世界一の都市 東京を目指して

  • 記事:大竹 良治

都市基盤の整備で国際競争力をさらに強化

  世界一の都市を目指す東京にとって、道路・交通、防災、環境・エネルギーなど、都民の生活を支え、企業の活力・経済を向上させる都市基盤の整備はさらに重要性を増している。とくに今年は9月にラグビーワールドカップが、来年7月には東京オリンピック・パラリンピックの開催が迫っており、競技場等の関連施設の建設をはじめ、海外からの多くの観光客を向かえ入れる体制づくりが急務となっている。

 東京都は現在、「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマートシティ」の3つのシティを基本に、その実現に向け政策の強化を図っているところだ。その取組みの中から東京都が推進している都市基盤整備の現状についてまとめた。

地震に強いまちづくり

■都道及び区市町村道等の無電柱化

 「無電柱化推進条例」に基づき、区市町村と連携して東京都無電柱化計画を策定、都内の無電柱化を促進する。

 とくに2020年東京大会に向けては、大会競技会場が集中する臨海部の臨港道路等を対象とした港湾局無電柱化整備計画を策定し、競技会場周辺等の無電柱化を推進する。

 無電柱化では低コスト化が大きな課題となっていることから、電線共同溝のコンパクト化や材料の見直し等を進める。さらに、道幅の狭い道路の無電柱化に取り組む区市町村に対しては財政面、技術面で支援していく。

■建築物の耐震対策

 特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化の更なる推進に向けて、建替え・除却に対する助成を拡充するほか、住宅の耐震化を促進するため、整備地域外にも耐震改修等への都の支援を拡充する。

 また、分譲マンションの耐震化促進では、マンション管理組合等に対し、建築士などの専門家を派遣する。

■木造住宅密集地域の不燃化

 整備地域内の不燃化を推進するため、防災生活道路の整備を進めるとともに空き家の除却を促進する。

 建替えに際しては、既存の都有地を活用した魅力的な移転先の整備により不燃化を加速するとともに、専門家による無料相談の拡充や、固定資産税、都市計画税の減免を引き続き実施するなど住民に対する支援策にも力を入れる。

豪雨・土砂災害対策

■多発する集中豪雨への対応

 都市化の進展に伴う土地の保水能力の低下や、気象の変化により、近年、集中豪雨が多発しており、その対策が急務となっている。

 東京都は従来、目標治水水準を1時間50㎜を超える降雨としていたが、それを超える豪雨が頻発していることから、平成26年、目標降雨を区部75㎜、多摩部65㎜に改定、対策を強化した。

 対策強化流域を神田川、渋谷川、目黒川、野川など9流域に設定、河川整備、下水道整備などが進められている。

 また、大規模地下街等の浸水対策についても、地下街管理者や地元区等との協議会を通じて避難対策などに取り組んでいる。

 さらに、豪雨時における防災情報の発信強化のため、新たに、河川水位や警報等を提供する水防災総合情報システムの多言語化(英語、中国語等)、スマートデバイス対応を進めるほか、過去の河川水位情報等をオープンデータ化し研究機関や民間企業による活用を促進する。

 このほか、河川氾濫等による大規模水害発生時に、要救助者及び救助隊員等の安全を確保するため、数時間後の浸水被害地域を予測できる「浸水被害予測シミュレーションシステム」を整備・活用するとともに、地域住民の的確な避難につながるよう、避難勧告・指示の権限を有する区市町村と情報を共有する事業にも新たに取り組んでいくとしている。

都市インフラの長寿命化・更新

■都市インフラの予防保全型管理及び計画的な更新

 多摩地域における断面が狭小な一部の山岳トンネルにおいて、バス等の大型車の円滑な通行を確保するため、新たに予防保全対策の実施に併せて、断面拡幅に着手する。

 さらに、住宅地等を防護する護岸などの海岸保全施設について、長寿命化計画を新たに策定し、計画に基づく予防保全型管理を推進する。

■都市インフラの維持管理の効率化・高度化

 道路施設台帳の3D化等に向けた3次元計測を試行するなど、新技術を活用した維持管理の効率化・高度化を推進する。

 また、ドローンによる実証実験を通じて、インフラ点検の分野等での活用の可能性を検討していく計画だ。

誰もが優しさを感じられるまち

■道路等のバリアフリー化

 東京2020大会に向けて、競技会場や観光施設周辺の半径1㎞圏域、競技会場と観光施設を結ぶ都道及び臨港道路等をバリアフリー化する。障害者や高齢者をはじめとする全ての道路利用者が使いやすい道路となるよう、障害者団体等と意見交換を行いながら、モデル事業路線で試験的にバリアフリー化整備を実施する事業にも新たに取り組む。

