2008年6月20日号
<よろず相談室>
(6)会社役員等の責任軽減規定

スターライト法務相談
司法書士 星野大記


<Q>
 先日、蛇の目ミシン株主訴訟で、元社長らに対して583億円の賠償を命じる判決が出されました。経営責任者はこのような莫大な賠償を回避する方法はあるのでしょうか。

<A>
 近年、大企業による不祥事の発覚や株主の権利意識の高まりを背景に会社経営陣に対して経営責任を厳しく問い、数億円単位の多額の賠償を命じる判決が相次いで出ています。しかし、会社役員等の責任が大きくなればなるほど、役員等がそれを恐れるあまり任務を円滑に追行できなくなる危険性があり、これを回避するため平成14年5月1日に旧商法で導入されたのが、会社に対する責任に関する「役員等の責任軽減規定」です。

【全部免除】

 役員等の会社に対する任務懈怠責任は、総株主の同意により全額免除することができます。会社に発生した損害は、損害を被った会社、つまり株主の同意があれば責任を問わないとするものです。

 しかし、現実的には総株主の同意を得ることは非常に困難で、特に上場している会社などは不特定多数の株主全員が同意することはあり得ないと言ってもいいでしょう。

【一部免除】

 役員等が任務懈怠により会社に損害を発生させた場合、善意無重過失の場合に限り、(1)株主総会決議による免除(2)定款規定に基づく取締役等による免除(3)定款規定に基づく責任限定契約のいずれかの方法により次のような最低責任限度額まで責任を免除することが可能です。

 この制度は平成14年5月1日前の行為については適用がありません。今回の蛇の目ミシン株主訴訟で問題となった元社長らの行為は昭和62年から平成3年頃までのものですので、もちろん適用外となります。しかし、583億円もの損害を賠償せよと命令されたところで、その支払いは事実上不可能です。

 責任軽減規定による役員等の損害賠償の範囲は主に役員等が会社から得た利益を基準としており、役員等がこれを負担することは可能であると言えるでしょう。会社の費用負担で勝訴判決を得ても実行性のないものであれば意味がないので基準が明確となり、優秀な人物が役員として就任しやすくする機能があるという意味では、責任軽減規定を設けていることは株主にとってもメリットはあると考えられます。

 株主が有限責任である一方、役員に無限責任を負わせるという現行制度の見直しが望まれますが、現時点では前述した責任軽減規定、特に定款規定に基づく方法を予め定めておくことで、可能な限りのリスク管理をすることが必要でしょう。

 一方、これら3つの軽減規定に基づいて免除することができないものは、利益相反直接取引を自己のためにした取締役・執行役の責任がそれにあたります。この場合、免除をするには総株主の同意が必要となります。

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