2008年3月20日号
[プロフィール参照]

医療NOW

(2)メタボリックシンドロームって何?

東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター センター長

銭谷幹男さん

 最近よく聞く「メタボリックシンドローム」。しっかり理解して、充分に予防しましょう!


 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは内臓脂肪がたまる、つまりお腹の中の脂肪が多くなり、結果的にお腹周りが大きくなった状態。いわゆる中年太りの体型です。お腹の周りが大きくなる肥満は、異常ではありますが、病気とは考えられていませんでしたし、たまった脂肪は体重増加の元になるだけで大きな注目はなされていませんでした。

 最近の研究の結果、内臓に蓄積した脂肪を構成する脂肪細胞は様々な生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌し、しかも、肥満状態ではこの分泌異常が生じ、血糖を下降させるインスリン作用の失調もきたすことが明らかになり、肥満は疾病病態として重要であることがわかってきました。

 メタボリックシンドロームは一般に年齢が進むと増加し、70歳代では20歳代の17倍にもなります。男性ホルモンは内臓脂肪をためやすく、女性ホルモンは皮下脂肪をためやすいので、メタボリックシンドロームは男性が女性に比し5倍も多いのです。わが国では、メタボリックシンドロームが強く疑われる人とその予備軍とされる人の割合は40歳以上で男性では2人に1人、女性では5人に1人になっています。

 メタボリック症候群を放置すると、動脈硬化の進行が起こり、脳血管障害、心筋梗塞などの心血管障害、糖尿病など、死因の上位を占める疾患の発症が高頻度であることがわが国の統計から示されています。しかも、これら病態が働き盛りの男性に多いことは大きな問題。単なる中年太りといっては済まされないのです。


メタボの原因は?

 メタボリックシンドロームには遺伝素因がありますが、それに加えて過食、運動不足、不適切な生活習慣がその発症には大きな要因となっています。夜遅くの食事、脂肪摂取の過多、飲酒量の増加、交通機関の発達による歩行の減少などの現代に特徴的な生活習慣はすべて、メタボリックシンドロームの要因であり、メタボリックシンドロームはこの点から生活習慣病ということができます。生活習慣病であるということはこの改善によって、進展を阻止する、予防することが可能であるということです。

 メタボリックシンドロームの、悪化因子を知ることも重要です。もっとも大きな要因は食べすぎです。つぎが日本酒換算1日3合以上の飲酒、そして早食いです。肥満になる特定の単一遺伝子はありませんが、肥満に影響を与えるエネルギー倹約遺伝子を日本人は持っている場合が多く、食べた食物を効率よく脂肪にため込む傾向が大きいので、少しの過食も脂肪蓄積につながる場合が大きいのです。

 また、夜間に過食傾向があれば、運動による消費の可能性は少なく、睡眠中にエネルギーはため込まれますので、夜9時過ぎの食事には特に注意が必要です。特にエネルギーの高い脂肪を多く含んだ夜間の食事はメタボリックシンドロームの強力な後押しになります。お酒の主成分であるアルコールは体内に入ると1g当たり5Kcal相当のエネルギーになり、炭水化物、タンパク質の4Kcalより多いことも忘れてはいけません。しかもアルコールは他の食品とは異なり、他の栄養素は含んでおらず、かつ、肝臓での解毒代謝も必要なのです。満腹感を感じる前にたくさん食べてしまう、早食いが悪いことは言うまでもありません。

腹八分目の実践を

 参考までに、十分な量を食べて満腹と感じるまでには約30分かかることを知っておくのが大切です。30分以内の食事では、食べすぎになってしまう場合が多いのです。忙しい昼休みの食事にも注意が必要です。

 逆に、運動は消費エネルギーを増すことから、メタボリックシンドロームの発症予防効果があります。消費エネルギーは体の筋肉量によっても変化します。普段から運動不足で、脂肪は増えたが、筋肉は減少した中年男性では、基礎消費エネルギーも減少し、結果として過食傾向となり、さらに運動不足が追い打ちをかけるという悪循環が生じているのです。

 平成20年4月からはメタボリックシンドロームに焦点をあてた特定保健指導が開始されます。食事、運動に十分配慮することが一層重要になります。

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