ビルの総合管理、環境関連事業
株式会社メンテックカンザイ
日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。同社は、静岡を拠点にビルメンテナンスを営む老舗企業だ。その事業は建物そのものにとどまらず、「室内空気の快適性」を、2つの技術で追求する。一つはエアコンの空気をマイナス電子で浄化し、もう一つはプラチナの電子で浮遊物を分解除去してしまう世界初の技術である。室内に「高原の空気」をとり戻す企業の挑戦に迫る。
株式会社メンテックカンザイは、総合ビルメンテナンス企業として、創業の地であり今も本社を置く静岡はもちろん、全国にその名が知られている。東京の大手デベロッパーが所有するビルのメンテナンスも多く手がけており、その評価は高い。
同社では、社員一人ひとりが積極的に取り組む姿勢を育む人材教育や、ビルマネジメントだけでないワンストップサービスの事業展開など、独自の取り組みを行っており、それらが顧客の満足につながっているのだ。
なかでも近年注目されているのは、「空気清浄」を目的としたオンリーワンの技術と同社独自のサービスだ。その象徴といえるのが、「セルフレッシュ」と「エアープロット」という2つの技術を用いた事業である。
2つの技術で空気清浄し身体が酸化しにくい空間に
この2事業に取り組み始めた背景について、大滝浩右同社代表取締役社長は、次のように語る。
「我々の業界は、目に見えないために室内空間の汚れを見落として来ました。病気の多くは身体の酸化で起こります。健康を害する食べ物や飲み物は、テレビで、盛んに喧伝されていますが、実は空気のほうが人間の身体に入る量は多く、約85%だといわれています。せっかく飲食に気を付けていても、空気の汚れを放置したままでは健康的な生活はできません。
室内の空気が外気より100倍汚れていることを知っている方は少ない。この空気を浄化して、高原のような空気を取り戻すのは、我が業界しかないと考え、汚れの正体を徹底的に研究して来ました」
大滝社長曰く、室内の空気には様々な浮遊物が漂い、“どぶ川”のように汚れているという。花粉、ダニの糞、喘息やアレルギーの元になるハウスダスト、微生物、ウイルス、建材から出る化学物質や臭い……。その上、これらはプラスの電気を帯びているため、人間の身体からマイナス電子を奪い酸化させ、人間を病弱にさせるという。
「そこで、プラスの電気を帯びている浮遊物にマイナス電子を打ち込み、電気的に中和してしまう『セルフレッシュ』という技術をエアコンに活用してみました。そして、浮遊物を分解する物質として、自動車の排気ガスの浄化に使われている、貴金属のプラチナ(白金)でできた『エアープロット』という技術を発見し、取り入れてみました。この組み合わせが絶妙で、高い空気清浄の効果があることがわかりました」
空気清浄に加え省エネ、コスト削減にも
「セルフレッシュ」とは、4〜14umの「テラヘルツ波」を発生し、あらゆる酸化物を還元させる力があるといわれる古代の土の力を製品化したものだ。それをネット状にしたのが「セルフレッシュネット」で、エアコンのフィルター部分に取り付けることで、部屋の空気物質の動きが活発になり、天井と床周辺の温度差が縮まる。それ故か「我が社には、ひざ掛けをしている社員はいません」と大滝社長は話す。しかも、約25%の電気代を節約できるという。
さらに、自社の室内に取り付け、5年程経ったころ、思いがけない事に気づいたという。花粉症や低体温で悩む社員が激減していたのだ。
そんな時、「エアープロット」という前出のプラチナとチタンの特徴を生かした「プラチナチタン触媒」を用いた技術に出会う。これを窓の内側にコーティングすることで、空気中の花粉、細菌、ウイルス、ハウスダスト等の有機化合物を分解できるといい、この効果を聞いた時に大滝社長は作用機序の違う「セルフレッシュ」との組み合わせによる「空気の還元活性化」、すなわち「空気のお掃除」事業がひらめいたという。また、窓の外側にコーティングすることで、有機化合物だけでなく、無機質の土埃などの付着も雨で流され、ガラスの外側の汚れも大幅に減り、窓清掃の手間を軽減できるというメリットも見つかった。
ちなみに「セルフレッシュ」は、第三者認定機関から空気還元力が高く評価され、「酸化還元検証状」を授与された。また、「エアープロット」の効果は大学研究機関により裏付けられ、国土交通省からも認定。特許を取得している。
優れた技術と提案力で快適な居住空間と地球環境を創造
同社を率いる大滝社長の経営理念は、「すべての生き物は、必要があって生きています。私たちは進んで地球をきれいにし、『青い地球』を守っています」ではじまり、「我が社は優れた技術力と提案力で、快適な居住空間や豊かな地球環境の創造に貢献します」と続く。2つの事業はもちろん、ビルメンテナンスを中核とする同社のすべての事業が、この言葉に集約されているのだ。
近年は別会社で運営する、無農薬に取り組む農業事業にも注力し、日本の農業を「自然循環農法」に戻したいと話す。経営理念に基づく大滝社長の新たな挑戦は、これからも続きそうである。