スターライト法務相談
司法書士 星野大記
<Q>
Xさん(55歳女性)のお母さん(Yさん80歳)は、医者から重度の認知症との診断を受けています。現在、XさんがYさんを自宅で看病しています。Xさんのお父さん(Zさん)は、すでに他界しています。
Yさんは、Zさんから相続した土地と建物を所有していますが、空き家になっています。Yさんの年金、預金の管理はXさんがしていますが、Yさんの看病に必要な資金も、今の年金と預金では、心もとないですし、Xさんも自分の老後を少しずつ考える年になりました。できればYさんの所有している不動産を売って、現金にできれば、Yさんの看病に困らない状況です。
ただ、Yさんは認知症なので、不動産を売る契約をすることができません。何かよい方法があるのでしょうか。
<A>
成年後見という制度を利用する方法があります。Yさんの成年後見人が、Yさんを代理して、不動産を売ることができます。ただし、不動産を売ることについての裁判所の許可が必要になる場合があります。
【解説】
1.成年後見制度について
認知症などの精神上の障害で、通常の判断ができない人を保護支援するために、家庭裁判所に、本人の利益を考えて、本人に代理して契約などの法律行為などをする成年後見人を選任してもらう制度です。
成年後見人は、成年被後見人(Yさん)の代理人として、本人に代わり、財産を管理し、家庭裁判所にその事務等の内容について報告し、家庭裁判所は成年後見人を監督します。ただし、本人の身の回りの世話や療養看護については、成年後見人としての仕事には、なりません。
成年後見人には、裁判所がその適性を判断した上で、身の回りの世話をしている、Xさんのような親族を選任する場合もありますし、弁護士、司法書士、社会福祉士といった専門家を選任してもらうこともできます。
2.申立てるにはどうすればよいか
申立ては、本人以外に、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長などがすることができます。
申立てる裁判所は、本人(Yさん)の住所地を管轄している家庭裁判所です。
申立てから、選任までの期間は、事案によって鑑定など必要な手続きが異なりますが、約2ヶ月から4ヶ月くらいです。
費用は、実費としては、5000円程度ですが、専門家に依頼すれば、別途報酬費用がかかります。
3.不動産を売るときに必要な手続きについて
成年後見人が選任されれば、本人の不動産を売ることができます。
ただし、成年被後見人の自宅を売る場合は、事前に家庭裁判所の許可が必要になります。
裁判所は事案に応じて、売却する必要があるのか、その価額は妥当なものか等、成年被後見人の立場から考えて、許可します。
4.まとめ
成年後見人に就任すると、裁判所の監督下で、成年被後見人の財産を管理する義務を負うことになり、容易に辞任することはできません。また、不動産の売却する場合において、トラブルに巻き込まれたり、他の親族から不満が出たり、詐欺にあったりする可能性もあります。
やはり、事前に信頼できる専門家に相談して、慎重に手続きを進めるべきでしょう。