2008年4月20日号
写真館で写真を撮るということ
「ナルシスの季節に」 近衞 忠W

 人生の節目節目には、色々な通過儀礼がある。成人するまでは成長を祝う諸々の行事が、それを過ぎると結婚のような慶事と並んで、年相応に厄祓いもせねばならない。そして人生50年を越えれば、後は長寿を祝うばかりとなる。

 しかし平均寿命が男性で79歳、女性で86歳ともなると、還暦、古希、喜寿では本人も年を取った実感が持てないだろうし、祝ってもらったところでどうせ、お義理か酒の肴にでもとの周囲の魂胆が見え見えだから、素直には喜べまい。結局、自他共にお目出度いのは傘寿、米寿、卒寿、白寿、それ以上ということになる。

 通過儀礼につきものと言えば、記念写真である。今でこそ誰もがカメラを持っていて整理に困る程の写真が集まるが、筆者の幼い頃は正月や誕生日には決まって、おめかしして写真館に連れて行かれ、「公式」の写真をとられてそれが今でも記憶にもアルバムにも残っている。すっかりセピア色に染まったそれらをめくると、古い良き時代が格調高く甦り、若かりし日々への感傷をかき立てられる。

 人間の姿を記録する方法は色々とあるだろう。写真がない時代ならそれは絵画で、西洋の名家には先祖代々の肖像画が所狭しと並んでいる。それでは映像の時代になって、後世に自分の姿を一葉の写真で伝えるとすればどうすればよいだろうか。記念と記録だけのシロウト写真よりは、やはりセピア色の芸術写真とならないだろうか。名も知れないモデルが、名画の中で永久に輝き続けるように、写真家に自分の特徴を把えて芸術作品に仕上げてもらい、折々ナルシスの如く、一人眺めて悦に入るのも悪くないだろう。「三十にもなったら、自分の面に責任を持て」といったのは確かナポレオンである。お見合用と結婚式だけでなく、たまには写真スタジオにでも行って、自らを写し出し、わが身を振り返ってみてはどうだろう。

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