2008年5月20日号
<よろず相談室>
(5)「借地借家法」の改正

スターライト法務相談
司法書士 星野大記


<Q>
 最近「借地借家法」の改正があったと聞きました。どのような内容なのか教えてください。

<A>
 借地借家法が改正され、平成20年1月1日より施行されています。

 これにより、「事業用借地権」の契約期間が「10年以上20年以下」から「10年以上50年未満」へと変更となりました。今後は、

1.長期事業での採算性の確保
2.土地の有効活用ならびに地域の活性化

が期待され、企業による土地の利用が加速すると予想されます。

改正にいたる背景

 1992年8月に借地借家法が大きく見直された際、「事業用借地権」は建物の材料費が安く、初期投資が比較的抑えられて、短期間で収益が上がり、出店・撤退も容易なコンビニエンスストア、量販店、ファミリーレストランなどの店舗経営のための利用を想定していました。

 しかしながら、ここ10年の間で、不動産流動化や証券化が定着し、企業側が地価下落のリスクを回避するとともに、財務健全性を確保し、初期投資コストを抑えるため、土地の所有から利用へとシフトするようになりました。また、大型商業施設や物流センターなど当初想定していない需要が増加してきており、改正前の契約期間が20年以下では不十分となっていました。



事業用定期借地権改正のポイント 

 「事業用定期借地権」は、もっぱら「事業用建物」を所有する目的でなければ設定できません。このため、例えば社宅では設定できず、コンビニ等の店舗でなければなりません。さらに、「事業用借地権」の設定契約は、これまで通り「公正証書」によることが必要です。

 そして、今回の改正により注意が必要となるのが、契約期間が30年以上の場合、普通借地権と区別するため、【1】契約の更新がない【2】建物を再築した場合にも存続期間は延長されない【3】期間満了時の建物買取請求権がない、といった3つの特約を公正証書に記載することが必要となります。

 これに対し、10年以上30年未満の事業用借地権の場合では、期間以外の権利内容は改正前と同じとなります。

 今回の改正のポイントは次のとおり。

1.

大型倉庫やビルなどRC造などの耐久力のある建物や中層の建物を建造した場合でも税法上の償却期間まで建物を維持することが出来て、比較的長期の事業であっても採算性が確保され得ます。 

2.

設定期間が延びたことで、所有者・ユーザー双方のニーズに応じた期間の設定が可能となり、所有者にとっても土地を貸しやすくなり、事業者にとっては長期間に渡る建物の存続を前提とした資金計画や経営方針を練ることが出来、結果として土地の有効活用、持続的な地域活性化につながるものと考えられます。

 公正証書の作成は当事者又はその代理人が公証役場に出頭する必要があり、なおかつ専門的な法律知識が必要となります。

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