国際交流の新たな形 「ホストタウン」が15誕生
東京オリパラ大会開催まで1年半を切り、都内を中心に主要会場の建設やボランティア募集など、さまざまな準備が進んでいる。そのなかで、全国の市区町村が大会参加国・地域との交流を促進する「ホストタウン」という取り組みが広がっていることをご存知だろうか。もちろん都内にも「ホストタウン」は存在し、東京の新たな国際交流の形が生まれ始めている。
2016年1月から登録開始
全国の358自治体が登録
「ホストタウン」とは、2020年7月から9月に開催される「東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)」に参加する国・地域の選手や住民と、日本全国の自治体が、スポーツ・文化・経済などを通じて交流し、地域の活性化等に生かしていく交流事業のことだ。東京2020大会自体は、東京都が主体の組織委員会が中心に取り組むのに対し、この「ホストタウン」事業は、内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局(内閣官房オリパラ事務局)が推進している。
「ホストタウン」は、全国の自治体が東京2020大会への参加を表明している国・地域と直接交渉し、具体的な交流内容を内閣官房オリパラ事務局へ登録申請する。登録は2016年1月よりスタートし、3年を経て現在358自治体が登録。交流先の国・地域は111に達している。
2020年を契機に新たなつながりが生まれる
すでに相手国との国際交流事業をはじめている自治体もある。その内容は、「ホストタウン」がスポーツの祭典である東京2020大会を契機とした事業であることから、スポーツを中心とした交流活動が目立ち、なかでも東京2020大会前に、相手国の選手を受け入れる「事前合宿」の誘致とあわせて行われることが多い。だが、内閣官房オリパラ事務局は「事前合宿」だけでなく、施設が不要な事後交流も推奨しており、文化、経済などをテーマに、地域の特色を生かした交流事業を企画する自治体も見られる。そのため、「ホストタウン」は「誰もが東京2020大会に関われる取り組み」とも言われている。
筆者はこれまでいくつかの「ホストタウン」事業に取り組む自治体を直に取材してきた。そこで見えてきたのは、この事業が、地域に新たな二つの「つながり」を生みだすことである。
ひとつは、この事業の目的である、海外の国・地域とのつながりだ。「ホストタウン」の相手国は、これを機に新たにつながりが生まれることもあれば、すでに姉妹都市などで連携しながらも、「ホストタウン」をきっかけに交流が促進することもある。いずれにしても、海外に開けた地域になることは間違いない。
もうひとつは、国内の地域内外とのつながりだ。この事業に取り組むためには、まず自治体内のスポーツ、農業、商工、観光、広報、教育……さまざまな組織が横断的につながり、交流の活性化に向けて全力で取り組む必要がある。同時に、自治体以外の地域の事業者や公共機関などとの連携も求められる。こうしてできたつながりは、「ホストタウン」以外でも活きる、地域の大きな財産になるだろう。
東京のホストタウンだからできること
東京2020大会の主会場となる東京都内にも「ホストタウン」は誕生している。現在15の自治体が登録し、すでに文京区や青梅市、国分寺市などは、積極的に相手国との交流事業を行い、従来にない新たな「つながり」を育んでいるようだ。
内閣官房オリパラ事務局は、東京都だからこそできる「ホストタウン」の取り組みに期待をしているという。
「国・地域によっては、複数の自治体とホストタウン契約しています。開催地にある自治体として、そのホストタウンの輪に加わり、交流をしていただきたいです。そして2020年には、相手国をホストタウン自治体同士が連携して応援することにより、国内の横のネットワークが広がることを期待しています」。
2020年を契機に、日本全体の新たな国際交流の形を作り出す可能性をも秘めている東京の「ホストタウン」。本紙では今後もその動向に注目したい。
東京都内のホストタウン(2018年12月28日現在)
市区町村 | 相手国 | |
---|---|---|
01 | 文京区 | ドイツ |
02 | 目黒区 | ケニア |
03 | 大田区 | ブラジル |
04 | 世田谷区 | 米国 |
05 | 豊島区 | バングラディッシュ |
06 | 江戸川区 | オランダ |
07 | 武蔵野市 | ルーマニア |
08 | 青梅市 | ドイツ |
09 | 府中市 | オーストリア、オーストラリア |
10 | 調布市 | サウジアラビア |
11 | 町田市 | 南アフリカ |
12 | 東村山市 | 中国 |
13 | 国分寺市 | ベトナム |
14 | 武蔵村山市 | モンゴル |
15 | 西東京市 | オランダ |
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