福祉保健局長 内藤 淳氏
東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は福祉保健局長の内藤淳氏。今回は児童虐待防止や受動喫煙防止などの社会的に関心の高い事項の取組について伺った。
大都市東京の福祉ニーズに対応
児童相談体制を強化
—福祉保健局長に就任し5ヵ月経過しました。
東京は、団塊の世代が75歳以上となる2025年をピークに人口が減少に転じ、2035年には都民の4人に1人が65歳以上の高齢者となる超高齢社会を迎えます。
福祉保健局では、こうした将来を見据えて、次世代に確かな安心を引き継ぐため、中長期的な視点に立って、社会保障制度改革の動きを見据えながら、大都市特有のニーズに即した、福祉・保健・医療施策を総合的に展開しています。区市町村はもとより福祉・保健・医療の関係団体、事業者などと緊密な連携を図りながら、福祉保健局職員一丸となって、福祉・保健・医療サービスの充実に、全力を尽くしていきます。
—児童相談体制強化について教えてください。
児童虐待は子供たちの心に深い傷を残すだけではなく、子供たちの将来の可能性を奪うこともあり、決して許されません。
都では、児童相談所と区市町村の子供家庭支援センターなど関係機関とが連携し、様々な虐待防止の取組を行ってきましたが、都の虐待相談の対応件数は、平成29年度に13707件となり過去最多となっています。また、今年の3月に、目黒区内で、5歳女児が虐待により死亡するという痛ましい事件も発生しています。亡くなられたお子さまに対し、改めて心よりご冥福をお祈り申し上げます。
事件を受け、都は11月14日に死亡事例等検証結果を公表しました。報告書の中で、自治体をまたがる児童相談所間の引継時の認識の相違や、不十分な情報の伝達及び情報確認の不足、転居後の児童相談所による48時間以内の安全確認の未実施や関係機関との連携不足など、様々な課題について御指摘や改善に向けた提言をいただきました。
都は現在、社会全体で全ての子供を虐待から守るため、条例案策定に向けて取り組むとともに、都独自に「安全確認行動指針」を新たに策定し、子供の安全確認の徹底を図っています。こうした取組とあわせて、児童相談所の体制を更に強化するため、任期付職員採用制度を活用し、児童福祉司や児童心理司を12月に増員しました。
今回の検証結果を重く受け止め、今後、児童相談体制の一層の強化を進めるとともに、子供家庭支援センター、保健所、学校、警察など地域の関係機関と密接に連携しながら、児童虐待防止に向け、全力で取り組みます。
—検討中の児童虐待防止条例の内容は。
今回の条例制定は児童相談体制の強化の一環として取り組むものです。条例案検討に当たっては専門家の意見を聴くため、今年7月から児童福祉審議会の審議を開始しました。今回の条例の策定は、検討プロセスも虐待防止に対する社会的な理解を深めてもらう機会と捉えており、広く都民の皆様からご意見を頂きたいです。
9月には、行政、都民、関係機関等が一体となり、社会全体で全ての子供を虐待から守る観点から、「虐待の未然防止」、「早期発見・早期対応」、「子供とその保護者への支援」、「人材育成」の4つの視点で整理した条例の「基本的な考え方」を公表、パブリックコメントを実施しました。
その結果や区市町村、児童福祉審議会の専門家等のご意見も踏まえ、11月、条例骨子案を作成しました。現在改めてパブリックコメントを実施しており、条例案の平成31年第1回定例会への提案を目指す予定です。
受動喫煙防止対策を推進
—今年6月に成立した受動喫煙防止条例についてはいかがでしょう。
東京都受動喫煙防止条例は、東京を誰もが快適に過ごせる街にするために、「子供を守る」、「働く人を守る」という「人」に着目した二つの対策を柱にしています。
子供を守るという観点からは、保育所・学校等について、法律で原則敷地内禁煙とした上で、都条例では屋外喫煙所の設置を不可としています。また、従業員を守るという観点から、都条例では、従業員を使用している飲食店においては、原則屋内禁煙としました。この規定により、規制の対象となる飲食店は、全体の84%になると見込んでおり、公共の場所等における受動喫煙防止の取組が一層進むと考えています。
合わせて、たばこを吸う人も吸わない人も、誰もが快適に過ごせる街づくりを目指して、公衆喫煙所などの整備に対する支援も充実させました。店頭表示ステッカーの義務化や学校等の敷地内禁煙については、2019年のラグビーワールドカップの開催前までに施行します。東京2020大会開催前の2020年4月には、法律の施行日に準じて、罰則適用も含め、条例を全面的に施行する予定です。
—条例の施行に向けた、今後の取組は。
本年9月に専門相談窓口を設置し、改正健康増進法や都受動喫煙防止条例、受動喫煙による健康影響等の問い合わせについて丁寧に対応しています。
今後とも、受動喫煙防止に対する理解促進を図るため、国や九都県市、区市町村とも連携しながら、ホームページ、ポスター、イベント等を活用し、都民や事業者への普及啓発に取り組んでいきます。
また、実効性ある条例の施行に向け、保健所設置区市とも連携、協力しながら取組を進めます。