策などの主要施策を着実に推進しています。
先月、経営計画の実施状況を議題とする「東京都下水道局アドバイザリーボード」を開催し、外部識者の方々に対して事業の進捗等を報告し、委員の皆様から貴重なご意見をいただきました。
—浸水対策は、委員の方々も関心が高かったのではないかと思いますが、現在の取組は。
内水氾濫を防ぐ下水道事業の浸水対策としては、「豪雨対策下水道緊急プラン」等に基づき、一定規模以上の床上浸水が集中して発生した地域で、時間雨量75ミリの降雨に対応できる施設を建設しています。既に施設整備を計画しているものの被害が生じた地域では、時間雨量50ミリを超える降雨に対しても被害を軽減できるよう、新たな下水道幹線の建設や枝線の再構築を進めています。平成30(2018)年度には同プランに盛り込んだ全ての地区で事業着手をしており、一部完成した施設を暫定的に稼働させるなどして効果を早期に発揮できるよう整備を進めています。
雨水貯留施設が効果を発揮
—先般の台風19号の際に、下水道施設はどの程度効果を発揮したのでしょうか。
区部については、まず施設規模ですが、街を浸水から守るための雨水貯留施設が56か所、総容量は約60万m³、学校のプールに換算すると約2000杯分を貯めることができます。今回の台風では、その約6割を貯留しました。中でも、杉並区から中野区にかけて整備してある日本最大級の下水道管である和田弥生幹線は、関連幹線を含めて15万m³の雨水を貯留することが可能な施設ですが、満杯になって周辺の街を浸水から守るなど被害の軽減に大きく貢献しました。ただ、あれだけの豪雨でしたので、23区全体でみますと、地域によっては浸水被害が出てしまいましたので、経営計画でお示ししている浸水対策の施設整備を今後も着実に推進し、被害の軽減につなげていきたいと考えています。
—下水道が内水氾濫対策をしていることを知らない人も多いと思いますが。
水害というと、河川が氾濫する外水氾濫、いわゆる洪水が多く取り上げられているのが現状です。一方、都内ではここ10年間の被害額の合計を見ると内水氾濫による被害額の方が大きくなっています。下水道が普及している現在、下水道はあって当たり前のものとなり、都民の関心や認知度は低下しています。中でも、浸水から街を守るという下水道の重要な役割については、認知度が低い傾向にあります。そこで、下水道局では、平成30(2018)年3月に策定した「東京下水道 見せる化アクションプラン2018」に基づき、東京下水道の役割や課題、魅力をより積極的に発信する「見せる化」に取り組んでいます。例えば、浸水対策工事においては、これまでも工事現場の見学会や工事ヤードを活用した情報発信を実施しています。また、都民の皆様に事業をより深く理解していただけるよう、現場見学会等に加え、局ホームページに大規模事業の概要や特徴などを、わかりやすく解説したページを掲載しています。さらに、昨年度から新たな取組として、普段見ることができない下水道施設や工事現場などを巡る「下水道のインフラ見学ツアー」を実施しています。今後も、局ホームページの更なる充実やSNSなども活用し、東京下水道に対する都民の理解が一層深まるよう、広報活動に取り組み、下水道事業を推進していきます。