春の訪れとともに、東京でもあちこちで花が咲き始める。そんな花々の元にミツバチが集まり、せっせと巣に蜜を運び、はちみつを作っていく。東京で養蜂?と思うかもしれないが、都内で養蜂を行なっているのは60数軒にのぼる。意外と知られていない東京の養蜂とはちみつの安全性を探る。
(取材/中本敦子)
天然のはちみつは
無農薬で安心&自然の味
中国産餃子の事件は、日本人に食の安全を考えさせてくれるきっかけになったが、今から6年前にも中国産はちみつから残留抗生物質が検出されるという事件があった。日本のはちみつの自給率は、1割にも満たない。そして、輸入の約9割は中国からである。
本来、“はちみつ”とは、純粋にミツバチが花から集めた蜜から作る天然のものである。ミツバチは、殺虫剤などの農薬に非常に弱く、農薬のついていない花から蜜を採取するので、安全性も高い。
しかし、輸入ものには天然のはちみつから脱色、脱香したりビタミンやミネラルなど栄養分を除去した“精製はちみつ”や人口甘味料などを加えた“加糖はちみつ”もある。
東京では、現在60数軒、東京都養蜂組合に登録されている。中国のはちみつ事件で20軒くらい増えたそうだ。
30年来、立川で養蜂業を営む市川敏夫さんは、手間ひまをかけて熟成したはちみつを取り続けている。
ミツバチが花から運んできたものをすぐに採取すると、トロトロの水のような状態である。それを熟成させるために、ハチは蜜に蓋をする。市川さんは、熟成するのを待って蓋を切り、絞るのだそうだ。
安い海外のはちみつには、トロトロした状態で絞り、過熱して水分を飛ばしているのもあるという。天然のはちみつは高価だが、それなりの理由があるのだ。
市川さんは「30年くらい前は、まだこの辺りも緑が豊富で、放っておいても大丈夫でした。最近は蜜源(蜜をとる花)が減ってきています。昭和記念公園が近くにあるので、ある程度のはちみつは取れますが、蜜源が減るとハチが思うように増えません」と言う。
東京という場所柄、仕方ないことかもしれないが、東京の養蜂を応援するために、はちみつを選ぶ目を持ちたいものだ。
採蜜の見学とミツバチの話を聞く会を開催
5月17日(土)10時〜2時。立川の市川養蜂場で、採蜜の見学と市川敏夫さんによるミツバチの話を聞く会が開催される。はちみつや農産物の即売会もあり。参加費は500円。問合せは、三多摩たべもの研究会 Tel 042・322・6681
http://www.tabeken.net/kyoudou.html