東京を襲った2つの強力台風

  • 記事:遠藤 直彦

 令和初の夏と秋、2つの大きな台風が東京を襲った。台風15号と台風19号だ。9月8日に発生した台風15号は、大島や新島、神津島などで多くの家屋が損壊した他、農業、水産業、観光業にも深刻な被害をもたらした。非常に強い風雨が予想され、最大級の警戒が呼びかけられていた台風19号では、世田谷区の多摩川で浸水被害が発生するなど、自治体や都民は河川の氾濫に対する警戒に追われた。今回の2つの台風による被害などをまとめた。

多摩川が氾濫

台風19号の状況

 今月12日、台風19号は強い勢力を保ったまま午後7時頃に伊豆半島に上陸、関東地方を抜け、13日には三陸沖で温帯低気圧に変わっている。

 発生当初は非常に大きな勢力を保ち、ほとんど勢いが衰えることなく日本を襲うものと見られていたことから、気象庁や東京都をはじめ各自治体は、厳重な警戒を呼び掛けていた。

 台風19号は各地に記録的な雨と暴風をもたらし、被害の全容は明らかになっていない。16日午後2時現在の都内の被害状況だが、死者はいないものの、軽傷者は5名となっている。住宅の被害は全壊が1棟、一部損壊は283棟。大田区が35棟と最も多く、江戸川区で30棟、足立区29棟、世田谷区で26棟、江東区で15棟と続いている。

 12日には東京都に初めて大雨特別警報が発令され、多摩川が氾濫し、大田区の田園調布や世田谷区の二子玉川駅周辺が浸水の被害に見舞われている。浸水被害は床上189棟、床下121棟。世田谷区では床上が156棟、床下は2棟となっている。大田区では床上11棟、床下4棟。

 都道の通行止め状況は16日午後1時現在、都道204号線の日原街道で、奥多摩町の区間10キロメートルが12日午前8時から通行止めとなっている他、八王子市やあきるの市、青梅市などで発生している。

 なお、12日午前8時30分から奥多摩町の一部で通行止めだった都道295号線は、16日午後1時に通行止めが解除された。

東部低地帯他の被害は?

 先月の台風15号からの復興途中の島しょ地域でも新たな被害が生じている。

 住宅の一部損壊は八丈町で16棟、利島村で3棟発生した。また、光ケーブル回線の不通が新島、式根島、神津島で発生したが、既に回復した。八丈町では停電による通信障害が発生したが、こちらも既に回復している。

 強い勢力を保ち、記録的な暴風雨が警戒されていたことから、江東区や江戸川区など、東部低地帯で甚大な被害が発生することが懸念されていた。

 江戸川区では12日午前9時過ぎ、一部地域に避難勧告を発令、区内対象地域の65小中学校に避難所を開設した。江東区も12日、一部地域に避難勧告を発令、区内対象地域の22小中学校に避難所を開設した。こうした迅速な対応が功を奏したこともあり、大きな被害は発生していない。

島しょに大きな爪あと
台風15号の状況

 台風15号は先月5日に発生し、非常に強い勢力のまま9日午前5時頃に千葉県に上陸した。

 こうした経過から千葉県内での長期間による停電や断水といった被害が大きく報道されたが、小笠原近海を通過したことから島しょ地域にも大きな被害をもたらしている。

 東京都が10月10日午後4時現在でまとめた、台風15号による被害状況は、世田谷区で1名が死亡したほか、軽傷者が大島町などで出ている。

 住居の被害状況は、全壊は大島町で5棟、新島村で3棟。区部では足立区で1棟となっている。半壊は東京都全体で98棟だが、大島町で80棟と被害が集中している。一部破損は東京都全体で1671棟だが、こちらも大島町で701棟、新島村で520棟、神津島で61棟、八丈町で7棟と、圧倒的に島しょ地域に被害が集中しているのがわかる。

 こうしたことから東京都は10月11日までに職員の派遣を実施、大島町や新島村において被害状況の調査、住宅被害認定調査、災害廃棄物処理支援などにあたった。

 また、ブルーシートや土嚢袋、飲料水などの支援物資も送っている。さらに被災者支援のため、都営住宅への受け入れを実施、速やかに入居可能な50戸を当面3ヵ月、無料で提供する(受付は11日で終了)。

 被害は家屋のみにとどまらず、地元の農業、水産業、観光業など多方面に及ぶことから、都議会各会派はこれまで、小池知事に対し早急な対応策を講じる申し入れを実施した。

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