ブラックアウトの恐怖

  • 記事:平田 邦彦

災害への備えを今一度

 すべての電力が失われるブラックアウトが、昨年9月の北海道に続いて、台風15号の直撃を受けた千葉でも発生した。

 残暑厳しい中で、電力供給が止まってみて分かって来たことがたくさんある。まず電気が来なければ空調は役に立たないし、冷蔵庫もただの箱に成り下がる。

 まして高層階に住まう住民にとっては、水もポンプアップされないから使えない。風呂に入れないどころか、炊事すら出来なくなる。日ごろから備蓄を心掛けていても、エレベーターも使い物にならないから、3日も続けば水を取りに長い階段を上り下りすることになる。20階、30階の階段を、それも重い水を運び上げることはほとんど不可能に近い。

 そして夏の暑い季節なら空調が止まれば熱中症の危険が伴うし、極寒の季節なら熱源のない室内で震え上がるしかない。

 固定電話があったとしても電源が失われれば使えないし、携帯電話の充電も出来ない。TVは見られないし、バッテリーで働くラジオも備えが無くなれば、一切のニュースから閉ざされた状況に陥ってしまう。

 そんな事態を想定した備えを日ごろから心掛けている方が、どれだけ居られるだろうか。

 電気、水道、ガスといった基礎インフラは、災害発生時にもそこそこ機能することを前提に考えがちだが、この度のブラックアウトの事態を見るに、それは甘い考えだったと分かる。

 水とか食料の備蓄にばかり気を取られて、もっと深刻な事態が起きることには思いが至っていないことを思い知った。

 国も都もまず自助と共助、72時間は救援活動が個人に及ばないと訴えてきたが、電気が失われた場合に備えて懐中電灯を用意する程度の認識に留まってはいないだろうか。

 特に高層階に住む人が増えている現在、仮に地震が起きた場合、免震構造により家は無傷かもしれないが生活は成り立たない。

 そんな事態を想定した備蓄の在り方を今一度見直すべきなのだ。

 自家発電装置を持つ病院にあっても、燃料が切れれば役立たずで、それこそ新たな被害者を生むことを忘れてはならない。

 低層住宅なら、自分の足で歩ける範囲での行動が可能だが、それだってブラックアウトを想定した備えは足りていないのではないだろうか。

 弊紙は毎年、防災フォーラムを開催し、防災、減災について関係各位にレクチャーをしていただいてきたが、今年はこんなテーマも視野に入れて開催を計画した。この機会に今一度防災を一緒に考えてゆきたい。

※今年は11月29日(金)に開催予定。

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