第55回 イタリア人の生活に欠かせないバールとカフェ(エスプレッソ)の文化
イタリア国内には、バールと呼ばれる喫茶店、カフェテリアが約15万軒あります。そして総人口6000万人強のイタリアの約4割の国民が、バールにおいて習慣的にカフェ(エスプレッソ)を消費しています。都会はもちろん、どんな田舎に行っても、どんなに寂れた地域に行ってもバールは必ず存在し、その地域の人々の拠り所になっています。そして多くのイタリア人は、行きつけのバールを持っており、そこでいつもの顔ぶれに出会い、いつものカフェを飲みます。デミタスカップで飲む人もいれば、あえて大きなカップを選ぶ人、ガラス製のショットグラスを好む人もいます。冷たいミルクを入れる人、温めたミルクを注ぐ人、フォーム(泡)のみを少量加える人、砂糖を入れる人、混ぜる人、混ぜない人。各自こだわりを持ち、毎日同じ場所、同じタイミングで、同じようにカフェを飲みます。
朝食のカフェ(朝はカップチーノを飲む人が多い)にはじまり、バールにおいては、毎日約8000万杯のカフェが淹れられています。統計では、イタリア男性は女性よりも多くのカフェを飲むそう。もちろん、バールは利用せず家でカフェを淹れて飲む習慣のある人たちもいれば、オフィスなどでは自動販売機のようなマシーンでカフェを飲む人々も大勢います。
職場で1杯、休憩時間に1杯、仕事終わりに1杯と、生活の中で次のアクションを起こす前には、必ずカフェを飲むという人も珍しくはありません。基本、人の家や会社、オフィスなどを訪れた時、挨拶の次に出てくる言葉は、必ずと言っていいほど「コーヒー飲む?」。飲みたくなければ断ればいいのですが、そもそも尋ねてきた本人が飲みたくて聞いてきているのか、遠慮していると思われるのか、断ってもやたらと勧められる場合もしばしば。そんな時は「今飲んだばかりだから、大丈夫」。この断り方をすると、相手も納得することが多いように思います。断る時は、断らないとコーヒーの飲みすぎで夜中に目覚めてしまう、なんてことにもなりかねません。