医療NOW
(5)C型肝炎について
東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター センター長
銭谷幹男さん
5回にわたってお届けした銭谷先生の「医療Now」。最終回は、C型肝炎の病状から治療、医療費助成制度についてです。
日本の慢性肝炎の大部分はB型、C型肝炎ウイルス感染によっています。C型肝炎ウイルス感染者は150〜200万人とされ、感染者は特に中高年に多くみられます。
C型肝炎ウイルスに感染すると、70%以上は慢性化し、肝炎が進行しますが、約半数は血清GPT(ALT)が安定した慢性肝炎の状態となっています。ALTが基準値を超えて持続的に上昇している場合は、病気は徐々に進行し、肝硬変へと至り、肝硬変になった場合は高率に肝細胞がんを発症することが明らかになっています。また、40〜50歳代でALTが安定している場合でも、高齢化に従って病気の進行は加速され、60〜70歳代で肝細胞がんが発見される場合が多いこともわかっています。
厚生労働省は2002年4月より、老人保健法に基づいて住民健診にC型肝炎診断を加え、C型肝炎ウイルスの感染者の発見を積極的に行ってきました。一般の血液検査で行われるALTが基準値以下あるいは多少の上昇では大きな注意は払われませんが、C型肝炎ウイルス感染がある場合、進行し、肝細胞がんになる危険が高いからです。C型肝炎ウイルス感染のチェックが大切なのです。
C型肝炎の治療
我が国のC型肝炎ウイルス感染の多くは遺伝子型1b型で、しかも血中のウイルス量が高いインターフェロン治療抵抗性です。しかし、ペグインターフェロン+リバビリン併用療法を48週〜72週間行うことにより、50%以上の症例でウイルスが駆逐され、感染が治癒可能となっています。1b以外の遺伝子系では、より短い治療期間でも80〜90%以上の治癒率が報告されています。ウイルス駆逐により肝細胞がんの発がん抑制、さらには発がん後の再発の抑制が可能となるのです。
現在では、C型肝炎ウイルス感染が存在する多くの場合は、ペグインターフェロン+リバビリン併用療法を主とした抗ウイルス治療が第一選択となっています。ただし、この治療は長期に及ぶのに加え、副作用がやや多く、高齢者や合併症がある場合、治療継続が困難となることなどの問題もあります。
医療費助成
東京都は全国に先駆けて、平成19年10月からC型肝炎に対するインターフェロンの治療医療費助成制度を実施しています。ペグインターフェロン+リバビリン併用療法を含むインターフェロンによる治療を受ける都内在住1年以上の方は、月額3万5000円の自己負担のみで、1年間治療が受けられるという画期的な助成制度です。平成20年4月からは、国が全国制度として、医療助成制度を創設したため、それに準じて、制度は再構築されています。
表1にその概要を示します。平成20年4月から6月末までは、新制度と先の制度の併用になっていますが、7月からは新制度のみになります。また、6月末までに申請が受理された場合、医療費助成は4月まで遡って受給できます。新制度の実施期間は平成26年度までの7年間です。
C型肝炎は特徴的な症状がなく、密かに進行する病気です。しかも進行により肝硬変に陥り、肝硬変となった場合は高率に肝細胞がんを発症します。治療法が進んだ現在でも、肝細胞がんの予後は不良です。インターフェロン治療の進歩により、このC型肝炎は治癒が可能な病気になりました。治癒が得られれば、肝硬変への進展、肝細胞がんの発症の心配は劇的に改善します。
C型肝炎ウイルス感染の検査を受け、治療適応を確認し、医療費助成を有効に活用して治療を受けられることをお勧めします。
ウイルス肝炎医療費助成制度の見直しの概要について
都は国に先駆けてウイルス肝炎インターフェロン治療に対する医療費助成を平成19年10月から実施してきたところであるが、国が本年4月に全国制度として医療費助成制度を創設することとなったため、現行制度を再構築する。
【改正の概要】
○ 現行制度を国制度に準じて再構築する(平成20年4月〜)
○ 低所得世帯に配慮し、新制度においても区市町村民税非課税世帯については、国制度に上乗せして「自己負担なし」とする。
○ 円滑な新制度への移行を図るため、経過措置を設ける。