2008年11月20日号
[プロフィール参照]

三田村秀雄先生

みたむら ひでお

1974年慶應義塾大学医学部卒。1981〜4年、米国留学。1992年慶應義塾大学講師、1995年同助教授、1999年心臓病先進治療学教授を経て、2004年より東京都済生会中央病院副院長。慶應義塾大学客員教授。医学博士。専門は臨床心臓病学。

続 医療NOW

(5)心臓より頭か

 最近、増えているという脳梗塞。脳の病気の原因は思わぬところにあるようです。

増える脳梗塞

 心臓と頭とどっちが大事? そりゃ、心臓でしょ。と言いたいところですが、世の中には心臓で命を失うのは惜しくないけど、脳卒中で身体が不自由になる方が辛い、と主張する方もいっぱいいます。その気持ちもわかります。長生きするより、不自由ない生活を送れることの方が貴重、という感覚でしょうか。どうぞ頭をお大事に。

 でも、どうやって? 頭を大事にするって一体、どうすればいいのでしょう。

 例えば血圧です。血圧が高いと脳出血を起こしやすくなります。でもこの心配は塩分を控えた食事と降圧薬の利用によって大分薄らいできました。

 最近増えているのが脳梗塞です。ちょうど心筋梗塞みたいに脳の血管が詰まり、その先に血液が行かなくなって脳細胞が死んでしまう病気です。なかでも血のかたまり、つまり血栓がどこからか流れてきて脳の血管に詰まってしまう脳塞栓は、一旦起こると脳の広範囲にダメージが及び、重篤な麻痺をきたすことが少なくありません。これを防ぐには?

 簡単です。血栓ができなくなるようにすればいいのです。

血栓はこうつくられる

 でも、そもそもこの血栓は主にどこから流れてくるのでしょう。正解は、ご想像の通り、心臓からです。

 心臓は動いているので血栓なんかできっこない、と思われるかもしれませんが、もし、心臓が部分的にでも止まった状態になれば、そこに血液が滞って血栓ができる可能性があります。

 心臓が全部止まってしまうとそれは心停止ですが、部分的に止まった状態になることもあります。その状態をもたらすのが心房細動という不整脈です。心房細動が起こっても、心臓の馬力が僅かに低下する程度で命には別条ありません。

 ただ心臓の中の心房と呼ばれる部屋が規則正しいギュッという収縮ではなく、フニャフニャな動きになるため、血液が勢いよく前に進まなくなります。するとこの心房の中に血栓が形成されます。何かの拍子にその塊がはがれて心臓から動脈に沿って流れて行き、脳の血管に詰まれば脳塞栓、ということになります。心臓の不整脈が原因で半身不随になることがあるのです。

脳を守るためには

 心房細動は心房の動きが悪くなるだけでなく、脈も全くバラバラになるのが特徴です。高齢の方に多い不整脈で、しばしば不快な動悸を起こしたり、脈が速くなって息苦しくなることもあります。

 ですがこの心房細動で一番怖い合併症が今述べた、心房の中に血栓をつくること、そしてそれが流れて脳塞栓を起こすことです。それを防ぐには心房細動を起こさないようにすることが一番です。

 でもそれが難しいときには、とにかく血栓ができないように薬で工夫します。ワルファリンという薬が血栓防止薬の代表です。この薬の効果は人によって、また同じ人でも併用薬や食事などによって変わってしまうため、こまめに量を調節する必要があります。

 結局、脳を守るためには、心臓の管理が大事、頭の前にまず心臓を、ということです。大事にしてください、心臓専門医を。ではなく、あなたの身体を。

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