 道路以外では、東京港の客船ターミナル、島しょの船客待合所と空港ターミナルにおいて、トイレの洋式化を推進するほか、競技会場となる海上公園のトイレのバリアフリー化を推進する。

■鉄道駅・都営交通のバリアフリー化

 都営浅草線のホームドアについては、新技術の実用化を図り、東京2020大会までに新橋駅、大門駅、三田駅、泉岳寺駅の4駅を先行整備するとともに、早期の全駅整備実現に向けた取り組みを推進する。

 一方、東京メトロについては、全路線全駅のホームドア設置完了に向け整備を促進する。

 さらに、都営バスでは、車内後方の通路段差を解消した日本初のフルフラットバスを導入、運用状況等を踏まえ、順次拡大を図る。

スマートエネルギー都市

■照明のLED化推進

 家庭におけるLED照明化では、集合住宅の共用部での普及を促進するため、管理組合の合意形成に向けた普及啓発を実施する。

 また、都が率先してLED照明を導入するとして、東京2020大会の競技会場がある臨海部の海上公園を中心に、LED照明の導入をさらに推進する。都立学校においても、新築・改築や大規模改修等に併せて計画的に導入を進める。

■省エネルギー対策

 東京2020大会の開会式、閉会式の合計4日間において、CO2クレジットを活用して、都内で排出される全てのCO2をゼロにする「東京ゼロカーボン4デイズ in 2020」を実施、同時に都民・事業者の省エネ機運をさらに醸成するとともに、旅行者に対する環境配慮行動を促す取り組みも推進する。

 交通における省エネルギー対策では、自転車シェアリングの普及拡大に向け、先行実施区の事例等の調査を実施、電動の自動二輪車等の導入促進に向け、集合住宅における充電設備の導入を支援する。

■再生可能エネルギーの導入促進

 鉄道事業者に対する駅舎のホーム屋根へのソーラーパネルの導入支援や島しょ地域の「ゼロエミッションアイランド」実現に向け、島内で使用するすべての電力を再生可能エネルギーでまかなうための基礎調査を進める。

■水素社会の実現

 既存のガソリンスタンドに水素ステーションを併設する場合のレイアウト案、工事費を調査・公表することで事業者が参入しやすい環境を整備する。

 また、家庭用燃料電池や業務・商業用燃料電池について、2020年度までに15万台を目標に普及を図る。

 さらに、東京2020大会時での日本初の燃料電池船運航に向け、船舶の建造を行う事業者を支援するとともに、燃料電池自動車・バスの普及にも取り組む。

交通・物流ネットワークの形成

■道路ネットワークの形成

 近年増加している観光バスの路上混雑緩和に向けて、地域の特色に応じた取り組みやキャンペーンによる啓発活動等とともに、新たに駐車場整備に向けた支援制度を設け、駐車対策を推進する。

■公共交通の更なる充実と次世代交通システム等の導入

 自動運転の公道実証実験について、関係法令等の手続に関する情報提供等を一括して行う「東京自動走行ワンストップセンター」による支援等を推進、レベル4相当の実証実験などにより、最先端の自動運転技術を内外に発信する。

 さらに、2017年に策定した「都市づくりのグランドデザイン」を踏まえ、地下鉄駅を中心としたまちの顔づくりにも取り組む。

 新たな鉄道路線としては、交通政策審議会答申に基づく路線の事業化に向け、6路線(羽田空港アクセス線、蒲蒲線の新設、有楽町線、大江戸線、多摩都市モノレールの2方面への延伸)を中心に、関係者との協議・調整を加速する。

■東京港の物流機能強化

 船舶の大型化や増大する貨物量への対応を強化するため、中央防波堤外側の外貿コンテナふ頭の3バース体制での供用に向け、Y1、Y2バースに続き、Y3バースの整備を推進する。

    

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