東京都では数十種類の野菜が作られ、市場に出回っているが、都民の手に入りづらいのが実状だ。日本の自給率は4割を切り、東京都でみるとさらに低く、自給率は1割を切っている。大消費地東京で、“地産地消”がより推進できるよう、東京の農家にもっとがんばってもらいたい。「旬」という言葉が死語になりつつあるが、旬の野菜は栄養価も高くおいしい。シリーズ2回目の今回は、東京の旬の野菜を追ってみる。
(取材/中本敦子)
旬を食べることはエコライフにつながる
昔の諺に、「初物七十五日」(初物を食べると寿命が75日延びるという意味)とか「初物は縁起がいい」などがある。今のように栄養学が発達していない時代にも、いかに「旬」のものが身体にいいか、先人達は体験を通して知っていたのだろう。
自然のサイクルの中で作られた旬のものがおいしいのは言うまでもないが、栄養価も、旬以外の時期に比べ、非常に高い。
また、旬の時期以外に生産するには、虫や病気の害をくい止めたり、成長を早めたりするために薬品が使用されることが多い。ハウスを利用する場合は、温度を保つために多量の重油も消費される。
その点、旬の時期に取れる野菜は、燃料や農薬などの使用量が少なくてすむ。しかも、価格も安く経済的にもお得だというわけだ。
旬のものを食べることで、免疫力を高め、抵抗力を強め、健康な身体作りにも大いに役立つのだ。
一年中、様々な食材が出回っている昨今、いつが旬なのか見極めるのは難しい。だからこそ、旬を知っておきたい。
良く言われるのは、春は苦味のあるもの、夏は酸味のあるものを摂るということ。苦味の成分は冬の間に身体にたまった毒素を出すはたらきがある。山菜や春野菜には苦味が多く、まさに自然の理にかなったことなのである。
東京の農業の発展は江戸の参勤交代が貢献
東京の農業の歴史を遡ると、江戸時代に飛躍的に発展したことがわかる。江戸が日本の中心になり、参勤交代が実施。全国各藩から農業に関する情報が寄せられ、野菜の種なども集まってきた。その中に江戸でも栽培に適した作物が定着し、『江戸の野菜』として、今日に至るのである。
江戸から東京に変わっても、首都であることは変わらず、大消費地に近いという利点は今なお続いている。
輸送に時間がかからないことから、鮮度が重視される野菜は、まさに東京の農業に適しているのだ。
東京の春の旬は選り取り見取り
江戸時代より数多くの野菜が作られるようになったわけだが、現在、東京で栽培され、市場に出回っている主な作物は、左の30種である。特に3月から6月にかけて春野菜の出荷が盛んになる。
作付け面積が一番多い小松菜は、江戸時代初期に江戸川区小松川付近で、品種改良により栽培が始まったとされている。小松菜は、年間を通して作られているが、旬は冬場である。昔は冬に収穫されるので、「冬菜」とも呼ばれていたそうだ。今では年間を通して作られている。
葉が柔らかい春キャベツもこれからの季節、食卓を彩る。キャベツが日本で栽培されるようになったのは、明治初期。葛飾の農家が品種改良を重ねてできたもので、以後全国に広まっていった。
昭和25年頃からは初夏産・秋冬産の年2作が定着した。現在、東京のキャベツの主要産地は、練馬、西東京である。一時期キャベツ産地として名を馳せた東京だが、現在では、東京都中央卸売市場のシェア1割強にとどまっている。
どの野菜にも歴史があり、それぞれに旬がある。下の表で東京の野菜の旬を知り、買物の時の参考にしてもらえればと思う。