2008年7月20日号
『次郎長三国志』
日本映画のともし火は、マキノ雅彦で守られる
「寝ずの番」(06年)で鮮烈な監督デビューを飾ったマキノ雅彦(津川雅彦)監督の第二作。
映画が娯楽と言われた時代の手法を踏襲しつつ、見事に現代的なテンポの味付けを加えて、最後まで引き込まれる強さに満ちた時代劇に仕上がっている。
中井貴一、鈴木京香の両主役を支える脇も、スターのオンパレード。さすがマキノ一家の名に恥じない豪華版で、力のあるキャストが、この映画に厚みと奥行きを与えている。
ストーリーは次郎長をモチーフに、子分衆、連れ合い「お蝶」に降りかかる難局を次々に解決するという定番だが、シナリオの大森寿美男が生み出すリズムの確かさ、そしてそれを支えた加藤雄大のカメラ、宇崎竜童の音楽が、完成度の高い娯楽巨編を作り出した。
改めてマキノ監督の手腕と映画人魂に敬意を表したい。
ロードショーは角川シネマ新宿、シネカノン有楽町2丁目、渋谷アミューズCQN他で9月20日から。
恋、義理、人情、定番のチャンバラとお約束てんこ盛りの楽しさに、ロックバラードの音楽が不思議に良く絡み合って、楽しめること請け合い。
とにかく見終わった後の清涼感は木戸銭を補って余りある。“これぞ時代劇、これぞチャンバラ”を絵に描いたような作品でありながら、その質の高さに花丸を献上したい。
助演は北村一輝、温水洋一、近藤芳正、笹野高史、岸部一徳、真由子、高岡早紀、木村佳乃など。