病院経営本部長 堤 雅史 氏
東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は病院経営本部長の堤雅史氏。病院経営を取り巻く環境が変化する中、高度で専門的な医療を提供する病院経営本部のあり方は都民にとって大きな関心事だ。今後の取り組みについてお話を伺った。
都民が満足する医療サービスを提供
病院経営のあり方を検討
—昨年7月に病院経営本部長に就任して半年以上が経ちましたが。
都立病院の仕事に携わるのは、衛生局で所管していた時代を含め、今回で3回目となります。
前回の課長時代には、荏原病院などの公社移管や、都立小児3病院(清瀬小児病院・八王子小児病院・梅ヶ丘病院)の移転統合に携わりました。改革の実現に向け、相当ハードな業務だったことを思い出します。
今回は本部長という立場で、都立病院に加え公社病院も担当しています。様々な課題がありますが、都立病院・公社病院が、利用される皆様に満足いただけるサービスを提供できるよう、病院現場・本部事務局が一丸となって取り組んでいく決意でいます。
—経営のあり方についての検討状況はいかがですか。
昨年1月の都立病院経営委員会報告では、都立病院が安定した経営基盤を確立し、今後も担うべき役割を持続的に果たしていくためには、現行の病院運営では制度的な課題があり、制度的に最も柔軟な一般地方独立行政法人への移行について検討すべき、との提言がなされました。
この報告を受け、医療環境が大きく変化する中でも、都立病院が持続的に役割を果たし、多様化する都民や患者のニーズに一層効果的・効率的に応えるための経営の在り方について、都として検討を行っています。
昨年11月には、都立病院の現状と課題の分析を整理した「中間のまとめ」を公表し、都議会厚生委員会にも報告、ご議論をいただいたところです。
国が医療費の適正化に向けた診療報酬の見直しを進めるなど、病院運営を取り巻く環境は厳しさを増しています。更なる経営改善に向け、できることから取り組んでいくとともに、経営形態の在り方については、これまでの分析も踏まえ、引き続き検討していきます。
—「都立病院新改革実行プラン2018」が出されましたが、どのようなことに力を入れているのでしょうか。
都立病院は、高水準で専門性の高い総合診療基盤を支えとして、災害、感染症、島しょ医療といった「行政的医療」を都民に提供しています。
一方で、超高齢社会を迎え、今後、医療・介護ニーズがますます増加していくことが見込まれます。このような中、国や都では「病院完結型」から「地域完結型」医療への転換を進めています。都立病院においても地域医療機関との連携を更に進めるとともに、地域の医療水準の向上に貢献していくことが強く求められていることから、地域医療の充実に貢献することを新たな役割として加えました。
実行プランで地域医療の貢献掲げる
—地域医療の貢献における取り組みは。
地域医療への貢献という点では、例えば大塚病院において「産婦人科地域医療連携システム(大塚モデル)」として、周産期医療で地域の医療機関とのネットワークを運用しており、こうした取り組みを広げていきます。
地域の医療水準向上に貢献する人材育成という点では、東京医師アカデミーを活用した専門医の育成などに取り組みます。
また、1月26日(土曜日)に、各都立病院が実施してきた医療・予防・健康づくり等に関する公開講座を体系化した「Tokyoヘルスケアサポーター」養成講座を初めて開催しましたが、定員を大幅に超過する申込みがあり、大盛況でした。こういった事業を通じ、都民への普及啓発にも取り組んでいきます。
「医療で地域を支える」ことを基本理念としている公社病院とも一層連携を深め、東京の医療を支え、誰もが地域で活き活きと暮らせるようにしていきます。
—来年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されますが、都立病院の外国人対応への取り組みはいかがですか。
大会を契機として、訪日外国人は大幅に増加すると見込まれます。外国の方にも安心して受診いただけるよう、各病院の外国人対応力を強化しています。
来年度末までに外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)を全ての都立病院・公社病院が受審することとしています。既に広尾病院、墨東病院、駒込病院、公社大久保病院は認証を取得しました。
オリンピック期間中は、都立病院・公社病院の医療スタッフも、大勢、大会に協力する予定です。国内外を問わず、東京を訪れる方、都内にお住まいの方が安心して受診することのできる医療体制を整えたいと思います。
—最後に、今後の意気込みをお願いします。
長時間労働の是正に向けては、職員の意識を変えることが最も重要です。職場として定時退庁しやすい風土の醸成や時間管理に対する意識を高めることが必要となります。
管理職によるマネジメントの強化も重要で、職員間の業務を平準化することで超過勤務の抑制を図るほか、超過勤務の内容・時間を事前に命令することが大切です。
東京2020大会が近づく中、時差出勤やテレワークは社会的にも更なる推進が求められます。管理職の意識改革や手続きの簡素化など利用しやすい環境を整えていくことが必要です。
—最後に、今後の課題と今後の取組みは。
都立病院・公社病院は、それぞれの強みや特色を活かしながら、地域の特性も踏まえつつ、医療の最前線で都民の健康を支えています。
病院の財産は人、スタッフです。多様なスタッフがそれぞれの力をチームとして結集し、存分に発揮すれば、東京の医療に貢献することができます。これからも、現場をよく見て、大勢のスタッフと議論しながら仕事をしていきたいと思います。