第56回 キャベツで風邪予防?イタリアのおばあちゃんの知恵袋
ヨーロッパが原産で、古代ギリシャ・ローマ時代から食べられている最古の野菜のひとつ、キャベツ。一年を通して、いくつもの旬を持ち、品種によっては、厳しい寒さや霜によってその旨味や甘みの成分が強まります。
生のほか、煮たり焼いたりと、さまざまな食べ方がありますが、北イタリアをはじめ、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、クロアチア、ロシアでは、塩とスパイスで数カ月間乳酸発酵させたキャベツのクラウティ(ザワークラウト)が有名です。豊富な善玉菌を持つクラウティは、消化を促進するとともに、病原性の細菌やウィルスを除去すると言われます。ビタミンやミネラルが豊富で、生のキャベツよりも、栄養素が吸収されやすくなっていることもあり、ビタミンCを中心とした栄養補給の手段として、古くは大航海時代の壊血病予防としても食べられていました。そもそも、キャベツは非常に豊富なビタミンCとB9(葉酸)、カリウム等を含んでいます。ビタミンC不足による壊血病が流行った海洋船の長旅には、キャベツは不可欠となりました。
インフルエンザや、風邪の流行が怖い冬。そんな時期になると思い出すのが、イタリアで暮らしていた頃、近所に住んでいたシニョーラ(ご婦人)。おばあちゃんの知恵袋的な、古くから伝わる民間療法をいつも教えてくれた彼女の口癖は、「季節の野菜や果物から栄養素を体に取り込むのが一番!」。彼女のおすすめの風邪対策のひとつが、キャベツの芯とその周りの柔らかな葉を、潰した生アーモンドと一緒に弱火で煮詰め、煎じたそのエキスに蜂蜜を加えて飲む、というもの。そのほか、生のキャベツを絞った青汁のようなエキスに、ぶどう果汁を加えたものを1日1~2杯飲むのも効果があるのだとか。どちらも、北イタリアに古くから伝わる風邪対策だそう。今年は、風邪対策にキャベツはいかがでしょう。
※今号からタイトルを「加藤 麗のイタリア食材紀行」に変更しました。