原料、衣料繊維、産業資材繊維、繊維製品の製造販売

帝人フロンティア株式会社

  • 取材:種藤 潤
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ハイアットリージェンシー瀬良垣では、大小さまざまなパラソルにより、施設内に新たな空間を創出(写真提供:帝人フロンティア)

 日本にある世界トップクラスの技術・技能。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
 ここ数年、屋外の商業施設で使用されているパラソルがカラフルになり、かつデザイン性が高まっているように感じられるのではないだろうか? その要因はさまざまだが、今回紙面で紹介する帝人フロンティア株式会社が、約3年前より本格的にパラソルの商品企画開発に着手したことは、少なからず影響しているといえるだろう。同社の戦略を聞くと、国内、都内におけるパラソルの新たな需要動向が見えてきた。

 帝人フロンティア株式会社が新たに立ち上げたパラソルブランド「solsol」は、多様なカラーやデザインの生地と、大小さまざまな形のパラソル本体を組み合わせて、オリジナルに近いパラソルを作ることができるサービスだ。

 「パラソルを設置するだけで、何もなかったところに空間を作ることができるんです」(繊維資材第一部の藤井美智さん)

 パラソルというと、一般的には2、3人が入れるぐらいのサイズをイメージするかもしれないが、「solsol」のパラソルは、最大6m四方の巨大サイズもある。藤井さんが語るように、例えば商業施設の空いたスペースに大型のパラソルを設置し、その下にテーブルと椅子を置くだけで、数十人規模の飲食スペースが生まれる。また、ビーチサイドに大型のパラソルを設ければ、休憩や交流ができるスペースが生まれる。

 「『solsol』を広めることで、いわゆるキャンプなどとも少し違う、日常の延長にあるアウトドアライフを提案していきたいと思っています」(藤井さん)

 現在、国内のさまざまな商業施設の屋外に設置しているほか、近年では屋外バーベキュー施設等でも導入が始まり、新たな需要も生まれ始めているという。

パラソルブランド「solsol」事業部を担当する、繊維資材第一部の野田賢一部長(右)と、同部大阪キャンバス資材課の藤井美智さん(左)

防炎で環境にも優しい 23色45柄の生地から選べる

 「solsol」のオーダーの流れは、まず、パラソルの骨格を10種類の中から選ぶ。パラソルの形は正方形、長方形、円形など様々だ。前出の通り、最大6m四方にも及ぶ巨大なものもある。

 次に、生地を選ぶ。生地は23種類の色と、45種類の柄があり、それを組み合わせることができる。以上で標準的なオーダーは終了だが、ほかにもパラソルにフリルデザインを加えることもでき、生地も無地と柄とを組み合わせることが可能だ。さらに、社名など文字入れにも対応する。

 「ちなみに生地はすべて防水機能に加え、紫外線カット、さらには防炎機能も付いていますから、火気のある屋外施設などでも使用が可能です。また、近年注目される環境面も配慮した、リサイクル素材が使用されています」(藤井さん)

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東京の宿泊施設でも導入は広がる。写真はヒルトン東京ベイ(写真提供:帝人フロンティア)

50年以上培ったテント生地の技術が凝縮

 同社は、50年以上前からテント向けの素材を開発、製造してきた。「solsol」の生地にはその技術が凝縮されているのだ。

 時代とともに、商業施設や一般住宅用のオーニングやパラソルなどのニーズが高まり、同社はテント生地で培った技術を生かして、それらの生地の製造にシフトしていった。

 また、需要も細かく変化した。以前は防水性が重視され、塩化ビニルなどの素材が中心だったが、デザイン性が高い建築物が増えるのに伴い、生地もデザイン性が求められ、さらに紫外線や汚れを防ぐ機能も重視されるようになった。そこで、それらにも対応した素材の開発を行うこととなった。

 そして今から3年前、生地だけでなくパラソル全体も合わせた商品化をスタート。オリジナルブランド「solsol」を立ち上げた。その理由を、長年オーニング、パラソル用途の事業に携わっている野田賢一繊維資材第一部部長は次のように語る。

 「デザイン性、機能性のある生地は着実に受け入れられていますが、商業施設においては近年のデザイン多様性の影響もあり、オーニングなどが減少しています。生地の需要を高めるためには、生地を使用する本体から販売しないと難しいと判断し、パラソルやアウトドアリビング製品に特化した独自ブランドを立ち上げました」

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防炎性能があり、アウトドア施設での導入も広がる。写真は大蔵海岸のバーベキュー施設(写真提供:帝人フロンティア)

海外は馴染みあるパラソル インバウンド需要も見込む

 パラソルは日本に比べ、欧米を中心とした海外のほうが馴染みがあり、実際、海外視察をした経験のある藤井さんは、欧米は日常生活にパラソルが溶け込んでいると実感したという。

 「最近は、日本でもパラソルを立てたテラス席が目立ち始めましたが、あくまで屋内スペースが主です。でも、欧米ではテラス席のほうが圧倒的に人気で、夏の暑い日でもテラスで楽しそうに飲食しています。そんな海外の屋外の楽しみ方は、最近流行っているグランピングなどをはじめ、日本でも広まっています。今後もパラソルの需要は増えていくと私たちは考えています」

パラソルブランド「solsol」のロゴ。sol=太陽がモチーフだ

 野田部長は、2020年を控えた東京の街では、パラソルを使用することにより快適に過ごせる空間の需要が、さらに高まると考える。

 「現在の日本のインバウンド戦略や、2020年東京オリパラ大会などを考慮すると、今後ますます訪日外国人が増えることは間違いありません。その方々により心地よく過ごしてもらうためには、馴染みのあるパラソル等で作られた屋外空間がぴったりです。特に東京は、来年の大会期間中は暑さ対策が必須。日よけ効果のあるパラソルは必ずや活躍するはずです。『solsol』の機能性とデザイン性を生かし、海外の方が心地よく過ごせる東京の街を創出してもらえたら嬉しいです」

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